2023年6月 更新

雨の季節がもたらす、美しき世界

雨の季節ならではの光景を、
写真で愉しむ

雨の多い国、日本。特に梅雨は、降りつづく雨に出かけるのが少し憂うつな季節です。
しかし古来より日本人は、雨を文芸や芸術のモチーフとするなど、
独自の感性で雨そのものを愉しんできました。
あなたもお持ちのαとともに、雨の季節だから撮れる写真を楽しんでみませんか。
梅雨どきならではの光景を美しく残すコツや撮影で活躍する表現力豊かなレンズを
写真家 福田健太郎氏にお聞きしました。

写真家 福田健太郎

1973年、埼玉県川口市生まれ。日本写真芸術専門学校卒業後、写真家・竹内敏信氏のアシスタントを経てフリーランスの写真家として活動を開始。日本を主なフィールドに、「森は魚を育てる」をキーワードとした生命の循環を見つめ続けている。公益社団法人 日本写真家協会会員

梅雨を愉しむ
撮影テクニックをご紹介

01 雲間から差す光は、晴れの兆し

シャッター速度1/4000秒 F値5.6 ISO感度100 露出補正-2.0EV

「露出補正を調節して、光を際立たせよう」

雨の季節ならではのシャッターチャンスとしては、まず雨上がりが考えられます。雨が弱まり薄暗かった空に光が差しはじめると、心まで晴れやかになっていきます。そんな雨上がりの空を撮るときは、太陽そのものよりも、雲の隙間から光が差す瞬間を狙うと、晴れ間を予感させるイメージを表現できます。ポイントは、「露出補正」を少しマイナスにして光の筋を美しく際立たせること。空は刻々と変化していくので、光が差し込むタイミングを逃さずドラマチックな瞬間を狙ってみましょう。

露出補正:0

地上の風景の主張が強く
空が目立ちにくい

露出補正:-0.7

地上の風景が暗くなり、
明るい空が際立つ

ワンポイント 地上の風景をアクセントに、
構図をひと工夫

ビルや木などの地上を感じさせるものを少しだけ画面に取り込むと、主役である空の様子と対比ができてイメージが膨らみます。レンズを「望遠」側にして寄ってみたり「広角」側で引いてみたりしながら、構図を工夫してみましょう。

02 水たまりに映る、もう一つの世界

シャッター速度1/800秒 F値8 ISO感度200 露出補正-0.3EV

「撮る角度を工夫して、映り込む風景を演出」

水たまりは、雨上がりならではのモチーフ。ちょっと散策してみれば、きっと見つかるはずです。しかし、ただ水たまりを撮っても作品にはなりづらいものです。まずは、水面に映る風景を工夫してみましょう。見る位置や角度によって映り込むものは変わってきます。立ったまま水面をのぞくと映り込む風景が空だけになりがちなので、地面に近い位置でカメラを構え、人や街並みを入れてみると作品の幅が広がります。

ワンポイント 「水面」と「現実」の風景の
割合に着目

水面に映る風景を画面に大きく捉えれば、写真を見る人に実際の周りの風景を想像させる楽しさを演出できます。一方で、周りの風景も一緒に画面に取り込んで撮ると、「水面」と「現実」の風景を見比べる面白さが生まれます。

03 雨露がきらめく草花の情緒

シャッター速度1/13秒 F値6.3 ISO感度200 露出補正-1.0EV

「露出補正マイナスで、しっとりした雰囲気に」

普段、公園や道ばたで見かける草花にも、雨の日ならではのシャッターチャンスがあります。雨に濡れた草花はみずみずしく、いつもよりも色が鮮やかできれいに見えます。そこで、露出補正をマイナスにして撮ると、全体が少し暗くなり色の深みが増し、しっとりとした雰囲気を演出できます。雨露のきらめきもより際立ち、雨の情緒をより一層感じられる写真になります。ぜひ身近な草花で試してみましょう。

04 霧につつまれた森の静寂

シャッター速度1/40秒 F値10 ISO感度200 露出補正+0.3EV

「露出補正プラスで、おぼろげな世界観に」

雨の日の森は霧が出やすく、また条件次第では大きな公園などでも霧に包まれることがあります。そんなときは、撮影をあきらめてしまうのではなく、霧に包まれた世界を被写体にしてみましょう。霧は、近づき過ぎると薄くなってしまうため、少し離れたところから撮るのがポイント。その時、露出補正を少しプラスにして明るく写せば、霧の淡くおぼろげな雰囲気を高めることができます。

家でレッスン!

