スイッチャー

株式会社 関西東通 様

プロダクション

2016年3月掲載

コンパクトな中型車体で4K中継・収録や3G-SDIプログレッシブ収録を実現した4K/HD対応R-B中継車を導入。スポーツ/番組/イベントなどの4K/HD制作にフル稼働中。


4K/HD対応R-B中継車。全長8m65cm全高3m34cmというコンパクトな中型車体でHDはもちろん、4K中継・収録や3G-SDIプログレッシブ収録を実現。2015年6月より本格運用を開始しました。

株式会社 関西東通様は、機動性に優れたコンパクトな中型車体に、マルチフォーマットプロダクションスイッチャーMVS-7000X、マルチポートAVストレージユニットPWS-4400など3G-SDI対応の最新鋭機器や最新のITシステムを搭載した、関西初となる4K/HD対応のR-B中継車を2015年5月に導入し、6月よりサッカー、野球などのスポーツ中継、番組収録、コンサートなど各種イベントの4K/HD中継・制作に本格運用されています。
同社 現業本部長付 特命担当次長 平田泰一様に、R-B中継車開発・導入の経緯と目的、システムコンセプト、運用状況と成果、今後の期待などを伺いました。
なお、記事は2015年9月に取材した内容(機材は2016年3月時点)を、弊社にてまとめたものです。

関西東通グループの4Kプロジェクト推進の一環として4K対応中継車の導入を決定


平田泰一様

当社を含めた関西東通グループでは、2013年に4Kプロジェクトを立ち上げ、最新の4K機材動向や本格導入の時期などを模索してきました。2014年に4K試験放送が開始されたのに合わせて、CineAlta 4KカメラPMW-F55、カメラシステムアダプターCA-4000、ベースバンドプロセッサーユニットBPU-4000による4Kライブカメラシステムを導入し、ENGでの4Kロケーション収録に活用、同時にポスプロ部門を担う東通インフィニティーでも4K60pに対応する編集設備を導入し、撮影から編集・MAまでトータルに4Kサポートできる体制を整えました。そうした折に、1999年から運用してきたR-7中継車が更新時期を迎えました。当初はHD中継車を前提としていましたが、次世代映像への取り組みという時代の要請に加え、クライアントや株式会社 東通をはじめとしたグループ企業から4K対応の要望が多数寄せられ、その結果4K/HD対応の中継車を新たに開発、導入することに決定しました。


スイッチャー卓。4KソフトウェアをインストールしたマルチフォーマットプロダクションスイッチャーMVS-7000X(24ボタン3ME、HD 60入力/48出力、4K 15入力/12出力)を搭載。スイッチャーパネルは左右移動可能になっており、12ボタン2MEのサブパネルも用意しているので、用途・目的に合った柔軟な運用が可能になっています。さらに、車内にWi-Fi設備を搭載、スイッチャー、ルーターのシステムアップがタブレット端末でも可能。簡単な操作でモニターの切り替えやスイッチャーの設定変更ができます。


制作スペースは17型業務用有機ELマスターモニターBVM-F170A、17型業務用有機ELモニターPVM-A170、9型マルチフォーマット液晶モニターPVM-941Wなどを採用することでモニターラックの薄型化を図り、中型だが大型並みの広さを実現。VEスペースは、今回導入したHDC-2000シリーズなどHD運用時最大20台のカメラ運用を想定して5名分を確保しています。

R-B中継車の設計コンセプトとしたのは、「羊の皮を被った狼」。つまり、コンパクトな車体とすることで、配置などに柔軟性を持たせるとともに、搭載システムは大型車と同等のスペックを達成し、4KからHDまで幅広いニーズに的確に対応できるポテンシャルの高さを実現することでした。具体的には、4K対応とするため導入機材はできる限り3G-SDI対応のものとすること。多種多様な運用ができるシンプルなHDシステムを目指し、安定性・信頼性を確保すること。操作性に富んだ機材配置、居住性を含めた運用のしやすさを継承すること。そして、今後10年以上運用することを念頭に主要機材は国内のメーカー中心に採用し、メンテナンスを含めたサポート体制が充実していることを条件にしました。

そうした設計コンセプトや条件を満たしてくれると判断したのがソニーでした。4K/HDシステム・機器のラインアップの充実と信頼性・安定性を確保できる高い技術力、現場の要望に合わせたアップグレードなどによる対応、当社のR-7中継車、R-2中継車を含めた中継車製造の実績、評価、適切かつ柔軟、スピーディーなサポート体制などを総合的に評価した結果でした。実際、コンパクトで高性能・高機能、スペースファクターの強化、途中で4K対応に仕様変更するなどの追加要望や機材納品の繰り上げなど、かなり無茶な注文もあったと思います。そうした際にも、柔軟に対応していただけました。そうした努力もあって、当社が求める設計コンセプトを具現化した魅力的な4K/HD中継車を開発、導入することができたと思っています。その意味でも今回の選択に間違いはなかったと思っていますし、感謝もしています。

最新の3G-SDI対応機器、ITを活用したシステム構築で高機能と柔軟な運用を両立


4K中継・収録にフル稼働のCineAlta 4KカメラPMW-F55。大型ライブコンサートの4K中継・収録では株式会社東通の4K対応R-3中継車との連携で30台のPMW-F55を運用されています。R-B中継車では、4K運用時にはHDCU-2000/2500、BPU-4000など合計10式の4K CCUシステムが搭載可能で、PMW-F55+CA-4000など、合計10式が運用可能となっています。


