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映画制作「百年の時計」(金子修介監督作品)

プロダクション

NXCAMスーパー35mmカムコーダーNEX-FS100Jを使って全編香川ロケで制作した長編映画

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映画制作「百年の時計」(金子修介監督作品)

2013年5月全国公開の金子修介監督作品「百年の時計」は、NXCAMカムコーダーNEX-FS100Jによって撮影された作品です。
金子修介監督に、この映画の見どころやカメラ選定の決め手やその表現力を、釘宮慎治撮影監督に、NEX-FS100Jの実際の使用状況や、性能・機能・使い勝手の面での評価を、そしてカラリストとして参画された株式会社オムニバス・ジャパンの戸倉良様には、カラーグレーディングやCG合成など、NEX-FS100Jで撮った映像の後処理工程での評価や、映画制作での可能性についてお話を伺いました。

映画「百年の時計」
製作:さぬき地産映画製作委員会、企画製作プロダクション:株式会社ブルー・カウボーイズ、プロデューサー:金丸雄一、監督:金子修介、脚本:港岳彦、撮影:釘宮慎治、出演:木南晴夏、ミッキー・カーチス、中村ゆり、宍戸開、水野久美、井上順ほか、HD(16:9) DCP 5.1ch、105分。

2011年に路線開業100周年を迎えた「ことでん(高松琴平電気鉄道)」を主舞台に、美術館学芸員と老芸術家を主人公とする人間ドラマ。自らの過去と向き合うことで成長する姿や、家族との固い絆を再確認するさまが描かれるご当地映画。2012年8月湯布院映画祭でワールドプレミア上映、同年10月香川県で先行上映、2013年5月テアトル新宿、6月テアトル梅田を皮切りに全国公開。(配給:太秦(株))

予告編(90秒バージョン)


金子修介監督作品「百年の時計」

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限られた予算など制約が多い中での映画づくりでしたが、スタッフ、キャストの努力もあって本当に映画らしい映画に仕上げることができました


金子修介監督

「百年の時計」という作品は、香川県高松市を中心に"ことでん"の愛称で親しまれている琴平電気鉄道が2011年に路線開業百周年を迎えて、その記念事業の一環として企画がスタートした、いわゆるご当地映画です。お話をいただいた時に、明治から100年走っている電車、そこでの様々な人の出会いや別れなどから、おもしろいストーリーが紡ぎ出せるのではないかと思って、監督を引き受けました。シナハンやロケハンを通して、若い女性と老芸術家を主人公に、時計をモチーフに明治・昭和・現代の時の流れや香川の自然や風土を織り交ぜていくことで、映画にふさわしい世界観を表現できるのではないかと感じました。

予算に制約がありましたので、当初からフィルムではなくデジタルシネマ制作を前提として、スタッフ数も絞り込まざるを得ませんでした。撮影についても、大型スクリーンを使ったカメラの事前テストや、現場で撮影助手を付ける余裕はありませんので、カメラ選定を含めて、釘宮撮影監督に一任しました。これまで多くの作品で撮影を担当してもらい、技術や表現において信頼している彼が選んでくれたのがFS100でした。彼自身がこのカメラを所有しており、すでに映画の撮影で使用しているという実績があったことも安心材料でした。もちろん、実際に画質を見せてもらい、十分に映画用として使えると判断したことは言うまでもありません。

クランクインしてから約3週間の撮影期間に、いろいろな苦労や予期せぬ出来事はありましたが、ことでんをはじめとする地元の方々の全面協力のおかげで、通常なら難しいシーンの撮影が可能でした。また、「20世紀少年」でのユニークな演技で注目を集めていた学芸員役の木南晴夏さんや、老芸術家役のミッキー・カーチスさんをはじめとしたキャスト、撮影現場でいくつもの役割を兼務してくれたスタッフの努力もあって、どうにかクランクアップを迎えることができました。どんな現場でも、機動力と表現力を発揮してくれたFS100というカメラの功績も大きかったと感じています。

その後、戸倉さんをはじめとしたポストプロダクションのスタッフの協力を得てようやく完成することができました。私自身、映画館のような大画面で観たのは、高松で香川県知事や高松市長など支援してくれた方々をお招きして開催した完成試写会が最初でした。当初懸念したビデオっぽさがまったく感じられない点や、映画にふさわしい奥行きが表現できていた点には正直驚きました。また、ギリギリのスタッフで撮った作品とは思えない豊かさといった点でも非常に満足しました。実験的な手法も結構駆使しているのですが、湯布院映画祭や香川県での先行上映でも観客の皆さんに違和感なく受け止めてもらえた点も嬉しかった点です。