ホワイトバランスを変えて、雨上がりの世界を演出しよう

オートモードだけで撮っていると「自分のイメージと少し違う」ということはありませんか。そんなときは、ホワイトバランスを設定して、写真の色味を変えてみましょう。αには、自動でホワイトバランスを設定するAWB(オートホワイトバランス)の他に、シーンに応じたホワイトバランスモードがあります。もちろん撮影環境に合ったモードを選択してもいいですが、自分のイメージに近い色味にするために状況とは異なるモードを選択するのもテクニックのひとつ。ぜひ試してみましょう。

見たままの色味に近い写真 カメラが判断して、見た目に近い
色味に
[ 曇天モード ] 見た目よりも黄色く写り、暗い風景に差し込む光の暖かさを強調できる
[ 電球モード ] 見た目よりも青く写り、雨が止んだばかりの湖面の静寂さを演出できる
福田健太郎先生は…

このときは朝方だったので、[日陰]モードを選択してより黄色みを強めることで朝日を強調し、晴れ間を予感させる印象に仕上げました。慣れてきたらホワイトバランスを微調整して、より自分のイメージに近い色味をつくることもできますよ。〈福田健太郎〉

ホワイトバランスの
設定方法

撮影モードはP」A」S」のいずれかのモードを選択。とりあえず色味を変えてみたい方はP」モードでOK。カメラのボディにWB」表記がある場合は、そのボタンを押せば設定が可能。
ない場合は、MENU]タン→ 撮影設定*]→[ホワイトバランス]で設定ができます。

* 機種によっては「明るさ・色あい」からの設定になります。
※ ホワイトバランスは「おまかせオート」や「プレミアムおまかせオート」では設定できません

福田健太郎が選ぶ、梅雨の風景撮影で活躍するレンズ

超広角ズームレンズパースを効かせて描く、
巨木の力強さ

FE 12-24mm F4 G,
 12mm, F16, 1/4秒, ISO400

みずみずしい緑が心地よい森の中を歩いていると、岩に大きく根を張る巨木に出会いました。そのたくましさに惹かれて撮った一枚。木の力強さを表現するために選んだのは超広角ズームレンズFE 12-24mm F4 G。被写体にぐっと近づき、カメラを地面に置いて下から煽るようなアングルで撮影。そうすることで、広角レンズの特長であるパース(遠近感)が強く効き、迫力のある画になります。

FE 12-24mm F4 Gの魅力は、Gレンズならではの解像感の高さ。さらに、一般的に広角レンズはワイド端になると四隅の像が流れてしまいがちでしたが、このレンズは像が流れずにしっかり描写できます。これは感動ものです。広角ズームレンズとしてはとてもコンパクトに作られており、携行しやすいのも強みです。

< 使用したレンズはこちら >
Eマウントレンズ( フルサイズ対応 )
FE 12-24mm F4 G SEL1224G

超広角ズームレンズ広角でしか残せない、
滝の舞台

Vario-Tessar T* FE 16-35mm F4 ZA OSS,
 17mm, F11, 2秒, ISO100

広角レンズは、引いて撮ることが難しい環境でも活躍します。この時も、立っている場所のすぐ後ろは崖のようになっており一歩も引くことはできません。しかし、舞台のような雰囲気を醸し出す滝全体をなんとか捉えたい。そこで超広角ズームレンズのVario-Tessar T* FE 16-35mm F4 ZA OSSを選択。シャッター速度を2秒にし、滝の流れをなめらかに表現しつつ、三脚を使うことで岩の質感もしっかり残しています。ツァイスレンズの魅力はやはり高コントラストな描写。岩が濡れて光っている部分と影になっている部分の絶妙なコントラストが際立ち、立体感のある画になりました。

