スイッチャー

朝日放送株式会社 様

放送局

2014年2月掲載

多彩な演出・構成、画づくりに対応できるポテンシャルの高いスタジオサブシステムを構築。


2013年4月より本格運用が開始された新スタジオサブ。

朝日放送株式会社様では、情報番組やスポーツ番組で運用されているCスタジオサブを更新され、2013年4月より、関西地区の視聴者に大変好評な朝の帯番組「おはよう朝日です」などに本格運用されています。
同社技術局放送運用センター放送実施課長玉木雅之様、技術局制作技術センター制作技術係主任宇佐美貴士様、同センター制作技術係主任小西剛生様に、Cスタジオサブ更新のコンセプトや主な特長、本格運用の成果を伺いました。
なお、記事は2013年9月下旬に取材した内容を、編集部でまとめたものです。


多様かつ大量の素材、多彩な演出効果に応えるシステム

Cスタジオサブは、朝の帯番組「おはよう朝日です」を中心に運用しています。そこで、更新コンセプトの策定に際しては、制作サイドの要望や意見を聴取する作業からスタートしました。その結果、まず最近の情報番組に欠かせない、取材素材・回線収録素材・お天気情報カメラなど、多様かつ大量の素材を番組に有効活用できること。合わせて、これらの豊富な素材を多画面構成やCGなどを駆使して、多彩な演出効果でオンエアできるポテンシャルの高いシステムの要望でした。

そして、もう一つがスタッフ、オペレーターが本来の業務に集中できる制作環境の構築で、これらが更新コンセプトの重要な柱となっています。

一方、技術サイドでは、より安定した信頼性の高さを追求することとしました。たとえば、自然災害など万一の際の対策です。放送局なのでBCP対策は万全ではあるのですが、サブはバックアップ電源の稼働まで、短時間とはいえ電源停止で放送できない事態が生じます。こうした瞬断・瞬停が発生しないように、システムにUPSを組み込むとともに、本線系とは別に予備系を設けて、最悪の場合でも視聴者に情報を提供できる体制を整えることにしました。

システムのコアとなるスイッチャーにMVS-7000Xを採用


Cスタジオサブは、朝の帯番組「おはよう朝日です」など情報番組を主体に運用しており、昨今の質・量ともに増える素材の柔軟な取り扱いや、多彩な演出効果、CG表現などに対応できるポテンシャルの高いサブシステムを構築。


スイッチャーにMVS-7000Xを採用。5M/E列の本線系(写真・左)と、2M/E列の予備系(写真・右)。

まず、制作サイドの要望であるポテンシャルが高く、機能性に優れたシステム構築のために、コアとなるスイッチャーにマルチフォーマットプロダクションスイッチャーMVS-7000Xを採用しました。本線系として5M/E列、予備系として2M/E列を導入し、M/E列拡張機能MP2も搭載しました。

予備系は、バックアップ運用だけでなく、本線系と連携した運用も可能なので、どんな大型番組にも対応できます。

また、MVS-7000Xは大容量のフレームメモリーに加え、8つのDSK、2.5Dリサイザーを内蔵しており、DMEを使わずに多彩な映像演出が行えます。しかも、マクロ機能で生番組でも柔軟な操作、運用が可能である点が採用の決め手になりました。 スイッチャーに関しては、以前のCスタジオサブや大型中継車でもMVS-7000Xと同じソニー製のMVS-8000シリーズを運用しており、操作性やオペレーションを継承できる点もオペレーターの負担軽減につながると判断しました。

さらに、機能性と映像表現の幅を広げる目的で、CGプロセッサーとして、マルチイメージプロセッサーMPE-200を採用しました。番組用に作成したCG効果をリアルタイムにレンダリングしながら使用できる点や、スイッチャーに入力されている素材の内、最大4系統の素材を取り込める点も評価しました。

制作サイドのもう一つの要望点である快適な制作環境については、オペレーターの要望を取り入れて、電源やモニターの位置を決めたコンソール卓などで具現化しました。サブ内のすべての卓を同様の発想でソニーで設計・施工してもらうことで、多人数で運用する際にも、番組制作に集中できる環境を造ることができたと思います。

機能性と効率的な運用で制作サイドからも好評価


大容量のフレームメモリーや内蔵キーヤーによる効果を、マクロ機能ですぐに呼び出せる点が好評。


MPE-200 に取り込んだCG をスイッチャーのマクロ機能を使って簡単に反映できる点に期待。

運用開始後の制作サイドの評判は上々です。やはり、多彩な効果や演出を、マクロ機能を使うことで生番組でも有効に使える点が大変好評です。DMEを使わずに画像の拡大・縮小・移動、PinPなどマルチ構成ができる2.5Dリサイザーも、スタジオ内に設置されたディスプレイ表示などで威力を発揮しています。夜の番組から朝の番組への移り変わりの際も、マトリクス内のファイルを入れ替えるだけで変更でき、事前設定もスイッチャー内で完結できる点で、運用効率の向上やスタッフの負担軽減に大きく寄与しています。

CGプロセッサーとして導入したMPE-200については、まだ検証を兼ねたテスト運用の段階ですが、事前にCGさえ作成しておけば、専任のオペレーターを必要とせずに、スイッチャーのマクロ機能により、オンエアの際はワンタッチで特殊なタイトルやスーパー、ワイプの運用ができるので、そのメリットを活用する局面も増えるのではないかと期待しています。

また、今回導入したMPE-200は、MVS-8000でも運用できる仕様なので、大型中継車で持ち出して、高校野球の中継などで活用しています。たとえば、ピッチャーとバッターの対決、それを見守るスタンド席の様子を、臨場感豊かに表現するために、マルチ画面構成などに活用しており、今後、その効果やメリットを制作サイドにもアピールしていきたいと思っています。

ノウハウを蓄積し、活用することでより魅力的な番組制作を期待

現状、MVS-7000Xやシステム全体の性能・機能をフルに使いこなしているわけではありません。これからの本格運用を通して、ノウハウを蓄積し、それを使いこなすことで、より魅力的な番組制作に貢献するだけでなく、オペレーターのスキルアップにもつながっていくと期待しています。

少なくとも、今回の更新で、より良い制作環境の中で、多様な素材を多彩な演出で視聴者に楽しんでもらうこと、そして万一の際にも必要な情報を提供できる体制という当初のコンセプトを実現することができたのではないかと思っており、また安定した状態で運用できる点でも満足しています。

今後は、既存のVTRを移設した収録・送出系のファイルベース化/ネットワーク化が課題となってきます。ソニーには、アフターフォローとともに、こうした残された課題についても、必要となる情報の提供やソリューションの提案を期待しています。