金子 修介:プロフィール

かねこ・しゅうすけ●映画監督。1955年、東京生まれ。東京学芸大学卒業後、1978年に日活に入社。助監督を経て、1984年「宇能鴻一郎の濡れて打つ」で監督デビュー。にっかつ撮影所の契約社員、ニュー・センチュリー・プロデューサーズ、そしてフリーランスの監督として数多くの作品を手がける。「ラスト・キャバレー」(1988年)、「就職戦線異状なし」(1991年)、「卒業旅行ニホンから来ました」(1993年)、「ガメラ大怪獣空中決戦」(1995年)、「あずみ2 Death or Love」(2005年)、「デスノート the Last name」(2006年)、「ばかもの」(2010年)、「メサイア」(2011年)など多数の監督作品がある。1995年「ガメラ大怪獣空中決戦」で映画芸術誌邦画ベスト10の第1位、1996年「ガメラ2 レギオン襲来」で第17回に日本SF大賞受賞。

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NEX-FS100Jのスーパー35mmセンサー、レンズ交換、オートフォーカスに着目して導入。すでに「百年の時計」を含めて2本の映画撮影で使用


釘宮慎治撮影監督

FS100については、発表された時から注目していました。スーパー35mmセンサーでレンズ交換式、なおかつオートフォーカスが使えるというのが大きな魅力でした。低予算の映画制作では、2/3インチクラスのイメージセンサーを搭載したビデオカメラを使用せざるを得ないケースもあります。表現力という点でどうしても限界があって、これがとてももどかしく感じられました。だったら、FS100を個人的に購入して、こちらから提案させてもらおうという訳です。これぐらいの価格帯ならレンタルするよりも購入するほうが経済的ですし、何よりも所有して普段から使いこむことでカメラの性能を120%引き出せると考えています。今回の作品で、金子監督に勧めたのもそうした背景、経緯があったからです。監督もおっしゃっているように、別の映画撮影ですでに使用していたことも大きな要因です。

FS100最大の魅力は、もちろんスーパー35mmセンサーとレンズ交換式による表現力にあります。今回の作品でもAマウントレンズ28-75mm F2.8 SAM SAL2875をメインに、付属のEマウントレンズE18-200mm F3.5-6.3 OSS SEL18200などを使用し、監督のイメージ、意図に近いカット、画づくりを実現することができました。時間的な制約のある電車の発着シーンなど、2カットぐらいはDSLRをサブカメラとして使用していますが、それ以外ほぼ全編の撮影をFS100で行いました。特にAマウントアダプターLA-EA2を使用した時には、高速の位相差検出方式オートフォーカスが強力でした。
高感度・低ノイズもこのカメラの強力な武器です。特に暗部の低ノイズは魅力です。ISO2000ぐらいまでのゲインアップでもノイズ感はまったくありません。従来では、照明をたくさん使って作り込んでいかないとできないような表現が、窓外の照明だけで演出できているといったシーンもあります。逆に感度が高すぎて、室内でも絞りを開けると露出オーバーになってしまうことがあったほどです。そういった場合には、可変NDフィルターを使用していました。

機能的にも、映画の撮影に有効に使えるものが少なくありません。その一つがピクチャープロファイル機能です。今回の作品は、明治、昭和、そして現代という大きく3つの時代を背景にしたストーリーになります。当初、明治のシーンはモノクロームでいくというアイデアもあったのですが、これをピクチャープロファイル機能でそれぞれの時代にマッチする画や色にして監督に観てもらい、GOサインをいただきました。(※設定値はこちら)アメリカなどでは、非常に評価の高い機能で、ガンマカーブをカスタマイズする各種パラメータが活発に議論されています。日本でももっと注目していい機能だと個人的には感じています。

1080/60pでのハイスピード撮影も表現力の向上に大きく貢献してくれています。今回の映画でも教会の中で主人公に舞う花びらがやがて雪に変わる回想シーンで使っていますが、非常に魅力的で、印象深いカットになっています。その画質の良さは群を抜いており、2.5倍速のスローモーションというのも芝居で使う上で極めて効果的であると実感しました。
最後が、監督も指摘されていた機動力です。コンパクトで、手ブレ補正やオートフォーカスが使える点は手持ちでの撮影に便利であっただけでなく、電車の中など狭い場所での立ち回りでとても有効でした。

唯一の懸念材料として、映画館の大きなスクリーンで上映した時にAVCHDではたして画質的に耐えられるかという点がありましたが、今回の作品の上映でそれも払拭することができました。正直、悔しい思いを残したシーンも少なからずありましたので、まだまだ可能性を秘めたカメラなのではないかと思います。これから、さらに使いこなして経験値を積み上げることで、次の作品に活かしていきたいです。

