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3C's

Creative
Craftsmanship
Challenging
07

Hideaki Tsubaki

Videographer
現場の直感から生まれる
「映像のダイナミズム」

椿 英明

福島県会津若松市出身。映像制作会社GRID代表。領域を限定せず、多種多様な映像制作を手がけ、幅広く活動している。2018年には福島県と県内民放4局が制作した訪日外国人向け映像「Diamond Route Japan」に参加。動画は累計視聴回数6800万回(2020年5月時点)を超えている。

自身の地元である福島県・会津若松を拠点に、ドローンを駆使した訪日外国人向けの映像やCM・テレビ番組制作、YouTuberの番組制作、エクストリームスポーツの撮影など、多彩なジャンルでその才能を発揮する椿氏。東京などの都市部に軸足を移すことなく、あえて地方からクリエイティブを発信し続け、各方面から高い評価を受ける椿氏の3C(Creative Craftsmanship Challenging)を聞きました。

chapter 01
9歳からカメラを回していた

僕は専門学校などで映像を学んだ経験がなく、映像制作はかなり自由です。同様に扱うジャンルも自由で、ウエディングからCMやテレビ番組、PRムービー、学校の行事まで、依頼が来ればなんでも撮っています。だから、自分のことを「全方位型カメラマン」だと思っていますね。

映像制作のキッカケは9歳の頃に遡ります。当時、テレビのバラエティ番組で面白映像を応募できる視聴者参加型のコーナーがあったんです。採用されると賞品がもらえるので、それを欲しさに自宅にあったカメラを使って兄弟喧嘩などを撮っていました(笑)。それから映像制作がライフワークとなり、中学・高校時代はスノボーやスケボーを撮るようになっていました。

高校卒業時には「映像制作の仕事で生きていこう」と決心していたので、すぐに地元のウエディング専門の撮影会社に就職。15年ほど働いて、色々なジャンルの撮影に挑戦するため独立し、自分の会社であるGRIDを立ち上げました。

chapter 02
何気ない光景を、
丁寧に切り取る

ターニングポイントを挙げるとするなら、「Diamond Route Japan」ですね。訪日外国人向けに福島・栃木・茨城3県の観光コンテンツを映像化するという、このプロジェクトに参加してから、仕事の幅が広がりました。当時のプロデューサーから、「地元のクリエイターが入らないと、福島の本当の復興につながらない」と声をかけていただき、東京のクリエイティブチームと一緒に制作したのですが、撮影チームのリーダーとして今までの経験をフルに生かしながら、全身全霊で打ち込んだ仕事です。

撮影で注意したのは、何気なく僕たちが目にしている山々の景色やお祭りの様子などを丁寧に切り取っていくこと。海外の人には、そうした日本の日常的な光景が新鮮だったりするんです。他にも、ドローンを斜めに飛ばしながらカメラを操作して、指10本を駆使しながら撮影を行い、迫力のある映像作りに苦心しました。

■Diamond Route Japan

chapter 03
ハングリーさがあるから、
地方で生き残れる

GRIDという会社は私と弟を合わせた4人で活動しています。特に、「Diamond Route Japan」でも多用したドローン撮影には力を入れています。都市部だとドローンを飛ばせる場所が少ないと思いますが、福島だと練習できる場所はたくさんあり、ドローンの墜落を覚悟しながら(笑)、飛ばし方や撮影方法を来る日も来る日も練習・研究していました。そうした努力の積み重ねが実り、ドローンを駆使したダイナミックな画を撮れるようになったのです。

また、撮りたい画を実現するために照明などの機材を自分たちで作ることもありますし、テレビ番組を作ったことがないのに、オファーがきたら迷わず受けたりもしてきましたね(笑)。経験を情熱でカバーしながら、様々なプロジェクトで成果をあげてきました。おかげさまで「Diamond Route Japan」は累計視聴回数6800万回を超えており、大きな手応えを感じています。情熱はもちろん、ハングリーさがあるからこそ、会津若松という地方でも生き残ってこられたのだと思っています。

chapter 04
現場での直感を信じる

絵コンテを作ったり、ロケハンしたりと、プリプロ段階での準備はいろいろとあります。でも、僕たちの場合は、「プリプロで必ずこれをやる」という決まりはありません。例えば、訪日外国人向けに東武沿線の魅力を紹介する動画「TOBU SL Railway in Nikko,Kinugawa」では、絵コンテも作らず、ロケハンもせずに撮影しました。

現場に行ってスタッフと話し合いながら、「どうすればカッコ良くなるか」を考えて撮っただけなんです。現場の直感を信じて撮影することが「映像のダイナミックさ」に繋がっていると思っていて、狙ってこうした撮影方法を採っています。プリプロ段階で考えをめぐらせるよりも、仕事がきたらとりあえず撮ってみる。それが僕たちGRIDの撮影スタイルですね。

■TOBU SL Railway in Nikko,Kinugawa

chapter 05
FX9にいい意味で裏切られた

機材へのこだわりですが、その一つがレンズです。実は福島にはSIGMAの工場があって、知り合いもたくさん働いています。地元で作られたSIGMAのレンズは、明るさとボケ味の美しさがあり、シャープにパキっと写る。撮影には欠かせないアイテムですね。

また、FX9は発売直後に購入しました。フルフレームのシネマカメラがこの価格帯で出るとは思ってもいませんでした。雨にも強いですし、ISOを高感度で使っても暗部が残っていて、黒つぶれしないので助かっています。

さらに、FX9はオートフォーカスも優秀です。1時間くらいのインタビューだと、話者が手を動かしたり体を前後させたりしてしまいますが、FX9にG MASTERレンズを組み合わせて撮ると、手や体を動かしても被写体の顔をしっかり認識してくれるんです。「オートフォーカスはいまいち信用できない」という考えを、FX9がいい意味で裏切ってくれました。

chapter 06
子どもたちに
クリエイティブの種をまく

地元でクリエイティブな仕事をできる環境を作るために、今でも生まれ育った会津若松を拠点に活動しています。地元にこだわっているのは、地方でもクリエイティブな仕事ができることを子どもたちに知ってもらうことが目的です。そのために時間があれば近隣の学校で、最新の機材で撮影するような講習会を開催しています。

高校生相手だと最初は興味なさそうにしているんです。それが、僕たちが作った映像作品を見せたり、人気YouTuberである音楽ユニット・スカイピースを撮っていることを話すと興味を持ってくれるんです。最後には、「地元でクリエイティブをやろう」と伝えています。

■スカイピース テオくんの誕生日ラップのライブバージョンwwwwwwww

(FS7を使用して撮影)

冒頭にもお話ししたように「全方位型カメラマン」として、これからも活動を続けていきます。そして、地元の福島県・会津若松にGRIDという会社があることで、地方でもクリエイティブができるモデルケースになっていけたらと考えています。

あとがき

あえてプリプロ段階で事前に撮る画を決めず、現場で自身の感性を信じてカメラを回す椿氏。撮影の「常識」に縛られないからこそ、心を打つ迫力あるシーンを切り取ることができるのだと感じました。また、地元に根ざした椿氏の活躍によって、「クリエイティブなら東京」という固定概念も変わっていくことでしょう。

Text : Yukitaka Sanada
Photo : Mika Inomata

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