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雪山でもばっちり撮影、〜ペイントメニュー使いこなし術〜
タク この前友達と一緒にスノーボードに行っていろいろ撮影してきたんだけど、なんか雪が真っ白に飛んでしまったり、色がおかしかったりして、あんまり上手く撮影できなかったんだ・・
正ちゃん なるほどな。雪山のようなコントラストが激しい場所での撮影にはちょっとしたコツが必要なんだ。じゃあ今回は「雪山でもばっちり撮影 〜ペイントメニュー使いこなし術〜」をお伝えしよう。主にシーンファイル、ピクチャープロファイルなどと言ったカメラ画のチューニングの話だな。それでは説明していこう。

雪山など極端なハイコントラストな状況下での撮影法

天気が良く、一面の雪景色。サングラスをしないと目をぱっちり開けていられなくなるほどのまぶしさ。雪山などでのこうした極端なハイコントラストな状況下で撮影する時には、色々な工夫が必要なんだ。カメラマンが思い描く理想の画にぐっと近づけるためには、以下の4つのポイントを押さえる必要がある。
【1】 雪などの白つぶれを抑制する効果のある「KNEE機能」、
【2】 青空をより鮮明に映し出すことが可能な「カラーコレクション機能」
【3】 全体の色の濃さをコントロールする「マトリクス機能」
【4】 ハイコントラストな映像の質感を決める「ディテール信号」
(これらの機能は「カメラ機能活用集」に取り上げられているものが多いので
詳しくはそちらも参照してください)
実際に撮影した画像を見ながら解説していこう。
撮影に使ったカムコーダーは、XDCAM EXのPMW-EX1R。場所は冬の八ヶ岳だ。
まず、工場出荷状態での撮影を見てもらいたい。
【写真(1)】通常の環境下では、工場出荷状態で十分な描写力を持たせることができるんだが、雪山のように非常にハイコントラストな状況の場合、設定を変えてあげることで、見たままの映像により近づけることが出来る。

参考:メニュー画面

そこで、ピクチャープロファイルメニューにある、画柄をコントロールする機能を使いこなして、イメージを作り上げていくんだ。
 

写真(1)
工場出荷状態の設定での雪山撮影画像

【1】KNEE機能で雪の白つぶれを抑える
わかりやすくするため、少し極端な例を用いて説明しよう。写真(2)を見て欲しい。写真(2)は高輝度部分の階調再現をコントロールするKNEE(ニー)の設定を通常のオートからマニュアルに切り替え、ニーポイントを50(一番低いレベル)にした場合のものだ。(この機能の詳細は「カメラ機能活用集」を参照ください。)
写真(1)と比べると、白つぶれがかなり軽減されているな。白のつぶれが軽減されると、雪の立体感が表現されてきたことが確認できる。ただ、これはニーポイントを下げすぎているので、コントラストが無さ過ぎる画柄になってるぞ。

また、写真(1)の青空はかなり明るい色だったので、実際の見た目より空の色が淡く映りこんでいるな。さらに、木々の緑が実際より黒ずんで見えているし、画面中央にあるリュックサックの色もくすんで見えている。 それぞれの色を調整して思い通りの映像に近づけていこう。
 

写真(2)
ニーポイントを50(一番低いレベル)に設定したもの

【2】カラーコレクション機能で空をよりリアルな青に近づける
青空の調整には、カラーコレクション機能を使うといい。これは任意の色の濃さや色合いをコントロールする機能だ。空色だけの強調が可能だから、見た目の色の濃さにあわせることが出来るんだ。
実際に今回の例を取ってみると、まず空の色をサンプリングして、メニューにあるサチュレーション(色の濃さ)を上げていくと、空の色だけが濃くなっていく。今回はこの数字を液晶画面を見ながら、イメージにより近い色になるようにしてみた。
【3】マトリクス機能で、全体の色味を調整
マトリクス機能は映像全ての色の濃さ、色合いをコントロールすることが出来る機能で、ここでは、リュックの色を出すためには、マトリクスのサチュレイションモードをHIGH SATにして、かつ、レベルを+14に設定したことで、リュックの青やその他の色もイメージに近づけることが出来たんだ。
以上の【1】〜【3】のような調整をそれぞれ適度に施して、思い通りの映像に近づけたのが画像(3)だ。
(1)と(3)の比較をすると、雪の質感、空の青さ、リュックのしっかりとした色、それに、木々の色が自然な感じになったことがわかるだろう。
 

写真(3)
(1)の写真をニー62、カラコレ+65に変更したもの

【4】ディテール信号を調整することで木々の質感を出す。
当然、マトリクスの調整で、木々の色もコントロールすることができるが、木々が黒ずんで見えるのは、実は輪郭強調信号(ディテール)の幅とレベルが原因なんだ。
少し難しいから、ここでは結論だけ知ってもらいたい。木々のような細かな映像ではディテール信号の幅が広くて、レベルが高いと色が黒ずむし、逆に幅が狭く、レベルを少なめにすると、透明感が増す。ただ、ディテールの幅を細くすることでしゃっきり感が減少するから、その分ディテールレベルを少し多めにつけてあげよう。また、黒ずみはディテールの黒側の影響があるから、ディテールブラックリミッター機能を使い黒側のディテールレベルを抑制する。

さらに、別の場所での映像も比較してみよう。この写真(4)、(5)を見て欲しい。(4)は出荷状態の映像。(5)は木々の色と質感が高い再現性を持たせている。ディテールの調整が大きく貢献しているんだ。

写真(4)
ノーマル

 

写真(5)
ピクチャープロファイルを調整したもの
(調整項目は下記数値参照)

最後に今回設定したピクチャープロファイルの数値を参考までに載せておこう。

みなさんも、HDの高品位な映像をさらに質の高いものにするために、ペイントメニューにトライしてみてください。
 

雪山で撮影する正ちゃん

正ちゃんの雪山撮影データ(写真(5)を撮影時)

まとめ
雪山は、コントラストが強くて、色が少ないイメージになったり、強いディテールがついたりして質感が損なわれやすい。こういった難しい状況での撮影はピクチャープロファイル機能を使うとすぐれた映像表現を持たせることができるから、この機能を使いこなして慣れておくといいね。慣れてくると、さまざまな撮影でも使いたくなるはずだ。 正ちゃん
次回 タクはまた友人を誘ってスキー場に向かったようです。
次回は、「展示会でも役に立つ、速攻カメラ画質確認テクニック」をお届けする予定です。
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