いないはずの役者がそこにいる\

Chamber 36
2019.7.13

いないはずの役者がそこにいる
国内唯一のホログラフィック劇場の秘密に迫る

人やモノが立体的に浮かび上がる「ホログラフィック」の技術。2015年9月にオープンした「DMM VR THEATER」は、ホログラフィックの技術を使った最新鋭の映像表現を楽しめる、世界初の常設劇場です。

バーチャルな世界のキャラクターや、もう見ることができないはずの人物などが、まるで実在しているかのように目の前に投影される……。ヘッドマウントディスプレイや3Dメガネなしで、新感覚の映像体験ができるこの劇場を、DMM VR THEATERゼネラルマネージャーの江崎喜考さんに案内していただきました。

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映像体験を「実像体験」に高めるホログラフィックの世界

DMM VR THEATERがあるのは、各線横浜駅から徒歩5分の場所。繁華街を抜けると、ポップな色のヘキサゴンが壁面を彩る建物が見えてきます。劇場の座席数は、352席。席と席の間隔が広く取られ、公演中に立ち上がったり腕を振ったりできる、ゆったりした造りとなっています。「まずは、最先端のホログラフィックを体験してみてください」と江崎さんに促され、デモンストレーション映像を見せていただくことになりました。

客席の照明が落ちると、ステージ上に一人の男性が出現。頭ではホログラフィックと理解しているものの、本当にそこに存在しているような、不思議な感覚を覚えます。このように、ステージ上に立体的な像を映し出すしくみは、200年以上前から舞台演劇で用いられている「ペッパーズゴースト」という錯視トリックを応用したもの。ステージ前面の床に超高精彩のLEDビジョンを敷き、そこに映し出された映像を透明な幕に反射させることで、ステージ上に立体的な像が浮かび上がるそうです。

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「リアル」にとことんこだわり没入感を促す

公演時は、ステージ上に映し出されるホログラフィックと、ステージ奥のスクリーンにプロジェクターで映し出される映像という、前後二層の映像レイヤーで舞台を構築します。さらに、ステージサイドのスクリーンにも映像を投影することで、より効果的な演出が可能になります。

劇場の壁には、9.1chマルチサラウンドシステムが設置されており、音を立体的に響かせることができる環境も、舞台演出にひと役買っています。今回のデモンストレーションでは、ステージ上に映し出された鳥が客席に向かって羽ばたき、劇場内を飛び回り、出口へ抜けていく様子を体感することができました。

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江崎さんによれば、ホログラフィックをリアルに見せるためのカギは、「照明」と「影」の二つ。生身の人物に照明が当たると、光を反射して、その人物の周りが赤や青など照明と同じ色に染まります。しかし、ホログラフィックで作った人物に照明を当てても、光を反射することはありません。そのため、当施設の公演では、ステージ上に本当に「人がいる」と思わせるために、あらかじめ照明演出を考えたうえで、映像の中に照明の色を取り込むそうです。影の演出も同じで、ステージ上の人やモノに光が当たったとき、どのように影が落ちるか計算したうえで、映像の中にあらかじめ影を描き込みます。リアルにこだわったさまざまな映像表現の工夫が随所に施されているのです。

「DMM VR THEATERのメインテーマは、“そこにいる感覚”を味わってもらうことです。私たちが、普段何気なく見ている照明の反射や影の落ち方をリアルに再現し、脳をだますことで、あたかもそこに人がいるかのように錯覚させるのです」と、江崎さんは言います。

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デモンストレーション映像を見せていただいた後は、ステージ裏に回り込み、実際にステージの上に立たせていただきました。当施設では、ホログラフィックで映し出された人物やキャラクターと、生身のアイドルやアーティストが同じステージで共演するライブ公演も開催しています。

しかし、ステージと客席はマジックミラーのような関係になっており、実はステージに立っている人は、ホログラフィックがどのように映し出されているか確認することができません。足下のLEDビジョンを見ながら、ホログラフィックで映し出された人物と手をつないでみようとしましたが、なかなかうまくいきませんでした。

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お客様同士で感動を分かち合う共感体験

国内にある常設のホログラフィック劇場は、現在DMM VR THEATERのみですが、他国にはこのような劇場が存在するのでしょうか?江崎さんに、世界のホログラフィック事情について聞いてみると「韓国では、K-POPミュージシャンによるホログラフィックのライブ公演が一般的になりつつありますが、ペッパーズゴースト方式での専用劇場はないと思います」という答えが返ってきました。またラスベガスでは、マイケル・ジャクソンをホログラフィックで復活させる演出が行われたこともあるそうですが、ホログラフィックの常設劇場が設立されたといった話はまだ耳にしたことがないそうです。

「テーマパークなどで、アトラクションとしてホログラフィックを活用する例はよく聞きます。しかしこの劇場は、あくまでも“ライブハウス”という位置づけ。好きな人物やキャラクターに出会い、集まったお客様同士で感動を分かち合っていただくという共感性・体感性が、当劇場の一番の特徴です」と江崎さんは言います。

最近では、女性向けのキャラクターライブを開催することが増えてきたそう。自分の好きなキャラクターが目の前に現れることで、感動して嬉し涙を流すお客様もいるといいます。「そのくらい、ホログラフィックをリアルに感じていただいているということ。非常にうれしい反応ですね」と江崎さん。公演後は、SNSで「◯◯が実際に目の前にいた」といった感想をつぶやく方も多いようです。

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また、キャラクターがリアルタイムに反応を返してくれるインタラクティブな公演も人気が高いといいます。「キャラクターとお客様とのやりとりに、双方向性という新たな道が開けることによって、2次元と3次元をつなぐエンターテインメントを提供できると考えています」と江崎さんは話します。お客様に「バーチャルのキャラクターと話せた」「皆で一体となってライブを楽しんだ」という驚きや感動を与えられることが、3DCGライブの最適な在り方だと、江崎さんは考えています。

当施設は現在、ライブ公演以外にもさまざまな形で活用されています。例えば、家電メーカーのプレゼンテーションや、自動車メーカーの展示会、アパレルメーカーのファッションショーなど。惑星や歴史上の人物などをホログラフィックで再現し、目で見て学習できるコンテンツを提供することも可能です。今後、5Gなどの通信技術が発展すれば、より大容量のデータを扱うホログラフィックの分野でも、スポーツの試合やアーティストのライブをリアルタイムに再現できるようになっていくのではないでしょうか。そして、当施設のような劇場が増えていくことで、より臨場感のあるライブコンテンツを離れた地でも手軽に味わうことが可能になっていくのでしょう。

「お客様に劇場を使用していただく度に、『こういう使い方があるんだ』という新たな発見があります。まだまだ、劇場のポテンシャルを引き出し切れていないと感じますね。仮想空間創造の世界は可能性だらけです」と江崎さんは最後に笑顔で話してくれました。

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ホログラフィックによる仮想空間や、ライブ体験をプラットフォーム化し、仮想空間を創造することの価値と認識を高めるエンターテインメント施設として展開していくことが、DMM VR THEATERのビジョン。バーチャルな世界のキャラクターや過去の人物に出会える体験が、私たちにとって身近なものになる日も、そう遠くないかもしれません。

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DMM VR THEATER

※2020年4月閉館

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