法人のお客様メディカル関連機器 評価レポート・事例紹介 東京科学大学病院(旧 東京医科歯科大学病院) 様

東京科学大学病院(旧 東京医科歯科大学病院)

メディカル関連機器 評価レポート
医療映像プラットフォーム NUCLeUS
東京科学大学病院
(旧 東京医科歯科大学病院) 様
瀬島 啓史 様
国立大学法人 東京科学大学病院
MEセンター 主任臨床工学技士 瀬島 啓史 様

2024年10月に東京医科歯科大学と東京工業大学が統合され、「東京科学大学病院」に名称変更しました。前年に新設したC棟(機能強化棟)は、先進の医療設備を備えた高度な医療施設で、救急外来やICU(集中治療室)を完備しています。建物には免震構造や非常用発電機を採用しており、災害時にも安全で安定した医療提供体制の実現を目指しています。

※導入検討時にも「daVinciXi手術におけるIP映像システムの有用性」としてご評価いただいています。

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NUCLeUSによる映像システムのIPネットワーク化により実現した業務効率化と先進的医療DX

2023年にC棟に新たに追加された手術室は、ロボット手術をはじめ最新の医療機器を導入できるよう設計されています。我々のコンセプトは、「フレキシブルな部屋づくり」です。一般的には、内視鏡専用やロボット手術専用など、手術内容によって部屋を別けていますが、当院の手術室では、どの部屋でも必要な機器を搬入設置できるようになりました。これにより、手術室の稼働率が向上して、患者さんにとっても「複数診療科が協働することで手術時間の短縮や負担軽減が期待できる」などのメリットが生まれています。

C棟の7室全ての手術室にソニーの医療映像プラットフォーム「NUCLeUS(ニュークリアス)」を導入しました。さらに、既存棟の15室と増設する予定の4室の手術室へも段階的に改修工事をしながら導入を進めています。 NUCLeUSによる映像システムのIPネットワーク化は、業務効率化はもとより、先進的な医療DXを推進する上で重要な役割を担っています。

■導入システム概要

医療映像プラットフォームNUCLeUS

IP(Internet Protocol)ネットワークを通じ、手術室を含む院内の多様な機器からの医療映像データを一元的に管理・活用することで、手術サポート、ワークフローの効率化を実現する次世代型映像システム

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「医療現場における次世代映像システムの運用評価」

これまで10年以上にわたり既存棟で使用してきた旧システム(アナログ信号を含み、複数の異なるケーブル接続が必要)と、NUCLeUSを導入してIPネットワーク化した新しい映像システムを並行運用して比較した結果を2024年の日本医療機器学会で「次世代映像システムの運用評価」と題して発表しました。

評価のポイントは2つあり、1点目は、映像遅延の評価で、映像の伝送がIPに変換するとどのようになるかということ。2点目は、私たち臨床工学技士の業務変化についてであり、映像トラブルでの呼び出しや問い合わせがどのような内容でどれくらいの件数があり、それがどのように変化したのかについて検討しました。

評価①「遅延のない高画質映像」

モニターを見ながら行う内視鏡手術や顕微鏡手術においては、術者の手元の操作とモニターに表示される映像にタイムラグがあると、術者のストレスが増して手術精度の低下を招く可能性があります。そのため、映像の遅延を最小限に抑えることは非常に重要です。従来のシステムでは、映像システムを経由させると術者がタイムラグを体感するレベルの遅延が発生していました。

しかし、NUCLeUSを導入した新システムでは、IP変換することでフルHDや4K相当の高解像度の映像出力においても、全ての映像信号の遅延なしで映像伝送が可能になりました。また、画質についても、実際の見た目とモニターに表示された色味や鮮明さに劣化が認められず、高精細な視認性を維持できています。術者から遅延や画質についての不満や指摘は一切ありませんでした。

評価②「LANケーブル1本で完結。配線の効率化で接続トラブル激減」

これまで映像トラブルの原因で多かったのが、ケーブルの種類やIN/OUTの差し間違いで「映像が映らない」ということでした。特に幼少期からHDMIやWi-Fiが普及していた20代のスタッフは、アナログに馴染みが薄い世代であり、旧タイプの映像や規格の異なるケーブルに接してきた経験がありません。

