LMD-32M1MD製造担当者インタビュー
ソニーグローバルマニュファクチャリング&オペレーションズ株式会社 幸田サイト
ソニーのメディカルモニター史上最高峰の画質を、汎用性の高い2Dモニターで実現した「LMD-32M1MD」。設計者たちの思いを「ものづくり」で体現し、高い品質基準を守りながら完成品を造り上げる製造現場の技術者たちに話を聞きました。
左から岡本(製造設備)、柘植(製造工程)、鍋倉(製造技術)、松藤(プロセス構想)
「短期の開発期間で、最高画質を汎用性の高い製品に搭載したい」という設計チームの思想を実現するには、これまでの手法の踏襲ではなく、まったく新しいやり方にチャレンジする必要がありました。そのひとつが、テレビの製造技術の活用です。ソニーでは長年にわたって、高画質・高機能かつさまざまなサイズのテレビを効率的に造り上げる工程が磨き上げられてきました。
テレビ製造のベテラン技術者とともに、幸田サイトに製造設備を準備し、「LMD-32M1MD」の試作を開始しました。
そこで改めて課題となったのが、テレビとメディカルモニターの違いです。メディカルモニターは多様な医療機器と接続するため、多数の接続端子を搭載しています。機能を制御するファームウェアもテレビより複雑です。単に製造設備を移植しただけではうまくいきません。
メディカルモニターに求められる品質や機能に適合した、新たな検査工程の開発や新規製造設備の追加など、製造プロセスの構想を立て、見直し、検査や施策を繰り返した上で、量産設備を導入しました。
また、メディカルモニターの製造には「すべての工程を記録に残す」ことが求められます。医療現場で重要な役割を担うメディカルモニターを、医療従事者の皆さんに安心して使って頂くためには、小さな不具合であっても「いつどこでどうして」発生したのか、迅速に問題の切り分けを行い、対策を立てることが重要です。幸田サイトでは映像やデータなどあらゆる方法で製造工程の記録を残し、保管し、早期の原因究明と対策実行に繋げています。こうしたトレーサビリティプロセスの確立にも、力を尽くしました。
製品設計と製造は、車輪の両輪のような関係です。お互いに譲れないこだわりについては徹底的に議論し、協力し、ともに最適な解決法を探します。「LMD-32M1MD」の開発では理想的な形で、お互いのこだわりを実現することができ、結果的に素晴らしい製品を造り上げることができたと思います。
製造はこれからがスタートです。多くの「LMD-32M1MD」をタイムリーに医療現場にお届けすることで、私たちは製造の現場から医療の未来に貢献してまいります。
「LMD-32M1MD」では、環境に配慮した取り組みにも注力しています。幸田サイトの梱包設計技術者から話を聞きました。
松尾(梱包設計)
「LMD-32M1MD」の梱包設計では、プラスチック材を削減するため、封函テープを貼っていません。こちらはカートンの底面ですが、左が「LMD-32M1MD」、右が従来製品「LMD-X3200MD」のものです。通常、ロック構造を採用したカートンは重量物には向きませんが、形状を工夫することで封函テープを使うことなく「LMD-32M1MD」の重量を支えることができるようになりました。
左:「LMD-32M1MD」カートン底面(ロック構造)
右:従来製品「LMD-X3200MD」のカートン底面
また、カートンの内部ですき間を埋めてモニターを支える緩衝材も、パルプモールドを使用し、発泡スチロールを使わない梱包を実現しました。さらに、モニターを包む保護袋もビニールではなく植物性セルロースを主原料とした不織布を使っています。
パルプモールドの緩衝材
植物性セルロースを主原料とした不織布
新しい梱包材の設計にあたっては、輸送中のあらゆる環境を想定した厳しい品質基準をクリアする必要があります。
落下試験や振動検査、高温・高湿度検査、横からの圧迫に耐えられる耐久検査などを何度も実施し、改善を重ね、従来のプラスチック材を使った梱包材と同等の性能を実現しています。
設計にあたって新たに導入したのが、シミュレーションです。発泡スチロールと違い、パルプモールドは製品が落下したときのダメージを予測することが困難なため、金型を起こした後に落下検査をすることが一般的でした。 シミュレーションでは、パソコン上でデータを変更し、さまざまな形状を想定してシミュレーションができます。
落下シミュレーションをする勝木(梱包設計)
「LMD-32M1MD」梱包シミュレーションの様子
その結果を踏まえて、「これだ」という仕様で試作品を作ることができるので、その後の工程がとてもスムーズになります。
シミュレーションは、ソニーのテレビやカメラの開発では既に使われていたものですが、今回「LMD-32M1MD」の梱包設計に取り入れることで、高い耐久性を備えつつ、環境に配慮した梱包材の設計を短期間で実現することができました。