ワンポイント三脚を使う目安は、シャッター速度1/4秒以下

αは手ブレ補正が効くので、ほとんどのシーンは手持ち撮影でOK。ちょっとしたスローシャッターでも、手持ちで十分撮れます。しかし、ブレ表現を取り入れながら細密な描写にこだわるなら三脚は必要です。目安として、広角レンズを使用しているならば、1/4秒より遅いシャッター速度なら三脚を使用し、リモートレリーズもしくはセルフタイマーで撮影しましょう。

< 使用したレンズはこちら >
Eマウントレンズ(フルサイズ対応)
Vario-Tessar T* FE
16-35mm F4 ZA OSS
SEL1635Z

標準ズームレンズツァイスでものにする、
二重の虹

Vario-Tessar T* FE 24-70mm F4 ZA OSS,
 36mm, F8, 1/20秒, ISO200

大地に架かる大きな虹は、北海道で撮ったもの。大自然を細部まで写しとるためレンズはVario-Tessar T* FE 24-70mm F4 ZA OSSを使用しています。ツァイスレンズは描写に透明感があるので、雨で空がにごっている状況でもクリアに写せます。雨が降るなかで撮影していると、だんだん雲の切れ間から夕日が差してきました。そうなると経験上、虹が現れます。虹は太陽の反対側に出るものなので、その方角を注視していると予想通り出てきました。刻々と状況が変わるため撮影にはスピードと対応力が求められます。

カメラの設定は、夕方の光を感じられるようにホワイトバランスを暖色の色味に調整。また、虹の色をしっかり出すために、クリエイティブスタイルを「風景」に設定しています。雨上がりには、こうした偶然に左右される被写体が多いもの。それを逃さずに撮れると、写真がもっと楽しくなります。

< 使用したレンズはこちら >
Eマウントレンズ(フルサイズ対応)
Vario-Tessar T* FE
24-70mm F4 ZA OSS
SEL2470Z

望遠ズームレンズ望遠でバランスよく
切り取る、光と滝

FE 70-200mm F4 G OSS,
 149mm, F16, 2秒, ISO100

スポットライトのように滝の中心に光芒(こうぼう)が射していました。そこで白い水の流れ、光、黒い岩、コケなどをバランスよく平面的に捉えたいと思い、少し離れた場所から望遠で切り取りました。レンズはFE 70-200mm F4 G OSSを使用し、川の中に三脚を立てて撮影しています。シャッタースピードは2秒。スローシャッターにすることで、斜めに入ってくる光をより際立たせられます。またコケなどの色を鮮やかに残すため、クリエイティブスタイルを「風景」に設定しています。

FE 70-200mm F4 G OSS,
 105mm, F8,
 1/4秒, ISO100

1/4秒で静止とブレの両方を表現同じ場所で、今度は垂れ下がる枝葉を象徴的に捉えてみました。ポイントは、1/4秒というシャッター速度。水の流れをブラして表現しながらも、できるだけ枝葉は写し止める。そのためにはシャッター速度の繊細な設定が求められます。また、鮮やかな緑がより映えるように、日陰の岩が背景にくるポジションを見つけて撮影しています。

FE 70-200mm F4 G OSS,
 177mm, F4,
 1/2000秒, ISO3200

1/2000秒で肉眼では捉えられない姿を表現今度は滝の上流で、水しぶきが飛び散る様子を捉えました。しぶきを写し止めるには1/1000秒以上のシャッター速度が必要です。望遠で引き寄せ、手前と背景をぼかすことでやわらかな印象に仕上げました。FE 70-200mm F4 G OSSは防塵・防滴仕様なのでこのようなシーンも安心して撮影できます。もしレンズ表面に水滴が付いてしまったらクロスで拭き取るのではなく、ブロワーで水滴を吹き飛ばすようにしましょう。

