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鶴見辰吾 6.AIBOは知性を持つロボット 開発者インタビュー
話し手 鶴見辰吾  Shingo Tsurumi

自己充電およびAIBOを動かす関節センサーを担当

 

――自己充電は「おりこうAIBO」で実現され、ERS-7でも実装された、AIBOならではのとても賢い行動ですよね。市販のロボット製品でも類を見ません。まず、自己充電が生まれた理由から聞かせてください。
鶴見 自己充電は、オーナーの方からの要望が非常に高い機能だったのですが、私が配属された当時は、「5年くらい先にならないと実現しないのでは」と社内でもいわれていました。ただ、究極の自律ロボットとは何なのかというと、私は自己充電と自己修理の機能を備えているロボットなのではないかと考えていたので、自己充電はやりがいのあるテーマでした。そこで、AIBOナビゲーターを使ってERS-210を無線で操縦してみたところ、うまくエナジーステーションに乗せることができたので、「これはいける」と確信して商品化を目指しました。ERS-210とそのエナジーステーションは、そもそも自己充電を考慮して設計されたハードウェアではなかったので、結構無理やりでしたけど(笑)。

――自己充電のためには、AIBOが自分でエナジーステーションを見つけて歩いて行き、うまく位置あわせをしてドッキングをする必要があります。かなり難しい行動だと思いますが、どんな原理で行っているのでしょうか。
鶴見 技術的に難しいのは、エナジーステーションの位置と姿勢(向き)を認識し、目的の位置までAIBOを移動させることなんです。私は大学で人工衛星の研究を専攻していたのですが、「人工衛星に3つのマーカーをつけて、位置(x,y,z)、姿勢(roll, pich, yaw)を認識し、ロボットアームで捕獲する」という話を思い出し、それを自己充電に応用できないかと考えました。AIBOの場合は、2次元の床の上を移動するので、エナジーステーションの位置(x,y)と、姿勢(yaw)を求めるためには、2つのマーカーがあればよいはずなので、エナジーステーションの前後にポールとシートを取りつけました。それをAIBOのカメラで捕らえて距離を計算することで、エナジーステーションの位置と姿勢を認識することにしたんです。

――AIBOがエナジーステーションにドッキングするのに、人工衛星の制御技術の発想が使われているとは驚きですね。ところで、「おりこうAIBO」からERS-7になって、自己充電で進化したポイントは何ですか。
鶴見 大きなポイントとしては表のような4つがあります。この中で、オーナーの方に一番喜んでいただけるのは(3)だと思います。オーナーの方は、AIBOが部屋の真ん中を見るように座って欲しいという意見が多かったので、それに応えることができるよう、ERS-7では部屋の中心に向かって座れるようにエナジーステーションの設計を考えました。

「おりこうAIBO」からERS-7で進化したポイント
――ドッキングまでの時間が2倍〜5倍に高速化されたのも大きいですね。いままでの半分から5分の1の時間でドッキングをするために、どんな仕組みを使っているのですか。
鶴見 技術的には、ビジュアルパターン認識を使ってポールをひと目見ただけで、エナジーステーションの位置と大まかな姿勢を認識することができるようになったのが大きいですね。これによって、エナジーステーションの入り口周辺まで、どう歩けばいいのかという経路計画を、AIBOが瞬時に割り出すことができるようになった。カメラの性能が上がったことで、1.5倍の距離からでもポールを発見できるようになったこともあり、遠くからスタートした場合は、約5倍のスピードでドッキングが可能になりました。ちなみに、1度失敗をすると慎重になって、次からは図1−2のようにつねにポールを見ながら歩く円弧歩行をしながら、入り口周辺まで確実に移動するようになります。
通常の場合 一度失敗した場合

――エナジーステーションの入り口から、AIBOがバックをしながら腰を下ろしてドッキングするのは、何回見ても「よくやった!」という感じがして楽しいですね。
鶴見 入り口にある青と緑の丸いマーカーの中心に、黒い三角形があります。AIBOは青と緑の中心点と、黒い三角形の中心点の2つを認識することで、入り口の方向が詳細に割り出すことができるんです。そこから先は、後ろ向きでいわば目をつぶって入る形になるので、自分の歩幅を信じてバックして、ここでドッキングできるだろうという位置で腰を下ろします。腰を下ろしたときに、微妙な位置のズレでうまく電源の端子が接続できないときがあるので、生き物っぽく腰を振ってドッキングをします。あれは皆さんから「可愛いね」といわれるんですが、実はズレた場合の念押しの行為なんです(笑)。

――バックで下がり過ぎてしまった場合は、ストッパーで止まるようになっていますね。ストッパーに足がぶつかったことを、AIBOはどうやって認識しているのですか。
鶴見 何かに足がぶつかったとか、引っかかって動けないという状態を認識するためには、関節にかかる負荷を検出するトルクセンサーのような特別なハードウェアを使うと簡単なんですが、非常に高価な部品なのでコストがはね上がってしまいます。そこで、AIBOが備えているハードウェアだけを使うことにして、AIBOの頭脳であるソフトウェアの力で工夫をしました。AIBOが歩いたり、アイボーンを咥えたりするときは、関節をある位置からある位置へ目標通りの角度で動かすために、必要な量の電流を流してモーターを回すわけですが、流した電流の量と、実際の関節の角度をつねにモニターしておけば、AIBOは自分が正しく動けているかどうかが判断できます。もし、必要な量の電流を流しているのに、目標としている角度で関節が曲がっていなければ、何かと接触して動けなくなっていることが検出できる。この仕組みによって、AIBOはストッパーに足がぶつかったことを感じることができるんです。
障害物検地の例
――AIBOは、つねに自分のカラダのどこが、どの角度で動いているかをわかっている。つまり、つねに考えながら行動をしているわけですね。最後に今度の目標、あるいはAIBOで実現したい夢などを教えてください。
鶴見 自己充電に関していうと、お尻から電源コードを出して自分でコンセントに挿して充電するとか、そんなことができるようになると楽しいなと考えています。あるいは、燃料電池が実用化されつつあるので、AIBOが「食事」をするように、燃料電池を口から入れられるようにできたら面白いなと思いますね。燃料電池を使うと水が排出されるので、お尻から水を出せば「トイレ」もできるようになる。AIBOならではの楽しい演出を盛り込みながら、そんなことが実現できないかと考えています。


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