スイッチャー

株式会社 テレビ朝日 様

放送局

2016年3月掲載

MVS-7000XやHDC-2000シリーズによる3G-SDI対応の新システムでスタジオサブを更新、スポーツ中継などでフル稼働中


マルチフォーマットプロダクションスイッチャーMVS-7000Xをコアとして、最新の3G-SDI対応システムで更新されたスタジオサブ。

株式会社 テレビ朝日様は、同社が制作・配信しているスポーツ中継の受けサブとして活用されている2つのスタジオサブを最新の3G-SDI対応システムで更新し、スタジオカメラにHDC-2500を4台導入され、2015年3月より稼働を開始されました。
同社 技術局 設備センター コンテンツ制作システムグループ 近藤佑輔様、二瓶友美様、オペレーションをサポートされている株式会社 テイクシステムズ 制作技術センター カメラグループ 錦戸浩司様、VEグループ 菅原 将様に、今回の更新コンセプト、システム選定の経緯や決め手、運用状況と成果などを伺いました。
なお、記事は10月初旬に取材した内容を、編集部でまとめたものです。

近藤佑輔様
近藤佑輔様

二瓶友美様
二瓶友美様

錦戸浩司様
錦戸浩司様

菅原 将様
菅原 将様

幅広い用途に柔軟に対応できること、拡張性を確保することを重視


スイッチャー卓(写真・左)。4MEに加え、仮想的にME列を増やせるMP2を搭載することで、最大6MEでの運用が可能になっています。また16面マルチビューアー2式を加え、カメラやVTR映像のモニターへのアサインがタブレットで自由に行える点も好評です(写真・右)。

今回、野球・サッカー・ゴルフなど、当社が行っているスポーツ中継で受けサブとして運用している2つのスタジオサブを更新することになった一番の理由は、2003年から使用しているMVS-8000やHDC-900シリーズが10年を過ぎて更新時期を迎えたことです。

更新コンセプトの柱の一つは、これから10年単位で運用できる性能・機能・操作性を持ち、信頼性・安定性にも優れたシステムであるということです。また、スポーツ中継の配信先が地上波だけでなく、BS/CS放送にも広がっていること、さらに音楽番組や情報バラエティ番組の生放送にも使用されているので、幅広い運用に対応できることも求められます。

さらに、4Kをはじめとした次世代映像制作も視野に入れておく必要があり、発展性・拡張性を持ったシステムを構築することも更新コンセプトの一つとしました。

こうした観点でシステム選定を行った結果、ソニーの機器、システムを採用することに決定しました。MVS-7000XやHDC-2000シリーズの豊富な実績、評価の高さはもちろんですが、以前より使用していたMVS-8000やHDC-900シリーズの使い勝手、操作性を踏襲していることで、オペレーションやワークフローを継承しながら、スムーズに移行できるだろうと判断したことも選定理由の一つです。

また、導入したMVS-7000Xは4ME列に加え、オプションのマルチプログラム2を装備することで最大6ME列で運用できるだけでなく、豊富なキーヤーやメモリー機能も充実したポテンシャルの高いスイッチャーなので、幅広い用途に対応できます。さらに、3G-SDI対応のソフトウェアの追加で4Kにも対応できるなど発展性・拡張性の面でも当社の要望に合っていました。

もちろん、当社の要望に柔軟に応えてくれるソニーの対応力の高さも決め手の一つです。たとえば、スポーツ中継では回線を管理することが多いのでモニターが重要な役割を担います。多くのモニターを必要とし、どこに何を出すか、切り替えをどこで行うかといった複雑さを、マルチビューアーなども有効に活用しながら行える仕組みを作っていただき、こうした複雑なマトリクス管理もタブレットでできるようになっています。

スポーツ中継を中心に、番組の生放送、収録でフル稼働中


VE卓(写真・左)。業務用有機ELモニターに加え、4面マルチビューアー2式(写真・右上)を配備するとともに、カウントアップも表示される仕組みとすることで、従来のようにVTRラック(写真・右下)に足を運ばなくても、的確かつ効率的な素材管理、送り出しが可能です。


4台のHDC-2500は、HDFA-200を使ったクレーンでの運用のほか、三脚、ショルダー運用などにより、スポーツ中継での顔出し用途以外に、ライブ・収録番組、さらに社屋内外に設置された光ケーブル端子盤を活用した中継でも活用されています。

今回更新したスタジオサブは、従来同様にスポーツ中継の受けサブとしての運用のほか、音楽番組や情報バラエティ番組の生放送、社屋内外からの中継などにフル稼働しています。

もちろん、新しいシステムのハイスペックな機能については、今後習熟度を上げて有効に活用していかなければならないと思っていますが、現時点でメリットや利便性を実感している部分も少なくありません。たとえば、更新コンセプトの一つとしたスイッチャー卓、VE卓周囲のモニター環境です。カメラやVTRの映像をマルチビューアーなどを使って効率的に管理できるだけでなく、提供素材などはスタートから終了までが時間で表示されるので、いちいちVTR収納ラックまで足を運んで確認する必要がありません。また、上位システムからID情報やタリー情報も出せるので監視もしやすくなっています。

MVS-7000Xの機能も魅力です。提供素材のスーパーを消去する際のデフォーカス作業がスピーディーに行えること、これまでDMEを使って行ってきたリサイズワイプなどもキーヤーでできること、プレビューの事前確認も簡単に行えるといった点です。ME列を節約できるだけでなく、安心して行える点は作業負担の軽減にもつながります。

一方、HDC-2500も有効に活用しています。光ファイバーアダプターHDFA-200を活用してクレーンカメラとして運用するなど、スポーツ中継時の顔出し用途だけでなく、番組の生放送や収録、さらに中継などにも有効に活用しています。外からの中継運用時などには、高感度・高SN比の魅力も実感しています。

効率的な4K制作環境に向けてNMIなどに大きな期待

今後は、収録系やアーカイブを含めてステップ・バイ・ステップで更新を進めていくことになると思います。

4Kや8K、HDR(ハイダイナミックレンジ)といった次世代映像制作についても2020年に向けて加速していくと考えられます。今回更新したスタジオサブもスポーツ中継をメインとする以上、そうした新しい映像制作に向けた準備や検証作業は必要になってくると考えています。機会があれば、4K/HD対応のマルチフォーマットポータブルカメラHDC-4300などの運用テストも行っていきたいと考えています。

ただ、4K対応のサブシステムの構築は、できるだけシンプルにしたいと思っています。現状の3G-SDIを4本使うシステムでは煩雑な仕組みになるだけでなく、安定性の面でも不安を覚えます。HDと同様にケーブル1本で構築できる4K環境を目指したいと思っており、その観点でソニーが提案しているNMI(ネットワーク・メディア・インターフェース)には大きな期待を持っています。

ソニーには、現場の声を反映したシステムを、今後も強化、拡充するとともに、次世代映像制作に向けた斬新なソリューションを提案し続けて欲しいと思います。