蓄電システム

事例紹介

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中継局に初めてリチウムイオン蓄電池を採用

民放6局が共同運営する千葉県南房総市の中継局「丸山局」は、リチウムイオン電池搭載の48V直流電源装置を導入し、運用を開始しました。

鉛蓄電池から同装置へリプレイスした背景には、これからの1〜2年で
多くの中継局が直面する、大きな課題がありました。

お客さまの声:
株式会社 フジテレビジョン 技術局放送技術センター
送信技術部 部長職 安孫子 信明様

 送信機の入れ替えのタイミングが一斉にやってくる

千葉県南房総市の山あいにある中継局「丸山局」は、千葉テレビ放送、日本テレビ放送網、テレビ朝日、TBSテレビ、テレビ東京、フジテレビジョンの民放6局が共同運営しています。これまで運用してきた鉛蓄電池の直流電源装置の寿命に伴い、今回、リチウムイオン電池搭載の無停電電源装置にリプレイスしました。中継局の48V直流電源装置にリチウムイオン電池が採用されるのは、初めてのことです。採用の背景について、同機のリプレイスを先導されたフジテレビジョンの安孫子氏は「これから多くの中継局が直面する課題に対応するため」と語ります。中継局が直面する課題とは──。

「2003年の地上デジタルテレビ放送開始から今年で15年目を迎えました。この15年間は、アナログ放送が終わることが決まり、アナログ周波数の変更があり、デジタル放送の建設、アナログからデジタルへの切り替えがありました。さらに東京エリアでは東京タワーから東京スカイツリーへの移転もあり、非常に短期間で中継局の整備を急ピッチに進めました。このデジタル放送の開始のタイミングで設置した送信機が、一斉に入れ替えの時期にきています」

 直流電源装置の小型化でスペースを確保する

送信機の入れ替えが、鉛蓄電池の直流電源装置からリチウムイオン電池搭載の直流電源装置へのリプレイスにどのように関係しているのでしょうか。その問いについて安孫子氏は、「送信機の更新スペースを捻出するため」と言います。

「送信機の入れ替えは、いかに放送を止めずに行うかを考えなくてはなりません。昔からある中継局の局舎は、スペースが広く、古い装置と新しい装置を並べて切り替えていました。しかし、デジタル化の時に急ピッチで建てた局舎は、装置を並べるのに十分なスペースがありません。そこで、限られた中でスペースを確保するために、送信機の小型化を試みるなど、小型にできるものは小型にしていくよう進めています。その中で目を付けたのが直流電源装置です。直流電源装置は、長いバックアップ時間を得ようとすると、電池の容量が大きくなり、その分サイズも大きくなります」

リチウムイオン電池であれば、従来の鉛蓄電池の装置よりも、蓄電池の個数、重量が半分以下となり、設置スペースも半分以下にすることが可能となるといわれています。「バックアップ用装置のスペースが減れば、その分、送信機更新のためのスペースを作ることができます。リチウムイオン電池を採用している中継局はまだ実績がありません。だからこそ、いち早く導入し、結果を出して、ここ1〜2年で訪れる送信機の更新ラッシュに備える必要があったのです」

 設置と運用・メンテナンスの容易さにも大きなメリット

丸山局までの約15分の道のりは、足場が良いとは言えない山道。装置の小型軽量化は、設置・メンテナンス・運用の面で大きなメリットとなります。

リチウムイオン電池が小型軽量であることは「設置の容易さ」という利点もありました。関東だけで191の中継局があり、その中で直流電源装置が必要なのは、約100局。ほとんどが、自動車が横づけできない山あいにあります。つまり、数十キロの電池を人力で運ばなければならないのです。

「自動車が停められる場所から丸山局は徒歩で15分ほどですが、それでもかなりの重労働です。全国には、1時間も歩くような場所にある中継局がたくさんあり、これからその中継局も装置の更新をしていかなければなりません。また、リチウムイオン電池は期待寿命が約15年と長いのもメリットです。期待寿命が長ければ、蓄電池の交換をしなくてもよく、その分、労力もコストも削減できます」

「ケーブルがすっきりとまとめられ、メンテナンスもしやすいです」(安孫子氏)

さらに、BMU(バッテリーマネジメントユニット)によって、計画的な運用が可能になったといいます。「鉛蓄電池の場合、寿命を測定するためには内部抵抗を測る必要があり、専門の業者に依頼していました。それでも正確な寿命を出すのが難しかったのですが、今回のリプレイスによって、日常点検のなかで、BMUを通じて簡単に正確な寿命のデータが引き出せるようになりました。これは今後、計画的な運用・メンテナンスにつながっていくと考えています」

充電器×1、蓄電池モジュール2kWh IJ1101M×12、BMU×1の構成による、リチウムイオン電池搭載の48V直流電源装置。
「リチウムイオン電池が非常に小型軽量なため、1つのラック内に収めることができました」(安孫子氏)

東京タワー時代から東京スカイツリーに変わった今まで、15年以上にわたって電波をリレーする中継局の整備を担ってきた安孫子氏。最後に思いを伺いました。
「放送は、災害時の重要なインフラでもあると考え、私たちは責任を持って中継局の整備を進めています。中継局ごとに条件が異なるため、複数のバックアップの手段から選べることが望ましいと考えています。また、安全と安心には、コストがかかります。できるだけ高品質なものを低コストで実現することを真剣に考えなければなりません。それらの点からも、放送局が信頼できるパートナーのソニーが提案してくれた今回のプランは、非常に有益だったと思っています」