早稲田大学 様
《大前氏》 早稲田大学は、2012年11月に大学が目指す将来像を描いた「WASEDA VISION150」を策定しました。新3号館は、この「WASEDA VISION150」の施策を実践する建物(場)として最初の一歩となるもので、グローバル人材を育成するための次世代教育空間と位置付けられています。今回、導入したICT教育支援システムは、その基盤となります。
《岩路氏》 例えば、全ての講義内容を収録し、コンテンツとして学外に公開することや、講義を聴くだけでなく、映像を活用して学生同士がアイデアを共有したり、ビデオ会議を使って海外の学生とディスカッションを行ったりといった「アクティブラーニング」の割合を増やすことを目指しています。それらを実現するための次世代教育空間のモデルとしてCTLT(Center for Teaching,Learning and Technology)Classroomを設けました。
《大前氏》 新3号館におけるICT教育支援システムの導入計画がスタートしたのは、2009年のこと。その際、理事が掲げた言葉が「他の大学より3歩先を行く教育環境を目指そう」でした。2011年から12年にかけて、理事や情報企画部のメンバーが海外の大学を視察。スタンフォード大学やカリフォルニア大学バークレー校、UCLAなど世界トップクラスの大学のほか、日本よりICT化が進んでいるシンガポールや韓国の大学なども回りました。
これらを参考にしながら、具体的なコンセプト作りを進めました。このときに重視したのが、アクティブラーニングを実現するため、グループ学習ができる場所を増やすことと、未来まで見据えた“学びの空間”をどうやって創っていくかという点です。そのため、教員や学生にヒアリングを実施し、いかに他の大学にない新しいものを取り入れ、早稲田らしさを出していくか議論しました。そして、単にAV機器や什器選定ということではなく、それらを総合した、先進的な学びの空間づくりを目指しました。2013年10月にコンペを実施し、その中からソニーを選んだのは、我々の描いていたコンセプトを最もよく理解してくれていると感じたことと、運用まで考慮した細やかな提案をしてくれたからです。
《ソニー 水野》 早稲田大学様とのお付き合いは、かれこれ20年近くになります。製品の導入やシステムの構築だけでなく、日常的なICTインフラの常駐サポートなど多面的な支援をしています。日々の常駐サポート業務から、ユーザーである先生方のご要望を逐一把握し、改善に取り組んできた経緯がありますので、運用まで踏まえた突っ込んだご提案ができたのではないかと思います。
《大前氏》 確かに、いただいた提案は私たちの考え方や気持ちを的確に汲んでくれたものでした。実際の運用を考慮しながらシミュレーションを繰り返し、利用者のストレスを減らした使い勝手のよいシステムについて、機能面とコスト面の両面から最適な提案を持ってきてくれました。特に講義収録システムは、私たちにとっても新しいチャレンジでしたので、課題が多くありました。たとえば、自動収録のスケジュール登録や、画角調整、クリアな音声確保、収録動画の迅速な配信用メディアへの変換などの技術的課題で試行錯誤しましたが、ソニーは何度も検討を繰り返し、親身になって提案してくれました。
《岩路氏》 その後、4か月かけて仕様を詰め、2014年3月から実際の導入作業をスタート。夏休み明けの授業開始に間に合わせるため、9月後半の運用開始がマストと、かなりタイトな日程になりました。当時は新3号館の建設工事も佳境に入っており、工事の進捗がソニー側のシステム導入にも影響を及ぼし、困難な状況に直面することも多々あったと思いますが、結果的にはどうにか間に合わせることができました。度重なる変更にも柔軟に対応してもらい、本当にありがたかったですね。
《大前氏》 新3号館には、最新の技術を駆使したレーザー光源プロジェクターと講義収録用のIPカメラ、複数の画面を同時に表示しながらスタイリッシュにプレゼンできる、ビジョンプレゼンターを導入しました。トータルな提案内容はもちろんですが、こうした個々の機材の性能の良さも、ソニーを選ぶ大きな決め手となりました。
《岩路氏》 レーザー光源プロジェクターの導入にあたっては、実機によるデモを見せていただきました。解像度が高く、何よりすぐに立ち上がる点が気に入りましたね。これまで使っていた液晶プロジェクターは、立ち上がりと映像が安定するまでかなりの時間がかかっていましたし、使用後の冷却にもまた時間が必要でした。このレーザー光源プロジェクターならすぐに授業を始められるので、時間のムダを省くことができます。
《ソニー 水野》 常駐サポート経由の情報から、「一秒たりとも授業を止めない」ご提案が必要だと考えました。実は、レーザー光源プロジェクターは当初のご要望とは異なる仕様の製品でしたが、これならご要望以上のソリューションが提供できると確信していました。このほか、レーザー光源の寿命が2万時間で実質メンテナンスフリーという特長もあり、運用上のメリットも期待できます。
講義収録ソリューションでもいろいろと工夫しています。早稲田大学様は、将来的にすべての講義の公開を予定されていますので、データ容量がかなり大きくなることが想定されます。それを見込んで、コンテンツを集約するコンテンツオーサリングルームには、最新の設備を用意し、できるだけ簡易なオペレーションで講義を自動的に収録できるようにしました。ここでは、収録の予約や各講義のコンテンツ収録・管理、モニタリングができるほか、配信に必要な編集・エンコードも可能となっています。
また、教室で講義を受けているかのような臨場感を実現するため、高画質、高音質を追求しました。講義収録カメラは、セキュリティ用のIPカメラを採用しています。ハイビジョンの高解像度で、スクリーンに投影されるパワーポイントの表示もはっきり撮影でき、CD並の高音質で収録が可能です。収録サーバーシステムは、ルクレ社のソフトウェア“アロバビュー”を採用し、映像と先生の声がずれることなく記録できます。また、大学様の運用にあわせた開発により、講義収録の自動化を実現しています。
《岩路氏》 ビジョンプレゼンターは大学では初の導入とのことですが、実機によるデモを確認したことで、さまざまな形で活用できそうというイメージが湧き、導入を決定しました。本格的な活用は始まったばかりですが、先生方と意見交換をする中で「ビジョンプレゼンターを使えばこんな授業ができるのでは?」といった新しいアイデアが出るようになりました。プレゼンテーションに対して学生がスマートフォンで入力した感想をリアルタイムでプロジェクターに表示して共有したり、プレゼンテーションを録画し、学生が自己分析できるようにしたりするなどの可能性が出てきています。これからも、実験教室として先生がやってみたい授業を実現できるよういろいろと試行錯誤し、進化させていきたいと思います。
《岩路氏》 システムの導入からそれほど時間は経っていませんが、先生からはフレキシブルに使えて使い勝手が良い、スクリーンも大きくて明るく見やすいという声が挙がっています。また、CTLT Classroomを利用して、インタラクティブな授業ができるようになった、もっと活用したい、こういう教室をもっと増やすべきだ、という声もいただいています。こうした新3号館での取り組みを、全学へと広めていきたいと思います。
《大前氏》 理想は、マニュアルがなくても使い方が理解できるようなシステムです。新しいシステムが運用の中でさらに使い勝手が良いものになっていけばと期待しています。早稲田大学には伝統を重んじながらも、先駆的なことに果敢にチャレンジするという校風があります。そういった早稲田らしい学びが実現できる学習環境を追求したいと考えています。
《ソニー 水野》 技術力とバックスタッフの力を結集して、早稲田大学様らしい学習環境を共に実現していきたいと思います。