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3C's

Creative
Craftsmanship
Challenging
19

Takanari Kawasumi

Drone Operator
映像の新時代を切り拓く。
ドローンを操る新たな才能

川角 崇成

1997年生まれ、愛知県出身。東京工芸大学 芸術学部 映像学科卒業。大学在学時より映画・CMをはじめとしたあらゆる撮影現場を経験。卒業後は、ドローンを使用した撮影・演出のサポート業務を行う株式会社Clockwiseに所属し、ドローンオペレーターとして活躍中。現在では、大塚製薬「ポカリスエット」のテレビCMをはじめ、米津玄師「カナリヤ」のMVなど、ジャンルを問わず数々の作品に携わっている。

職業としてまだ新しいドローンオペレーターの最前線を走り続ける川角氏。その活躍ぶりは、映画・CM・MVと多岐にわたり、とどまるところを知りません。今回は、あらゆる現場で監督やカメラマンから支持される川角氏の魅力に迫っていきます。ドローンが世に出て間もないころから独学でドローンを操縦してきたという川角氏ならではのこだわりをはじめ、映像制作における3C(Creative Craftsmanship Challenging)を聞きました。

chapter 01
きっかけは、高校生のときに知ったタブレット型PCで操縦できるドローン

幼いころから機械好きで、玩具店ではラジコンにばかり目が行く子供でしたね。物心がついてくると、映画も沢山観るようになりました。高校生のとき、インターネットでたまたま見つけたドローンに興味を抱いたのも自然な流れでした。そのドローンは、「タブレット型PCで操縦できて、撮影もできる!」というキャッチコピーがあって。機械も映像も好きだったので、純粋に「さわってみたい」と興味を持ち、お金を貯めて購入したんです。

購入後は、毎日のように飛ばして、動かして、落として…を繰り返し、みるみるうちにドローンの操縦にのめり込んでいきました。今はドローンスクールができて一から学べる場所がありますが、僕が高校生のころは、ドローンが世に出たばかりで情報収集にも苦戦した思い出があります。

当時は、facebookでドローンのコミュニティーを見つけ、そこで実際に使った感想やうまく飛ばすコツなど、地道に情報を集め、それを実践するというのを繰り返していました。ちなみに、そのコミュニティーにいたのは、大半がラジコン好きな年配の方で、高校生は僕だけ。同年代でドローンを操縦している仲間にもなかなか出会うことができませんでしたね(笑)。

それから月日は流れ、東京工芸大学の映像学科へ進学し、映像を学びます。このときはまだ「映像で食べていくぞ」とは決めていませんでした。ただ、興味のある映像の分野を学びたいという気持ちでした。大学入学後も引き続きドローンを操縦しながら映像を学び、先輩に呼ばれて少しずつ現場へ行くようになりました。このときはドローンオペレーターとしてだけでなく、撮影助手もやっており、とにかくいろんな現場に出入りしていましたし、並行して、友人と自主制作で映画も撮っていました。大学卒業後は、株式会社Clockwiseに所属し、本格的に仕事をスタートしていきます。

chapter 02
映画からCM、MVまで。あらゆる現場を経験

大学在学時から現場に出ていたので、社会人になった後も地続きで仕事をしているという感覚です。これまで映画やCM・MVなどジャンルに縛られずにいろんな現場を経験させてもらいましたが、なかでも印象に残っている作品が二つあります。

一つ目は、寝具ブランド「サータ」のTVCM。走っているアスリートを上空から俯瞰で撮影するというシチュエーションだったのですが、選手が走る速度にドローンを合わせるのが至難の技だったのです。さらに選手のフレームインからアウトまでが一瞬なので、何度もドローンのスタート位置を調整して、工夫しながら撮影しました。思い出深い作品ですね。

二つ目は米津玄師さんのカナリヤのMVです。本作の監督を務めたのは、僕が学生のころから大好きな映画監督の一人でもある是枝裕和さん。憧れの監督とご一緒できるということで、一層気が引き締まりました。このMVでは、子供たちが走っていくシーンを俯瞰で撮影したのですが、子供たちとコミュニケーションを取りながら、納得のいく画が撮れるまで何度も撮影しました。選択肢が多くなるよう沢山のカットを撮ったのですが、僕自身「これが一番いいな」と思っていたものが使われていたのも嬉しかったですね。

