あなたのVAIOの中には、聴けば気持ちが奮い立つ「自分のテーマ曲」と呼べる音楽が入っていますか？幼い頃にハマったアニメ作品の音楽を密かに再生しては、日々、励まされている方も多いのではないでしょうか。

1995年にテレビ放送後、劇場版、新劇場版と映画化され、国民的ヒットアニメとして今も愛されている『新世紀エヴァンゲリオン』。本作が高く評価されている点のひとつに、庵野秀明監督がこだわり抜き、作り込まれた音楽があります。庵野監督の高い要求に応えているのは、日本を代表する作曲家で音楽プロデューサーの鷺巣詩郎氏。鷺巣氏の監修の下、数々のハリウッド映画サントラなどを生み出しているハリウッド・バーニーグランドマン・マスタリングで、ハイレゾ配信専用にリマスタリングされたのがエヴァンゲリオンのサウンドトラックなのです。

ハイレゾ音源の『エヴァンゲリオン・サウンドトラック』には、どんな聴きどころがあるでしょうか。制作を担当した、キングレコード スターチャイルドレコード チーフプロデューサーの宿利 剛氏に話を聞きました。

「まず私が推薦したいのは、アルバム『NEON GENESIS EVANGELION【2013 HR Remaster Ver.】』から、『残酷な天使のテーゼ』です。テレビ版の主題歌をハイレゾ向けにマスタリングしたものです。このハイレゾ音源が米国のスタジオから送られてきて、初めて聴いたとき、『すごい！』という言葉しか出てきませんでした。スタジオで聴く感動がそのままに近くよみがえるという意味では、VAIOとスピーカー「SRS-X9」の組み合わせで聴き比べをおススメしたいなと。ハイレゾだと、ベースラインのかっこよさ、間奏のパートの音の粒がはっきりしていて、奥行き、立体感が出ています。あと、この曲はカラオケで今でもよく歌われているので、歌っている高橋洋子さんの息づかいがよくわかるハイレゾ音源を、カラオケで歌う際の参考にしてはいかがでしょうか（笑）」。（宿利氏）

たしかに、豊富な情報量でスタジオの空気感まで体感できるワイヤレススピーカー「SRS-X9」があれば、自宅の部屋が特別な音響空間になり、あのキャッチーなフレーズとメロディがいっそう気持ちよく体に入ってきそうです。

「次の推薦曲は、同アルバムから『DECISIVE BATTLE』です。これは物語中の戦闘曲なんですが、ヘッドホン「MDR-10R」で聴くと楽しいですよ。「MDR-10R」は耳が包まれるので、この楽曲のモチーフになっている、ティンパニーの鳴りのよさがはっきり、ズーンと来ますね。
あと、後半に20秒ほど、弦も管もすべての楽器が音を出すパートがありますが、トランペットが“がなっている”ところで、まるで奏者の表情が見えるほど、音の輪郭が分かります。また、この曲で印象的なハープの音も、MP3などの圧縮音源で聴いてしまうと、その圧倒的な存在感が十分に味わえないかもしれません。あと、音に厚みが出るので、トランペットソロパートは、人数感すら感じてしまいます。（宿利氏）

楽器それぞれの音を認識でき、かつ、すべてがシンクロする心地よさを感じられるのは、パワフルな低域からクリアな高域の音まで広帯域再生を実現する「MDR-10」ならではでしょう。

「次は、『NEON GENESIS EVANGELION Ⅱ【2013 HR Remaster Ver.】』の『THE BEAST II』と、『NEON GENESIS EVANGELION Ⅲ【2013 HR Remaster Ver.】』の『NORMAL BLOOD』を聴き比べてみましょう。これらは、原曲は同じですが、楽器の編成や、アレンジが違います。前者は、初号機が“覚醒”するシーンで、後者は、テレビシリーズの要所要所でテーマ曲的に使われました。 ハイレゾで聴くと、管楽器とストリングスの組み合わせ、編成の存在感、輪郭の出方が、MP3などとはまったく違う。その高揚感はずば抜けています。夜遅い時間まで仕事をして疲れたときとか、ヘッドホンをして、この曲を聴いてみてください。疲れが吹き飛びます。『THE BEAST II』のほうが、『NORMAL BLOOD』より、ゆっくりとしたテンポで流れていくんですが、知っている曲がゆっくりになると、感情が激しく揺さぶられるというか、印象が増しますよね。細かいフレーズがしっかり聴こえますし、コーラスの重ね方とか、ハイレゾだと明瞭感とか奥行きまで違うのがわかる。同じ曲で、テンポが違うという認識だったものが、ハイレゾなら、音作りの根本から違うのがわかりますよね」。（宿利氏）

