映像制作機材 | HDCAM-SR
映像制作&編集用機材 トップへ サポート Q&A
トップページ What's HDCAM-SR 商品ラインアップ 事例紹介 サポート
日本映画撮影監督協会 機関紙「映画撮影」No.176 2008年2月15日発行 MECHANICSコーナーより転載|ソニー製デジタルシネマカメラ『F23』による 「紅い灯」撮影報告|ソニーPCL(株)開発本部 技術開発部 森田秀雄・宮坂義明 (共著)
2007年・夏 猛暑の中、ソニー製デジタルシネマカメラ『F23』を使用して「紅い灯」の撮影を行いました。この「紅い灯」はF23の色調研究作品として映画スタッフにより制作したものです。最終的にフィルム出力する事を前提にした短編作品 (約5分)で、F23の特徴である広ダイナミックレンジ(S-LOGガンマ)/広色域(WIDEモード)のハンドリングの方法を実証実験しました。
撮影ロケは都内2箇所(屋内)、栃木県での屋外撮影ではクレーン利用など本格的な撮影となりました。RGB4:4:4/23.98PsFで記録、全編に渡りF23カメラ設定はSHOOT MODE:CINE,GAMMA:S-LOG,COLOR:WIDE,D-RANGE:EXTENDとし、記録はHDCAM-SRポータブルレコーダー(SRW-1 RGB4:4:4/10bit)を使用しました。
本番撮影前にキャメラマンと共にS-LOG特性把握のためカメラテストを実施。11段のグレースケールチャートを用い、スポットメーターの読み値をもとにチャートにあてる照明光量を変化させ、同時にカメラからの出力信号を波形モニターで観測。S-LOGデータ記録可能である全露光領域をカバーするレンジで、入射光量に対するカメラ出力の測定を行い、データを収録しました。
撮影したグレースケールチャートをS-LOGからシネオンログへ変換し、FUJI RDI(インターミディエイト)/FUJI F-CP、ETERNA-CP XD、Kodak(5242)(インターミディエイト)/VISION(2383)および、VISIONプレミア(2393)の組み合わせでのARRI LASERコーディング−ポジプリントを行いS-LOG−フィルム間の有効なダイナミックレンジについて特性評価を行いました。11段グレーチャートでのテストの際、F23カメラの感度はISO 640(通常の感度設定)として撮影を行いましたが、フィルムレコーディング後のポジ特性においてはハイライト部の飛びが早いとの指摘を受け、100%から上8倍まで通す感度設定に変更してみました。今回の撮影ではS-LOG特性の広いダイナミックレンジを最大限に活かす事が撮影目的のひとつでしたので、補正係数を計算し、ISO感度800として撮影に臨みました。今回はフィルムの撮影と同様にキャメラマンがテスト撮影データを元に露出を決定するスタイルで、スポットメーターで露出設定を行いました。
このS-LOGの特性を把握するためのグラフが図1(S-LOG対数グラフISO感度800用)です。図1は横軸にはカメラストップ、縦軸(左)にはF23の出力信号の波形モニター値(%表示)、縦軸(右)には10ビットのコードバリューを表示し18%Gray露光量をカメラストップ0.0としてグラフ表示してあります。図1には従来のTVカメラに代表されるガンマ0.45のノーマルガンマカーブと広いダイナミックレンジをもつシネオンログガンマカーブ、S-LOGガンマカーブを表示しています。ガンマ0.45のノーマルガンマは基準としている18%から3 Stepオーバー(8倍の露光量)が記録できる上限、S-LOG(ISO感度800の場合)は約+5.5Stop(45.3倍相当)までが記録可能であると分かります。またシネオンとS-LOGの違いはグラフを見てのとおりです。シネオンのフラットなカーブと比べるとS-LOGもシネオンライクではありますが中間部は下がっており、TVカメラのガンマ0.45とシネオンをミックスしたような仕上がりと見て取れます。S-LOGの実画像を見ると明るい被写体部分も飛ばず、シネオンのファイルよりコントラスト感があり、S-LOG映像をLOG戻ししなくても映像意図によっては十分に作品に使えるのではないかとも思える位です。さらにグラフを詳しく見ていくとISO感度800で18% Gray (0.0Stop)を撮影した場合に波形モニターでは約30%強、90%White(2.3Stop)では約60%となることが分かります。
S-LOG説明図
2007年10月3日、日本映画撮影監督協会様主催のもとソニー本社ビルにて開催された説明会にて、「赤い灯」撮影素材・11段チャートテスト素材を使いながらS-LOGのダイナミックレンジについて、弊社のDIツールであるSCRATCHソフトウェアを使用したデモンストレーションとともに撮影時の体験報告をさせていただきました。今回の検証により、露出の決定方法についてはなんとか解が導き出せたものと思います。現在「紅い灯」は最終目標であるフィルム出力にむけての3D LUT(変換テーブル)製作を行っています。完成ポジが上がりましたら、再度、日本映画撮影監督協会様のご評価を頂く予定となっています。今後、この作品がデジタルカメラを用いた映画製作のご参考として何らかのお役に立つことがありましたら望外の喜びです。まだ完成途中ですが、この作品の撮影に深くかかわっていただいた撮影部、製作スタッフ、キャストの方々ならびにソニー関係者に感謝いたします。
日本映画撮影監督協会http://www.jsc.or.jp/index.html
機関紙「映画撮影」http://www.jsc.or.jp/jp/info/book.html
PAGE TOP