HDをSDI、4KをNMIで今まで以上の使い勝手と将来への布石を兼ね備えた新局舎の制作スタジオ
東北放送株式会社様は新局舎建設に伴い新たに設置された制作スタジオ・サブにおいて、IP技術を利用したソニーのネットワーク・メディア・インターフェース(NMI)による4K HDRに対応する制作システムを導入され、2020年6月から運用を開始されました。
技術局
制作技術部長
阿部 圭史様
技術局
制作技術部
古積 可菜様
今回新設したスタジオは、開局当時からある局舎の置き換えを担うべく、敷地内に新たに建設した新局舎に設けた制作向けのスタジオです。
今回は設備更新だけでなく、建物を作るところからの計画スタートでしたので、さまざまな面で意欲的な取り組みを行いました。将来を見据えた、4KやHDRに加えIPへの対応やサイマル制作、さまざまな特番制作に対応できる広いスタジオ・サブ空間、レイアウトを一新できたことにより実現した使い勝手の良い機器配置、スタッフ間のコミュニケーションを円滑にする色彩やレイアウトなどです。
カメラにはマルチフォーマットポータブルカメラHDC-5500を導入しています。将来にも布石を打ちたい一方で、地上波は当面HDです。HD SDR制作を4K HDRからのコンバージョンで制作する前提にすると、4Kが結果的に優先になってしまう場面が出てくるかもしれません。しかし、実際のメインは地上波のHDです。そこで、どちらも妥協せずに済む、4KとHDをサイマルで制作する(スイッチャーコントロールパネル1つから4K・HD別のプロセッサーを同時一括制御する)構成にしました。HDと4Kを混在させるよりも、スッキリとまとめられました。
スタジオセットの様子
スイッチャーコントロールパネル側のメイン卓
HDと4Kの分離は、SDIとIPの選択についてもクリアにしてくれました。日頃のHD制作では、慣れ親しんだSDIでオペレーションしたい部分が大きかった一方、4Kをクアッドリンク3G-SDIで扱うのも煩わしく、12G-SDIでは伝送距離が延ばせないことから、4KはIPにする方が適していました。そこで、HDは基本的にHD-SDI(1.5G)で統一、4KはIPで統一しました。IPについては、ソニーのNMIを採用しました。
現場スタッフにとっても、日頃の番組制作はいままで通り安心して行えつつ、HDRや将来主流になるであろうIPに慣れ親しめる環境を同時に確保することができました。スイッチャーについては、HD用にマルチフォーマットプロダクションスイッチャーXVS-7000、4K用にマルチフォーマットプロダクションスイッチャーXVS-6000を導入し、4K用の収録機としてマルチポートAVストレージユニットPWS-4500も導入しています。PWS-4500については、既存のスポーツ用のリプレイサーバーを置き換える用途にも活用の幅を広げていくことを考えています。
ラック内のCCU、IP関連機器とスイッチャー本体
4KやHDRへの対応については、現場のスタッフの意気込みから導入を目指してきたものです。IPは、「ここを抜いてここに差せばいいんでしょ?」といったものではないので、まだ馴染めなさも残っています。IPがSDIに対して良い悪いということではなく、初対面の人を相手に言葉を選ぶような感じです。しかし、これを乗り越えていかないと、SDIにはないメリットを持つIPとパートナーシップを築けません。
今後、例えば外部から供給を受けている映像が4K化してくるという流れも十分考えられます。また、コロナの広がり以降、中継の現場側から設営や撤収作業の時間帯を分散するなど、一度に現場に入るスタッフ数の制限を求められる事例が実際に出ています。費用面を含めた地域の回線環境はまだ十分ではないですが、そういった環境が整えば、リモートプロダクションが急速に日常化してくる可能性があります。4KやIP対応は、そうした10年、15年先までの変化を見据えた導入になります。
2020年6月から新サブの運用を開始し、4カ月ほどが経過しました。細かな部分はいろいろとありますが、安心して運用できています。わがままはいろいろと言いましたが、ソニーは現実的に実現可能な方法を提案してくれました。今後、身近な局さんから更新の相談を受けたりしても、間違いなくソニーを勧められると思います。
マルチフォーマットプロダクションスイッチャー
XVS-7000、XVS-6000
※本商品はお客様ごとに構成が異なるため、本サイト内に商品情報は掲載しておりません。
詳細については、営業担当までお問い合わせください。