<ピクチャープロファイル設定>

明治 昭和 現在
Black Level: 15 Black Level: -15 Black Level: 0
Gamma: Cinematone1 Gamma: Cinematone2 Gamma: ITU709
Black Gamma: Low, Level -1 Black Gamma: High, Level -7 Black Gamma: High, Level 0
Knee:
  Manual, Point= 80.0%/Slope= -2
Knee:
  Manual, Point= 105.0%/Slope= 0
Knee:
  Manual, Point= 80.0%/Slope= -2
Color Mode: Cinematone1, Level 8 Color Mode: Standard1, Level 8 Color Mode: ITU709, Level 8
Color Level: -7 Color Level: -7 Color Level: 0
Color Phase: 0 Color Phase: -7 Color Phase: 0
Color Depth:
  R= -7, G= -7, B= -7,
  C= -7, M= -7, Y= -7
Color Depth:
  R= 7, G= 7, B= 7,
  C= 7, M= 7, Y= 7
Color Depth:
  R= 0, G= 0, B= 0,
  C= 0, M= 0, Y= 0
Detail: 0 / Manual Set = Off Detail: 0 / Manual Set = Off Detail: 0 / Manual Set = Off
釘宮 慎治:プロフィール

くぎみや・しんじ●撮影監督、日本映画撮影監督協会(JSC)会員。1965年、埼玉県生まれ。日本映画学校卒業後、撮影助手を経て、2005年「蝉しぐれ」で撮影監督デビュー。以後、メジャー作品から前衛的な作品まで幅広い作品で撮影、撮影監督を務める。「歌謡曲だよ、人生は」(2007年)、「子猫の涙」(2008年)、「罪とか罰とか」(2009年)、「彼岸島」(2010年)、「酔いがさめたら、うちに帰ろう」(2010年)、「LOVE まさお君が行く!」(2012年)などのほか、金子修介監督作品でも「ばかもの」(2010年)、「ボールダンシングボーイ☆ズ」、「メサイア」、「青いソラ白い雲」(いずれも2011年)など多くの作品で撮影を担当。1995年「蝉しぐれ」で、第1回大阪シネマフェスティバル撮影賞、第29回日本アカデミー賞優秀撮影賞、第15回日本映画批評家大賞奨励賞受賞。

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動画専用に開発されたスーパー35mmセンサーならではの暗部の階調表現の豊かさや情報量、低ノイズがNEX-FS100Jで撮った映像の魅力


戸倉良カラリスト

デジタルシネマ制作では、さまざまなフォーマットの撮影データがポストプロダクションに持ち込まれるようになっています。AVCHD規格もその一つで、今回の「百年の時計」が初めてということではありません。ただ、カラリストの立場でこれまでのものと比較したとき、今回は非常に作業が楽でスムーズだったという印象があります。その理由のひとつはFS100のクオリティであり、もうひとつは監督や撮影監督の現場での追い込みや、意図や意思が明確に伝わった点をあげることができるのではないかと思います。

前者は監督や撮影監督も指摘されていたことですが、FS100の捉える映像のクオリティは動画専用に開発されたスーパー35mmセンサーの高感度・低ノイズによるものでしょう。特に暗部の階調表現や低ノイズ感は魅力的で、補正やグレーディングする上で必要となる情報量がしっかりと記録されています。逆光で影になってしまった人物の顔を明るく補正する際も、ノイズが目立たないためとてもスムーズでした。この点が作業効率の向上に大きく貢献していると思います。

後者はもちろんクオリティとも関連するのですが、制作サイドの意図や意思が映像に表れており、処理がしやすかったという点です。一番分かりやすいのが、ピクチャープロファイル機能を活用した画づくりで、それぞれに明確なトーンでまとめられているので、余計なことをする必要がありませんでした。また、色を載せたり、あるいは補正をかけたいカットでは必要な情報量がしっかり残っている点など、サポートする立場では非常に有り難い配慮です。撮影現場で仕上げを前提としてかなり追い込んだ撮影を行い、補正を要するカットもそれに応じて撮影した成果だと思います。

今回の作品では、電車の車窓に映るそれぞれの時代に合った風景や自然をCG合成で表現していますが、こういった合成シーンも違和感なく、馴染ませることができたと思っています。ここでも、基本的な画のクオリティに加え、制作サイドの明確な意図や意思が伝わったからこそ具現化できたのではないかと思っています。
制作スタッフの方々、キャストのみなさんとともに、「百年の時計」という映画制作に参画できたことを嬉しく思っていますし、これから全国公開で大勢の観客のみなさんに楽しんでもらえることを期待しています。

戸倉 良:プロフィール

とくら・りょう●カラリスト。株式会社オムニバス・ジャパン 第1ポストプロダクションセンター 制作技術部 カラーグレーディング課所属。映画やCMなどのハイエンドコンテンツ制作においてカラリストとして活躍中。近年担当した作品としては、「ばかもの」<金子修介監督、釘宮慎治撮影監督>、「ハゲタカ」<大友啓史監督>、「THE SCARLET PIMPARNEL」<清水俊文監督>、「怪物くん3D」<中村義洋監督>、「貞子3D」<英勉監督>、「たとえば檸檬」<片嶋一貴監督、釘宮慎治撮影監督>、「TAP完全なる飼育」<片嶋一貴監督、釘宮慎治撮影監督>、その他CM多数。

©さぬき地産映画製作委員会/真鍋康正 小松尭 大久保一彦 金子修介 金丸雄一

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