スイッチャー

株式会社 テレビ東京 様

放送局

2014年1月掲載

最新鋭のシステム、制作環境の改善でより魅力的な番組づくりを目指した
拡幅式の大型HD中継車を導入。


拡幅式の採用などにより、制作環境を大きく改善した新大型HD中継車(102 号車)。

株式会社テレビ東京様は、これまで運用されてきた大型中継車を更新され、最新鋭のシステム構成と、より快適な制作環境を実現した、拡幅式の大型HD中継車(102号車)を導入され、2013年7月の音楽番組の収録から本格運用を開始されました。
同社技術局制作技術部主事大崎雅典様、同部副参事田中圭介様に、新中継車のコンセプトや、システムの主な特長、稼働状況と運用の成果を伺いました。
なお、記事は2013年9月下旬に取材した内容を、編集部でまとめたものです。


より魅力的な番組制作のためのシステムと環境づくり


田中圭介様


大崎雅典様

大型中継車の更新に際しては、それを運用する制作/プロダクションサイドと、目指す方向性について協議を重ねました。その結果、どんな規模の番組の中継・収録にも対応でき、同時に、より魅力的な番組制作が可能であることを更新コンセプトの柱とすることになりました。

このコンセプトを実現するためには、もちろん、機器の選定、システム設計が重要になりますが、それと並行して制作環境の改善を大きなテーマとしました。

中継・収録業務では、大勢のスタッフ、オペレーターが車内に入り、長時間の作業を行いますので、広いスペースでの居住性や動線の確保などにより、制作業務に集中できる環境づくりを重視しました。


マルチフォーマットプロダクションスイッチャーMVS-7000X(4M/E) を採用。スイッチャーパネルはスライド式となっており、位置を変更したり、増設用スイッチャーパネル(1M/E) との連携も可能。メインモニターには業務用有機EL モニターPVM-1741A を2 台採用しています。

そこで、まず拡幅式の車体として、作業時のスペースに余裕を持たせることにしました。また、スイッチャーパネルを横移動できるようにして、用途・目的、規模に応じて位置を決められるようにするとともに、サブパネルを用意して、大規模・大人数の運用も効率的に行えるようにしました。ほかにも、タブレット端末を使ったリモートコントロール機能など、細かな点に渡って、操作環境の改善に努めました。

これにより、最大9名のスタッフ、オペレーターが入った番組制作でも、従来よりもストレスを感じることなく、制作業務に集中できる環境を構築できました。

カメラシステムに12台のHDC-2000 シリーズを採用


カメラシステムには12台のHDC-2000 シリーズを採用。写真・右はリモートコントロールパネル。

機器やシステムの選定、設計においても、幅広い中継・収録に対応できるポテンシャルの高さと、長期間運用できる先進性・拡張性、そして安定性・信頼性を重視しました。カメラシステムには、高感度・高解像度、低ノイズなどから評価・実績の高いマルチフォーマットカメラHDC-2000シリーズを選択しました。

HDC-2000を4台、HDC-2500を8台、大型レンズアダプターHDLA-1505を4台採用することで、柔軟な運用スタイルを実現しています。また、カメラは最大16台まで拡張できる仕様になっており、より大型の中継番組にも対応可能です。HDC-2000シリーズは、2倍速スローにも対応しているので、スポーツ中継におけるリアクション・スローリプレイなどに有効に使える点も評価しました。


2013年7月から運用を開始して、サッカーや卓球など屋外・屋内でのスポーツ中継から舞台収録まで、幅広い用途での中継・収録にフル稼働されています。

機能性と使い勝手の良さが魅力のMVS-7000Xに大きな期待


VE卓には17型有機ELマスターモニターBVM-F170Aを5台採用。

最近の生中継や収録では、多様な素材を使って、多彩な効果・演出で表現する傾向が顕著になっています。中継車のシステムにも、機能性とともに、生中継で効率的に使える使い勝手の良さが求められます。この条件を満たすスイッチャーとして採用したのが、マルチフォーマットプロダクションスイッチャーMVS-7000Xでした。大容量のフレームメモリーや内蔵キーヤーを駆使した多彩な効果を、マクロ機能を使って瞬時に画づくりに反映できる点が最大の魅力です。

中継車での運用については、これから本格的に検討していく予定ですが、2.5Dリサイザーにも注目しています。 また、VE卓のマスターモニター、スイッチャー卓のメインモニター、カメラのビューファインダーなど、随所に業務用有機ELを採用しました。優れた色の再現性と動画応答性で見やすく、確認しやすい点が魅力で、これはストレスのない制作環境の観点でも大きく貢献していると思っています。 システム的には、24pでコンサート収録にも対応したほか、3G-SDIを採用して、将来的な拡張・発展にも柔軟に対応できる仕様にしています。

スポーツ中継から舞台収録まで幅広い用途でフル稼働中


コンセプト通りに、広く、快適な作業環境を実現することができ、新中継車を運用する制作/プロダクションサイドにも好評です。写真・左上のタブレット端末によるリモートコントロールも、中継・収録現場での効率的なセッティングなどに貢献しています。

102号車は、2013年7月中旬の音楽番組の収録から運用を開始し、7月末にはサッカーの生放送を行いました。その後も屋外・屋内のスポーツ中継や、舞台収録など、幅広い中継・収録にフル稼働しています。稼働率が高い状況の中でも、トラブルもなく、安定した状況で運用できています。

制作サイドの評判も上々です。やはり、制作環境の改善というコンセプトが具現化されている点を評価してくれています。また、この中継車を運用するプロダクションサイドからも、トラブルの報告や不満の声は出ていません。何か問題や不満があれば、必ず報告がありますから、それが一切出てこないというのは、安定した状態で、満足できる形で運用できているのだと思います。

今後も、102号車はスポーツ中継を中心に、舞台・コンサート収録など幅広い番組の中継・収録に活用していく予定です。この新中継車を使うことで、これまで以上に視聴者の皆さんに楽しんでもらえる、魅力的な番組を提供していきたいと願っています。

ソニーには、今後のアフターフォローは当然のこととして、4K対応など将来的な拡張に関する情報提供や、ソリューションの提案などを期待しています。