< 使用したレンズはこちら >
Eマウントレンズ(フルサイズ対応)
FE 70-200mm F4 G OSS SEL70200G

標準単焦点レンズ精緻な描写で残す、
渓流の清涼感

Distagon T* FE 35mm F1.4 ZA,
 35mm, F16, 2.5秒, ISO100

梅雨の晴れ間を狙って撮影にいくと、このような清涼感のある風景に出会えます。木漏れ日の差すなか、鮮やかな苔や葉の一枚一枚までを細やかに描写するために使用したのはDistagon T* FE 35mm F1.4 ZA。単焦点レンズならではの明るい描写と、ここまで写るのかというほどの解像感は、風景撮影でも大いに活躍します。大口径によるぼけ描写を生かして撮るのも面白いと思います。もちろん単焦点なので、自分が積極的に動いて最適な画角やアングルを探す必要がありますが、それもまた撮影の楽しみのひとつです。

< 使用したレンズはこちら >
Eマウントレンズ( フルサイズ対応 )
Distagon T* FE 35mm
F1.4 ZA
SEL35F14Z

中望遠マクロレンズ中望遠の距離感で
表現する、自然の絵画

FE 90mm F2.8 Macro G OSS,
 90mm, F8, 1/160秒, ISO200

畑の脇に咲いているアヤメを見つけたとき、日本画のようなイメージがわき、画面全体を花で満たす構図を思いつきました。そこで、FE 90mm F2.8 Macro G OSSを単焦点中望遠レンズとして使い、バランスのよい距離感を探りました。レンズの解像感がすばらしく、拡大してみると花びらのシワまで克明に再現されているのが分かると思います。

大口径F2.8の明るさもこのレンズの魅力で、ぼけ描写がとてもきれいです。また、中望遠マクロであるためワーキングディスタンス(レンズ先端から被写体までの距離)を確保しやすく、フレーミングも決めやすいと思います。風景撮影などでズームレンズと一緒に一本マクロレンズを持っていくなら、迷わずこのレンズをおすすめします。

〈写真の一部を拡大〉
高い解像感で花びらのシワまで克明に描写
< 使用したレンズはこちら >
Eマウントレンズ( フルサイズ対応 )
FE 90mm F2.8 Macro G OSS SEL90M28G
写真家 福田健太郎とG Master

多彩な緑が奏でる
清々しさ

新潟県の雨飾山(あまかざりやま)のブナの森です。梅雨に入る直前に撮った作品ですが、この時期の森はのどかで清々しさを感じます。ふと見上げると、鮮やかな緑にあふれ、樹間からのぞく青空には筆で払ったかのような雲が浮かんでいました。この気持ちよさを写真に残すべくシャッターを切りました。レンズはG MasterのFE 16-35mm F2.8 GMを使用しています。このレンズの鮮鋭度は目を見張るものがあります。葉が生い茂っているようなシーンでは、レンズの描写力が如実に表れるものですが、輪郭を描く線が細く、とてもシャープに描写されています。さらに、緑の明部から暗部まで階調豊かに再現されており、自分のイメージした色や世界を忠実に表現できました。また、このレンズの開放F2.8の明るさは、星空やホタルの撮影などにも威力を発揮し、一本で撮影の幅がぐっと広がります。ピントの山がつかみやすく快適に撮影できるところも気に入っており、風景を撮る方にはぜひ手にしてほしいレンズです。梅雨の季節は、みずみずしい緑の美しい森や水辺の風景がおすすめです。自分の写欲をかきたてる風景を探して、この季節ならではの撮影を楽しんでみてください。

FE 16-35mm F2.8 GM,
 18mm, F8, 1/160秒, ISO200

撮影に使用したレンズ

Eマウントレンズ
( フルサイズ対応 )
FE 16-35mm F2.8 GM

SEL1635GM

APS-Cセンサー搭載Eマウントカメラでも FEレンズがおすすめな理由 APS-Cセンサー搭載Eマウントカメラでも FEレンズがおすすめな理由