スイッチャー

名古屋テレビ放送株式会社 様

放送局

2015年1月掲載

3G-SDI対応の先進的な中型中継車を導入し、スポーツ/イベント中継などにフル稼働中。
J2リーグ中継の4K撮影/収録テストにも運用。


3G-SDI対応など、先進のテクノロジーを搭載した新中継車R131。車体をより大きくするだけでなく、車内システムの構築やラック配置などに工夫を施すことで、居住性とスピーディーな準備、セッティングに対応。また、油圧ポール式のFPU伝送装置で運用の幅と機動性も高めた設計、仕様となっています。

名古屋テレビ放送株式会社様は、2014年2月に3G-SDI対応の新中継車R131を導入され、スポーツ/イベント中継・収録などに、フル稼働されています。また、8月にはJ2リーグ戦で4K撮影/収録テストに使用されるなど、次世代映像の制作、検証にも活用されています。

同社 技術局 技術戦略部長 村田 実様、技術戦略部 サブマネージャー 筒井宏隆様、映像技術部 主事 喜多利樹様、同部主事 長田圭介様、株式会社 名古屋テレビ映像 番組技術部VEグループ 稲垣 徹様に、新中継車の設計コンセプト、システム選定の決め手、稼働状況とともに、8月に実施された4K撮影/収録の成果や評価などを伺いました。

なお、記事は2014年9月下旬に取材した内容を、編集部でまとめたものです。

長期間運用できる先進性に加えて居住性や機動性も重視

新中継車R131の設計コンセプトの柱は、今後長期間運用できるシステムの安定性、信頼性、そして先進性です。同時に、長時間の中継・収録業務に対応する居住性や、迅速かつスムーズに準備、セッティングが可能であることも重視しました。

そこで、車体を可能な範囲で大きくすることに加え、ラックの配置や配線などを工夫することで、スタッフの動線を確保するだけでなく、ストレスなく作業できる環境を構築することにしました。さらに、油圧ポール式のFPU伝送装置を採用するなど、小型中継車並みの機動力と柔軟性を付加した点も新中継車の大きな特長となっています。

こうした要望に的確に応えてくれたのが、ソニーの機器やシステム、そしてインテグレーション能力でした。中継車における実績や評価の高さと合わせて、採用の大きな決め手となりました。


村田 実様


筒井宏隆様


喜多利樹様


長田圭介様


稲垣 徹様

ソニーの機器、システムによる機能面や運用面のメリットを評価


スイッチャー卓。4キーヤー/MEなどの充実した機能面と、豊富な入出力により多彩な系統が組める運用面のメリットが高く評価されて、マルチフォーマットプロダクションスイッチャーMVS-7000X(3ME) を採用。セッティングも早く、時間に追われる中継業務に最適と好評を得ています。


VE卓。カメラシステムとして6台のHDC-2400とCCUにHDCU-2000を6台、HDCU-2500を2台搭載し、持ち込みで最大12カメラ運用が可能な仕様になっています。S-BUSコントロールで音声中継車や他の中継車との緊密な連携が可能な点も好評です。

システム選定でキープロダクツの一つとなったのが、スイッチャーのMVS-7000Xです。豊富な入出力で多彩な系統が組める点や、S-BUSコントロールとの連携で幅広い用途や目的に運用できるだけでなく、事前の準備、セッティングが迅速かつ容易であることが大きな特長です。こうした機能面と運用面でのメリットの数々は、他に抜きん出た存在であると評価しました。

もう一つが、カメラシステムHDC-2000シリーズです。2012年11月に更新したBスタジオにも6台導入しており、操作性を継承できるだけでなく、連携した運用が可能な点でもメリットがあります。当社では、カメラシステムの効率運用を推進しており、その意味でも有効だと考えました。また、HDC-2000シリーズの高感度、高SN比、そして3G-SDIによる2倍速スローが可能なことなど、スポーツやイベント中継に適した性能、機能も魅力的でした。

新中継車は導入後、高校野球・Jリーグ戦・フィギュアスケートなどのスポーツ、音楽やイベント番組の中継、収録にフル稼働中です。トラブルもなく安定した運用ができており、よりクオリティーの高い映像制作が可能になっていると感じています。快適な環境を実現した居住性、セットアップ時間の短縮もスタッフに好評です。