「最後は、『NEON GENESIS EVANGELION Ⅲ』からピアノ曲の『CRIME OF INNOCENCE』を選んでみました。ヒロインの一人、綾波レイのテーマ曲のように言われている曲ですね。スピーカー「SRS-X9」だと、空気感とか、生の音の魅力が伝わります。上の音が広く出て、あざとくない純粋な音。ちゃんとその場で聴いている感じ。また、かなりのボリュームにあげても、こうやって取材で話しながら聴いていて、音が会話の邪魔にならない。これって、録音物としては、最高の聴こえ方ですよね。音の帯域がすごく考えられているなと。ほかにもこのアルバムには多くのピアノ曲が入っています。圧縮音源との差はピアノ曲がいちばんわかりやすいと思いますので、ときどきの気分に合わせて聴いていただきたいですね」。（宿利氏）

慣れ親しんだ曲もハイレゾ音源で改めて聴くと、難しい音作りから逃げないスタッフの魂が届き、改めて特別な曲に感じられます。エヴァンゲリオンのハイレゾ音源サウンドトラックには他にも多彩な音楽が収録されていますので、ぜひ聴いてみてください。

アニソンに続いて取り上げるのは、J-POPです。ハイレゾ音源を配信するmoraに、初心者の方におすすめの作品を聞いてみたところ真っ先にあがったのが、中島美嘉『ずっと好きだった〜ALL MY COVERS〜』。有名曲のカバーが12曲収録されている同アルバムのマスタリングを担当した酒井秀和さんに、お話を伺うことができました。

最初に酒井さんが推薦してくれた１曲は、DREAMS COME TRUEのヒット曲として知られる『やさしいキスをして』。スピーカー「SRS-X9」で試聴していただいた。

「ハイレゾの効果が存分に発揮された曲。そんな観点で、選んでみました。聴きどころはまず、イントロから歌に入る瞬間の緊張感。あと、中盤から終盤にかけてのピアノの躍動感。ハイレゾで聴くとそれぞれの音の距離感がはっきりわかって、また、徐々に前に来るのが心地よいんです。CDより細かく音を刻めるので、調子が低いところから、上に向かってどんどん上がっていくダイナミクス（抑揚）が楽しめると思います」。（酒井氏）

ハイレゾだと、CDの倍くらいの帯域まで広く音を再現できると言いますが。

「はい。そのおかげで、声の厚みや伸びやかさをカットせずに届けられるんです。中島さんのようなヴォーカリストの声は、たとえば、雑踏の中で聴いても、「あ、中島さんの声だ、きれいだな」とわかるほど豊かな成分を含んでいます。中島さんが生まれながらに持っている、きめ細かい“シルキー”な声と、体全体が鳴っているような発声が、ハイレゾならまるでその場にいるかのように「見えてくる」。今までのラジカセやスピーカーはCDの帯域に合わせてつくられていたので、本来は出ている帯域の音をカットせざるをえませんでした。でも、このスピーカー「SRS-X9」なら、高い方の音がよく伸びていて、かといって、出しゃばらず、メロディとのバランスもとてもいいです」。（酒井氏）

酒井氏には、同じ曲をヘッドホン「MDR-10R」でも試聴していただき、その感想は「スピーカーで聴いたときと印象が変わることなく聴ける」でした。音が空気を伝わってどう人に届くか。いつでも緻密に計算しているマスタリングエンジニアがそう感じるほど、今は、ヘッドホンでも広帯域再生により空気感を再現できようになっています。

「中島さんの声の魅力といえば、世界的な名曲の『WHAT A WONDERFUL WORLD』も、聴いていてワクワクします。ハイレゾは音を識別する能力が高いので、彼女の息づかいまで聴こえてきますね。少しボリュームを下げて聴いても、やっぱりハイレゾだと、歌が楽器に負けてなくて、吐息さえ明瞭です」。

