法人のお客様 AI解析ソリューション Case Study 株式会社TBSテレビ様

Case Study

95%超の認識率
ソニーの音声解析AIでリアルタイム字幕制作の最少人員化を達成

株式会社TBSテレビ様

株式会社TBSテレビ様は、ソニーの音声解析AIを活用し、字幕を自動生成、修正する音声認識リアルタイム字幕システム「もじぱ」をソニーとの共同開発を経て導入し、2020年11月2日から地上波報道番組での運用を開始されました。

  • メディアテクノロジー局
    送出部
    松本 隆矢様

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積極的な姿勢だったソニーとの開発を選択

当社では2017年から記者や会議の文字起こしツールとして、音声認識を利用した「もじこ」というシステムを開発し、導入をしていました。その導入の成功を受けて、番組のリアルタイム字幕においても音声認識技術を活用しようという声が上がりました。しかし、リアルタイム字幕においては、そのシステムをそのまま転用することは難しかったので、2019年から新規に開発を開始することにしました。

音声認識エンジンの部分については、各社にお声がけをさせていただいたのですが、その中でも最も積極的な姿勢を打ち出してくれたのがソニーでした。そこでソニーとの共同開発をスタートさせました。

速記者の新規人材獲得が困難に

リアルタイム字幕は報道番組のほか情報番組などにも付与していますが、従来は1時間未満の番組の場合、速記者3名+サポート1名を1チームとしたリレーによる手打ち入力(リレー入力)で臨んでいました。リレー入力では、音声に対して最短で5秒遅延程度で正確な字幕が付与でき、クオリティの面では最善です。しかし、リレー入力を行える速記者人口自体が少なく、テレビ業界全体での字幕付与率のアップもあり、新たな人材獲得が困難になっていました。また、コスト面からも字幕が付与できていない番組もあり、さらなる付与率アップのためには、番組あたりの人的配置を節約することで、他の番組の字幕に充てられる速記者を捻出する必要がありました。

「もじぱ」は、ソニーの音声解析AIを活用することにより字幕を自動生成し、誤認識部分を手修正するだけで字幕送出できるシステムです。アプリケーションについては、TBSグループ内で開発を行いました。オペレーションにはタッチパネルを活用し、スワイプ操作などで扱えるようにすることで、スマホが使える人であれば、特別高度なスキルを必要とすることなく、直感的かつスピーディーにリアルタイム字幕の付与作業が行えます。これにより、オペレーターに求められる職人技的なスキルを引き下げられると同時に、人数の面でも1時間未満の番組なら、オペレーター1名+サポート1名での運用が可能です。

BGMにも影響されない95%超の認識率

原稿の事前登録を用いたソニーの音声解析AIは、想像以上の音声認識率でした。実際の報道番組での認識率としては95%以上です。数枚の字幕表示に対して1単語の修正があるかどうかというレベルです。特に、報道番組特有の時事キーワードや人名などの文字や読みを予め登録させていることで、際立った認識率の高さを実現しています。しかも、BGMなど他の音源が被っている音声でも問題なく認識できるのがアドバンテージです。

時事キーワードや人名などの文字や読みの登録については、現在のワークフローでは、番組OA直前に当日の原稿から拾い出して登録しています。

“もじぱ” 実現で人員最小限を実現

字幕付与までの時間については、リレー入力の方が平均して数秒早い傾向があります。平均数秒の差を許容することで、1番組あたりの高度なスキルを持つ速記者を節約できることは、十分にプラスであると考えています。

認識率の面において、特に固有名詞などは日本語特有の難しさもありますし、これ以上の飛躍的な認識率向上への期待はありません。番組内でも、字幕を付与する部分しない部分などもあったりしますし、取捨選択が必要になります。仮に認識率100%を出せるとしても人をゼロにできるわけではありません。「もじぱ」による、オペレーター1名+サポート1名という人数は、すでに最小限の人員を実現したと考えています。

今後は“もじぱ”の社外提供も

実際の運用は11月2日の地上波のお昼のニュースから開始しています。9月中旬の運用訓練開始から、システムのトラブルもなく安定して稼働しています。現状は、番組を選びながら「もじぱ」を活用しています。今後、オペレーターの育成を図りながら、徐々に「もじぱ」で字幕を付与する番組を増やしていきます。情報番組など、クロストークが多い番組では引き続き、速記者によるリレー入力方式も併用していく予定です。

今後、このシステムを積極的に外部展開していくことも考えています。システムのコンパクト化やコストダウンを図った上で、系列局の枠にとらわれず、システムを広く提供していければと考えています。

今回のこういったソニーとの共同開発というのは、当社としても初めての試みのように思います。プロジェクトのスタート時は「ソニーは大きい会社なので、あまり融通が利かないのではないか…?」と心配したりもしたのですが、全くそのようなことはなく、重めの方向転換を伴う修正などにも小回りしながら対応をしてくれました。今後も新たな取り組みの際には積極的にソニーと一緒にやってみたいと思っています。