スポーツ中継では、アスリートの表情を捉える際などに2倍速スローを有効に活用しています。表情が滑らかに、美しく見えると評判も上々で、オペレートする立場でも感度に影響がなく、アイリスコントロールが容易であることなど、魅力的な機能だと思っています。

4K撮影、収録への対応など拡張性、発展性も大きな魅力

2013年10月に、当社は社内に次世代放送のワーキンググループを立ち上げ、4K制作の可能性についての検証作業を開始しています。実際、5月にCineAlta 4KカメラPMW-F55を1台導入し、番組制作やイベントに活用しています。その一つが本格的な4K 番組「ALL 4 DANCE」で、日本トップクラスのダンサー10組が集結、4Kならではの高精細な画質でパフォーマンスが楽しめます。この番組は、10月に開局する日本初のダンス専門CS チャンネル「ダンスチャンネル」でHDでオンエアされます。

また、9月末に行われた「メ〜テレ秋まつり2014」では、特設会場に4K/60p対応可搬型180インチマルチモニターを設置し、舞台で行われるダンスパフォーマンスをクレーンカメラ(PMW-F55)で撮影、その映像と観客の応援から作成したリアルタイムCGを4K/60pで合成、上映しました。4Kならではの迫力、臨場感で大勢の入場者に好評を得ました。

今回導入した新中継車は、4Kオプションを装備しているわけではないので、普段のスイッチングはHDオペレーションとなりますが、3G-SDI対応やCCUのHDCU-2000シリーズを使えば、PMW-F55とカメラシステムアダプターCA-4000、ベースバンドプロセッサーユニットBPU-4000を組み合わせることで4Kライブ中継が可能となります。また、マルチポートAVストレージユニットPWS-4400で4K収録も可能です。

そこで8月のJ2リーグ中継では、ソニーにも機材協力をいただき、実際に4Kでの中継、収録を行ってみようということになりました。やってみないと分からないことが多いですし、本当に運用できるのか検証し、同時にノウハウを習得することが目的でした。


8月に岐阜市長良川競技場で行われたJ2リーグ戦の4K撮影/収録テストの様子。4台のPMW-F55にカメラシステムアダプターCA-4000を装着し、ベースバンドプロセッサーユニットBPU-4000とHDCU-2000シリーズを接続することで4Kライブ撮影を実現。収録にはマルチポートAVストレージユニットPWS-4400が使用されました。ここで撮影された4K映像は、株式会社テレビ朝日様、朝日放送株式会社様と共同で行った映像伝送実験にも活用しました。これはテレビ朝日様の伝送装置を使って、大阪・ABCホールに設置した大型4Kモニターに映像を上映、関係者による伝送映像の評価を行う、というものです。テレビ朝日様を中心とした東京・大阪・名古屋3局合同の取り組みとして次世代技術への布石としました。

4K運用の検証テストで実感した可能性と課題

J2リーグにおける4K中継収録トライアルにより、数多くの成果を得ることができました。1番目は、メ〜テレ初の4K中継を伝送実験も含めて無事に完了できたという点です。短い準備期間の中、数多くの課題を無事に乗り越えることができたのは、ソニーをはじめ多くの方のご協力があってのことでした。

2番目は、技術だけでなく制作サイドも4K撮影のトライアルを行うことができたという点です。90分の試合を15分インターバルで区切り、各時間区分で撮影手法を変えて映像作りを行いました。その映像はABCホールに送られ大型モニターによる評価視聴として、画質のみならず撮影手法も含めた全体の評価を実施、4Kによるサッカーの見やすい撮り方を模索しました。この成果は将来の4K映像の可能性を探る一歩になったと考えます。

しかし、最も大きな成果は、4Kの可能性を引き出すためには課題も多いということを確認し、体験できたことだと思っています。もちろん、オペレーションの習熟度を上げることで対処できる課題もありますが、システムや機器の開発が不可欠となるテーマもありました。中継用4Kカメラ、4K対応レンズのラインアップ、モニタリング環境、バックアップ用メディアなどを求める声もありましたし、SDIオペレーションの限界を指摘する声もありました。

ソニーには、こうした要望に応え、IP技術を活用してSDIオペレーションの課題を解決する機器の開発や、4K機器ラインアップの充実などで、今後も4K制作をサポートするソリューションを提案し続けてほしいと思います。