続いての曲は、ジャズのスタンダードナンバーをカバーした『YOU'D BE SO NICE TO COME HOME TO』。

「もともと収録されたマスターは、ハーフインチというアナログのテープです。アナログ音源が持つやわらかさ、中低音のふくよかさを、ハイレゾで再現できていると思います。またこの曲は、管楽器とかスネアドラムの音とか、いろんな音が中音域に集まった曲です。でも、グルーヴ感がそこなわれていない。声と同じ帯域に楽器が重なると、歌の繊細さやアレンジの工夫など、消し合って両方がうまく出なかったりするのですが、音の住みわけができていて、各々のポジションを守りながら、立体的に音が伝わる。再現性の高いハイレゾと、ハイレゾ対応のスピーカーならではだと思います。さらに、ヘッドホンだと環境に左右されず、音の大小の差がわかりやすいので、ヘッドホン「MDR-10」で聴いてみるのも別の面白さがありますね」。（酒井氏）

最後は、BEGINのヒット曲『恋しくて』を独特なレゲエサウンドにアレンジした一曲。

「楽曲自体は、“ひずみ感”も強いし、決してハイファイではないですよね。でも、レゲエの持つパワーが表現されていて、すごくエネルギーが感じられると思いませんか？ ギターの音、ドラムのタムタムの音、“バリバリした”音の感じだけど、力がある。ハイレゾには、高い再現性だけでなく、エネルギーを伝える側面もあるなと驚きました」。（酒井氏）

「僕がハイレゾ音源をマスタリングするときに大切にしているのは、個々の音楽がもともと持っている特徴をしっかり捉えることです。リスナーは必ずしも、再現性の高いハイファイな音ばかり求めているわけではありません。1曲1曲に合ったアプローチをしようと思っています。曲の本質にできるだけリーチすること。エネルギーとか、グルーヴとか、なぜそういうバランスになっているとか。その本質にリーチし、それをCDよりもたくさんの情報と情熱を込められる、ハイレゾという“大きな器”に入れるのが僕の仕事です。個人的な意見ですが、今後も、音楽の伝え方は、進化していくと思います。まだまだハイレゾの魅力はたくさんありますので、紹介しきれなかった曲もぜひ聴いてみてください」。（酒井氏）

ポップスでも、ジャズでも、ロックでも、演歌でも…。どんなジャンルの音楽も、ハイレゾで聴けば、新たな発見や感動がありそうです。あなたもまずは聴きなじんだ音楽から、ハイレゾをはじめてみてはいかがでしょうか。

エヴァのオーケストラサウンドの大迫力から、
楽器それぞれの音の輪郭まで。
中島美嘉さんのシルキーな声から、歌と楽器が
集まったグルーヴ感まで。あらゆる音の楽しみを
あなたに届けるハイレゾ音源。
お持ちのVAIOに、ハイレゾ音源対応のヘッドホンやスピーカーを組み合わせることで、
ハイレゾを楽しむことができます。

一般的にオーディオ用のデジタル信号は、原音となるアナログ信号を一定時間ごとに標本化（サンプリング）し、それを量子化することで作られます。サンプリング周波数とは、1秒間に何回標本化作業を行うのかを表すもので、単位は「Hz」です。サンプリング周波数が高いほど得られる情報が多くなり精度は上がります。

サンプリングされた時点でのアナログ信号レベルをデジタルデータで表現することを量子化と言いますが、どれくらいの精度で読み取るのかをビット数で表しており、単位は「bit」です。bit数が高いほど、原音からより忠実に変換することが可能となります。

サンプリング周波数とbit数それぞれの数値が大きくなるほど、原音の再現性に優れ、微細な音の変化や音の余韻までも表現することが可能となります。ハイレゾ音源では、CDの「44.1kHz/16bit」規格を超えるものを指し、「96kHz/24bit」と「192kHz/24bit」が主流になっています。

従来から配信している圧縮音源では伝えきれなかったレコーディング現場の空気感やライブの臨場感を、ビット数の高さにより、楽器や声の生々しさや艶などのディティールに触れてより感動的に体感できます。

編集方針は、「音楽と映像をたのしみたい大人のビジュアルマガジン」。ハイレゾに関してのさまざまな特集をお送りする月刊企画です。My Sony Clubのメールマガジンで毎月配信しています。
ビッグアーティストの世界的ヒット曲や、日本歌謡史に残るちょっとなつかしい曲などを題材に、今、ハイレゾの技術だからこそ味わえる新たな音楽体験を、“音のプロフェッショナル”へのインタビューをもとに紹介しています。ハイレゾの魅力をもっと知りたい！という方は、こちらもぜひご覧ください。

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