2015年8月に、スポーツ中継やスタジオ収録番組収録に適した4K/HDシステムカメラとして追加導入されたマルチフォーマットポータブルカメラHDC-4300。B4マウントレンズなど既存のアクセサリーを有効に活用できる点やフルHD映像で4倍速、6倍速、8倍速のハイフレームレート撮影が可能なこと、R-B中継車に搭載されたマルチポートAVストレージユニットPWS-4400で記録することにより、最大8倍速のスーパースローモーション映像として再生できることも高く評価されており、すでにスポーツ中継などで威力を発揮しています。

コアプロダクツの一つとなるスイッチャーには、マルチフォーマットプロダクションスイッチャーMVS-7000X(3ME)を採用しました。HD運用時は80入力/48出力に対応します。また、4Kソフトウェアを使用することで4K運用にも20入力/12出力で対応可能になっています。スイッチャーパネルも24ボタン3MEのメインパネルに加え、12ボタン2MEのサブパネルも搭載しており、規模に応じた柔軟な対応が可能です。また、スイッチャー卓を前後左右の可動式とし、より的確なオペレーションができます。また、車内にWi-Fi設備も搭載し、最新のITシステムとの連携でスイッチャーやルーターのセットアップもタブレット端末で簡単にできるようにしました。さらに、万が一の際の安全性を確保するため、4K対応エマージェンシースイッチ、4KエマージェンシーDSKも2ch分搭載しました。これにより、4K中継時もHD運用時と同等の安全性・信頼性を確保することができます。

撮影用カメラにはマルチフォーマットカメラシステムHDC-2000シリーズを6式導入、、当社で保有するHDC-1000シリーズなど30台のHDカメラとの組み合わせでHD中継・収録時には最大20台の運用が可能です。4K運用時はPMW-F55+CA-4000+BPU-4000によるライブシステムを中心に運用。4Kスーパー35mm CMOSイメージセンサーとPLレンズによる高精細な映像は、プレーヤーやアーティストの表情まで臨場感豊かに捉えることができます。また、2015年8月には4K/HDシステムカメラとして運用できるマルチフォーマットポータブルカメラHDC-4300を新たに導入。HDC-2000シリーズなどとのHDシステム運用や、B4マウントレンズ対応モデルの特性を生かして、80倍以上の高倍率レンズを必要とするスポーツなどの4K中継・収録に威力を発揮します。加えて、HD最大8倍速のスーパースローモーションも魅力です。

メインの収録システムにはマルチポートAVストレージユニットPWS-4400を採用しました。次世代放送のスタンダードフォーマットとなっているXAVC対応であること、4K/HDライブサーバーとして運用できる点、そして標準2TBという大容量でスポーツなどの長時間収録にも柔軟に対応できる点を評価しました。また、モニターには有機ELマスターモニターBVM-F170Aを2式、有機ELモニターPVM-A170を10式、マルチフォーマット液晶モニターPVM-941Wを32式配備しました。高性能でありながら薄型・コンパクトで、スペースファクターの向上に大きく貢献しています。さらに、スイッチャー卓の右上には4Kモニター取り付け金具も装備してあり、4K運用時には30型有機ELマスターモニターBVM-X300などを配備することで、4K映像もしっかりと監視、管理できるようになっています。

ライブ・コンサート、スポーツ中継、番組収録などで安定した4K中継・収録を実現

R-B中継車は2015年5月の導入と同時に、関西東通グループ4K内覧会で放送局をはじめとしたクライアントや関係者の方々にお披露目しました。関西地区では初めての4K対応中継車であること、編集・MAまでのワンストップサービスを実現した点などが注目を集め、大勢の来場者で賑わいました。R-B中継車についても、思った以上に作業スペースが広い、想像以上に高機能で使いやすいと声もたくさん頂戴しました。翌月6月から本格運用を開始してから、まだ3ヶ月あまりの段階ですが、すでに30件の運用実績があります。そのほとんどはHD中継・収録業務ですが、大規模なライブ・コンサート、サッカー・野球のスポーツ中継、番組収録で4K制作を行っています。

4K中継・収録の一つがライブ・コンサートでした。この時は株式会社 東通が保有する、やはりソニー製のR-3中継車と連携することで計30台のPMW-F55を使用しました。ブルーレイ用の高画質収録が前提にあったのでS-Log2で撮影を行い、生中継はカラーグレーディングVEが現場で現像調整してオンエアしました。また、サッカー、高校野球の4K中継・収録も行っています。ここではHDC-4300も高倍率レンズを必要とするシーンで威力を発揮しました。PMW-F55はB4マウントレンズ変換アダプターを使用することで既存のB4レンズを使える点が魅力ですが、高倍率になるとアイリスの値によっては深度が浅くなってしまいます。たとえば、野球のセンター側で撮影する際など、ピッチャーに合わせるとバッターがボケる、あるいはその逆といったことが起こります。HDC-4300では80倍以上の高倍率レンズを直接装着できるのでクリアなキレの良い映像を捉えることができます。

ほかに、お寺を舞台にしたトークバラエティー番組でもPMW-F55を4台使って4K収録を行い、HDで放送するとともに、インターネットで4K配信も行いました。お寺の中という限られたスペースの中でも効率的な収録を行うことができ、コンパクトながらポテンシャルが高いという設計コンセプトが生きたと思っています。今後もクライアントの皆様の要望、期待に応えられる4K/HD制作にR-B中継車をフルに活用していきたいと思っています。
当社では、2002年から運用しているR-2中継車も更新時期を迎えようとしています。ソニーには、今後もラインアップの一層の拡充、技術力・サポートの提供を期待しています。また、よりシンプルな4Kシステム構築に貢献するであろうNMI(ネットワーク・メディア・インターフェース)や、迫力に富んだ映像表現を可能にするHDR(ハイダイナミックレンジ)、ワンソース・マルチユースを可能にするハイブリッドLogガンマなどの実現に向けた努力を続けてほしいと思っています。