米津玄師 MV「カナリヤ」

chapter 03
ドローンだけでなく、映像の知識も日々アップデートしていく

さきほど挙げた二作品は思い入れが強く、こだわったポイントも沢山あるのですが、作品づくりで一番大切にしているのは「監督やカメラマンとのコミュニケーションを密にする」ということ。特に、ドローンオペレーターは毎回現場にいるわけではないので、短時間で現場になじめるよう努力しています。僕の専門分野はドローンですが、納品するのはあくまで映像。だから、映像の知識も日々インプットするよう心掛けています。そうした知識を織り交ぜながらコミュニケーションを取ることで、現場からも信頼してもらえやすいのかなと感じますね。

また、ドローンは天候の影響を最も受けやすいので、天気予報はこまめにチェックしますね。どの時間帯なら撮りたい構図が撮れるかを監督やカメラマン、照明技師などと話し合って決めていきます。基本的には、本番前に必ずロケハンをします。と言うのも、山間部は山から下りてくる風があったりオフィス街だとビル風があったりと、その場所ならではのシチュエーションがあります。事前に現場を知ることで、本番当日に焦らないよう、準備することも欠かせません。

さらに、ドローンには法律がつきもので、150mより上には飛ばすことができません。もしそれ以上飛ばしたい場合は、事前に申請を出す必要があり、そうすると500mまでは上昇することが可能です。これに関しても、事前に現場での目線合わせをした上でジャッジをし、必要ならば余裕を持って申請するようにしています。

chapter 04
ソニーが開発しているドローン「Airpeak」に期待

ソニー製品と言うと、ドローンオペレーターの僕らが今最も注目しているのはやはり「Airpeak」ですね。僕が現在使っているドローンは、機体がコンパクトでカメラの性能も良く満足しています。しかし、「映像といえばソニー、ソニーといえば映像」と表現しても過言ではないほど、ソニーの映像の美しさは他を圧倒します。

6月に発表されたソニーの高性能ドローンを、いち早く触ってみたいですね。また、操縦安定性や電波到達距離、飛行時間やアプリケーションUIの操作感など、魅力的な機能がありそうなので、ぜひ使ってみたいです。将来的には、VENICEのスペックで、ドローンにジンバルをつけて一体型で搭載されれば、最強だなと思いますね(笑)。

実は大学生のころFS7を使って自主制作の映画を撮っていたこともありますし、それ以前に高校生のときにもソニーのハンディカムを使用していたので、馴染みがあるんです。お金もなかった学生のころ、雑誌やネットで目にした「かっこいい」と思う機材のほとんどはソニーのものでした。いつか大人になったら自分も使ってみたいなと憧れを抱く存在だったのです。

chapter 05
肩を並べる同い年世代がもっと増えていくように

これからについてですが、まずは今以上にクオリティーの高い作品を作っていきたいと思っています。せっかく撮影するので、いろんな人に見てもらいたい。今は視聴環境がスマホなどに大きく移行していますが、いい映像であれば視聴環境を問わずあらゆる方々に見ていただけると思うので。

今は、手のひらサイズのマイクロドローンが流行っています。最近、狭小のあらゆる場所を駆け巡るという広告を目にしたのですが、純粋に「すごい!」と思いましたね。ドローンもカメラも日々新しくなるので、都度情報をアップデートできるようにしていきたいです。

映像の現場でドローンが使われることが多くなりましたが、それでも若い世代はまだまだ少ないと感じています。レースなどの競技でドローンに触れている方は多い印象ですが、現場へ行くとまだまだ自分より一回り上の先輩方が大半。ですので、自分と同年代の若い世代がもっと増えて、肩を並べて切磋琢磨できるといいですね。そのために、まずは目の前の仕事に全力で取り組み、もっとかっこいい映像を撮り続けることで、この仕事を知ってもらえると嬉しいなと思っています。

あとがき

まだまだ一般的でないドローンオペレーターの仕事。高校生ではじめてドローンを手にした川角氏は、情報がない中で試行錯誤を繰り返してきました。そんな姿勢に勇気づけられるとともに、まだまだ開拓の余地があるからこそ、ドローンの存在がこれからの映像の質を大きく左右するのではないかと感じる取材でした。「ドローンのみならず、映像の知識もインプットしていく」と語っていた川角氏。学ぶ姿勢を忘れないことが、CMや映画などジャンルを問わずあらゆる現場から求められる理由なのだと感じました。これからの活躍に期待したいです。

Text : Yukitaka Sanada
Photo : Yuji Yamazaki

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