音源分離により二次利用の課題を解決
アーカイブコンテンツの再販に向けて

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ご担当者の紹介

株式会社TBSテレビ

コンテンツ制作局
バラエティ制作一部長代理
樋江井彰敏様

導入の背景

TBS系列局で放送されていた「どうぶつ奇想天外!」(1993年〜2009年)は、現在では環境の変化により再訪が難しい場所での撮影、海外の貴重な映像などが含まれているため、コンテンツとして希少性が出てきております。

A2 Productionの必要性を感じたきっかけは、「どうぶつ奇想天外!」のU-NEXTでの配信にあります。配信を実現するにあたって一つの問題点が出てきました。音楽著作権の問題です。過去の番組は、放送に関する音楽著作権の処理はされていますが、当時は配信の概念が無い時代だったため、配信にあたっての許諾が別途必要となります。1本につき200か所ほど権利の確認が必要となりますが、いまでは著作権者と連絡が取れない、配信の許諾が得られないなどがあり、すべての許諾を得るには限界があります。

また過去の放送番組の多くは音源トラックを分けて保管しておらず、BGM、SE、環境音、ナレーションがMIXされた状態の中、ナレーションを残して音楽のみ削除したいといった要望に対して、一つのみを消すことができないため、音楽の許諾が得られない場合はナレーションを撮り直して再編集するしかありませんでした。

そこで、ソニーから紹介されていたA2 ProductionのAI解析機能の追加、音源分離エンジンの紹介を思い出し、利用してみることにしました。

使用感

A2 Productionは、自分のPCでログインするだけという手軽さのうえ、非常にシンプルな設計のため、誰にでも扱えるものでした。「どうぶつ奇想天外!」スタッフのみで、音源分離から納品まで実行できました。たまに精度に伸びしろを感じるケースがありますが、現在のバージョンでもナレーションを再収録するコストと時間の削減に貢献しています。音源分離した後は、編集ソフト上で音楽トラックを外して再ミックスしています。簡易な編集工程になるため、ミキサーなど専門家の手を借りずに、音源の修正を進められたのは助かりました。

現在、「どうぶつ奇想天外!」のYouTube公式チャンネルを立ち上げ、毎週数本ずつ公開しています。前身の番組「わくわく動物ランド」(1983年〜92年)などのVTRも再編集して公開しているのですが、このYouTube用にもA2 Productionが役立っています。

どうぶつ奇想天外・WakuWaku【TBS公式】別ウィンドウで開きます

YouTube用のコンテンツは、毎月1000本近い番組から15本程度を編成し、短期間で一気に制作しています。そのため、一度に実行したい数に大きな波があります。クラウドサービスでは、機材の確保はサービス側に任せられるため、台数など管理面を気にしなくて良いのも利点ですね。
※AWSのAuto Scaling機能を組み込んでいるため、ピーク時にも安定した並列処理が可能な設計となっております。

今後の展望

U-NEXTがきっかけでA2 Productionを利用しましたが、海外向けのコンテンツ用に、吹き替え版の制作も視野に入れています。ナレーションと背景音がMIX状態のものだと字幕版を作るしかありませんでしたが、音源分離をすることで吹き替え版の制作が可能となり、もっとコンテンツを広げられる可能性があります。また、さらに音源分離の精度が向上すれば、動物の鳴き声や環境音などのガヤを生かし、映像素材として新しいコンテンツに活用することもできるため、今後のバージョンアップにも期待しています。

アーカイブコンテンツは、価値のある生きたものに変えることができます。保存したままでお蔵入りは、もったいない。現在では撮影できない場所など、貴重な映像が数多くあります。アーカイブの二次利用は今後も発展する分野だと考えています。音源分離のようなAIも活用しながら、新しい領域へのチャレンジを続けていきたいと思います。

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