その点、NUCLeUSではIPベースで映像を扱うため、LANケーブル(Ethernet)を接続するだけで医療機器とモニターを接続できます。映像機器に不慣れなスタッフでも直感的に対応できます。また、従来は太く重くて何本も必要だったケーブルの取り回しが、LANケーブル1本になり格段にシンプルに軽くなり、配線作業が効率化されました。これにより同期間内で既存棟の接続トラブルの件数が30件に対して、C棟では1件まで減少するという明確な有意差が出て臨床工学技士が対応する頻度も減少させることができました。

配線が長くできるようになったこともメリットで、HDMIやDVIは伝送距離が5メートル程度までが基本ですが、LANケーブルであれば100メートルまで対応できます。機材が密集している手術室の中で無理に最短ルートを通す必要もなくなり、術中に誤って足を引っ掛ける心配も減って、効率的にスムーズに移動することができるようになりました。LANケーブルは市販のものを使用することができるので、専門的なケーブルと比較すると大幅なコスト削減にもつながります。

評価③「操作性の向上と録画管理の効率化」

術者や看護師が手術中に生体情報を確認するために壁面モニターに表示させるには、これまでは毎回ケーブルを差し替えて接続する必要がありましたが、NUCLeUSの導入によってIP化されたことで、各医療機器から出力された映像は、タッチパネル上にリアルタイムの映像プレビューと機器名称が表示されるので、必要な映像の表示やレイアウト変更をスムーズにできるようになりました。

また、録画中の映像が一目で確認できるので、「重要な術野映像が録画できていない」といった人為的ミスは大幅に削減されました。さらに、従来は手術室を使用する診療科がそれぞれハードディスクやブルーレイディスクなどを個別に管理しており、「録画容量が不足する」という事態も頻繁に発生していましたが、現在ではサーバーに集約してデータを残すことができるようになりました。

今後への期待「今後は映像を中心にいろいろな情報が付加されていく」

トラブルや問い合わせの都度、手術室まで足を運ばなくても、管理者権限を持つ臨床工学技士は必要な映像の切り替えを手元でコントロールして解決することができます。また、手術室内のスタッフのみならず、院内スタッフは各手術室のリアルタイムの進行を映像で確認できるので、次の段取りのタイミングが判断しやすくなり業務を効率的に進めることができるようになりました。

さらに、カンファレンス室の壁面にあるモニターには、NUCLeUSが導入されている手術室の全ての映像がリアルタイムに一覧化されています。適宜必要な映像を中央の大型モニターに表示して、多くの参加者に映像を共有しながらわかりやすく説明することができます。これまで以上に詳細に議論を深めて的確な判断を下すことも期待でき、手術の質の向上や学術的な用途にも貢献するでしょう。

既存棟を含めた全ての手術室で映像のIP化が進めば、病院全体として、より高度な連携や効率化が期待されます。これまで取り組んできた「システムに映像を送る」という段階から、「映像が手術医療の中心になって、そこにさまざまな情報を付加できるプラットフォームの実現」へと進化していきます。

今後は麻酔記録システムと連携した録画の自動化も検討中です。また、将来的には、高速5G回線を利用したロボット手術を熟練の専門医が遠隔からサポートする仕組みや、院外の医療機関との映像データ共有による遠隔医療連携など、高度な医療を実現するための多岐にわたる応用を検討していきたいです。

導入機材

医療映像プラットフォーム

NUCLeUS

商品情報

4Kビデオカメラ

MCC-S40MD

商品情報

4K 3Dビデオレコーダー

HVO-4000MT

商品情報

3D HDビデオレコーダー

HVO-3300MT

商品情報

55型3D対応4K液晶モニター

LMD-XH550MT

商品情報

32型3D対応4K液晶モニター

LMD-XH320MT

商品情報

液晶モニター 法人向けブラビア

FW-55BZ40H/BZ

商品情報

※本記事に記載されている製品は日本においては医療機器ではありません

※本ページ内の記事・画像は2025年2月に行った取材を元に作成しています

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