
長野県飯田市に本社を置く株式会社飯田ケーブルテレビ様は、2025年3月にマルチフォーマットポータブルカメラ『HXC-FZ90』を中心としたマルチカメラシステムを導入されました。スタジオ収録からスポーツ中継、ライブ配信まで、幅広い制作業務で活用されています。
株式会社飯田ケーブルテレビ 編成部長 平澤 徹 様に、『HXC-FZ90』導入の経緯や選定の決め手、実際に使用して感じた効果についてお伺いしました。
当社では、飯田市と周辺市町村、約15,000の加入世帯を対象に自主放送チャンネルを運営しており、毎月数十本の番組を制作・放送しています。本社のスタジオで収録を行っている平日毎日更新の地域ニュース番組をはじめ、お祭りなどの地域行事や高校野球をはじめとするスポーツの生中継、さらには企業向けライブ配信まで、制作内容は多岐にわたります。マルチフォーマットポータブルカメラ『HXC-FZ90』は、主に平日はスタジオで、週末は中継現場に持ち出して使用する前提で、カメラコントロールユニット『HXCU-FZ90』と組み合わせて3式を導入しました。

スタジオフロアに据えられた3式の『HXC-FZ90』。手前2式をスタジオ常設で運用
当社ではこれまで、ショルダーカムコーダー『PMW-320』2式と『PMW-400』1式に光カメラアダプターを組み合わせ、スタジオ・取材・中継のすべてを兼用する運用を長年続けてきました。今回の更新にあたっては、サードパーティ製の光カメラアダプターを使うか、システムカメラへ移行するかの判断が必要でした。しかし、サードパーティ製アダプターは、配線やアクセサリー類の外付けによる煩雑さ、レインカバーが装着できないなど、運用上の制約が増えるため悩んでいましたが、そうした中で紹介を受けたのが『HXC-FZ90』でした。近隣のケーブルテレビ局との合同デモを通じて、『HXC-FZ90』は求めていた条件を満たす機材だと判断しました。
近年は、取材用カムコーダーはハンディタイプへと移行してきていました。当社はこれまでXDCAMメモリーカムコーダー『PXW-Z150』のほか『PXW-Z190』を2式、『PXW-Z280』、『PXW-Z200』などを導入しており、若いスタッフを中心に取材現場で活用しています。その一方で、スタジオ収録や中継においては、色合わせやアイリスフォローなど、システムカメラならではの運用が不可欠です。用途ごとに最適なカメラを使い分ける体制へ移行することは、自然な流れでした。
『HXC-FZ90』は、レンズと7.4型有機ELビューファインダーがセットとなったパッケージ『HXC-FZ90S』で導入をしています。あわせて、3.5型液晶カラービューファインダー『HDVF-L10』を2式と、0.7型有機ELビューファインダー『HDVF-EL20』1式も導入しています。カメラコントロールユニット『HXCU-FZ90』は3台を1セットとした可搬型ラックに組み込み、スタジオから中継現場へそのまま持ち出せる構成としています。光カメラケーブル・コネクターはノイトリック仕様で、スタジオ−サブ間は光カメラケーブル25m3本を常設、中継用に100mと50mを各3本、25mを1本用意することで、現場に応じた柔軟な対応を可能にしています。

可搬型ラックに格納された、スタジオサブ調整卓上の『HXCU-FZ90』
スタジオ収録では、大型ビューファインダーを装着した2式を常設しています。基本的に生放送はなく、原稿を読むアナウンサー1人と、サブに1人の最小限の人員で効率的に収録を行っています。残る1式は中継などに備えて外してある状態ですが、年に数回、スタジオでも3カメでの収録があります。

スタジオ運用時は7.4型大型ビューファインダーやズーム・フォーカスサーボを装着
中継では、リターン・タリー・インカムなどが欲しい場合はCCUもあわせて持ち出し、中継車と共に運用しています。中継車のCCUやスイッチャーは付け外しができる形にしてあり、現場に応じてシステムを組んでいます。3式の『HXC-FZ90』に加え、無線伝送のカメラやMCの顔出し固定カメラなど、あわせて最大でも5カメ程度の運用です。一方、企業のライブ配信などの簡易中継では、1カメでの配信や、1カメ有人・1カメ固定の2カメ配信といったケースでCCUや中継車を使用せずに運用を行うことがあります。その場合には『HXC-FZ90』のみを現場に持って行き、光カメラケーブルは使わず、HD-SDI接続で使っています。


中継車と内部の調整卓。CCUやスイッチャーは現場に応じて仮設される
屋外中継では、雨天や急な天候変化を前提とした運用が求められます。例えば、夏祭りなどでは頻繁に夕立に見舞われたりしますし、サッカーやラグビー中継は雨の中でも行われます。そのため、大型ビューファインダーやズーム・フォーカスサーボは使用せず、小型ビューファインダーとレインカバーを組み合わせ、機動力と安全性を重視した構成としています。

0.7インチ有機ELビューファインダー『HDVF-EL20』を装着した中継時スタイルの『HXC-FZ90』
従来使用していたショルダーカムコーダーは、全体も大きく、さらに光カメラアダプターを装着していたので、かなりかさばっていました。『HXC-FZ90』は、コンパクトで軽量なため、取り回しが大きく向上しました。カメラ自体が4K対応ということもあり、同じHDの運用でも一目でわかるような「画のキレ」など画質の向上も実感しました。また、『HXC-FZ90』には従来同様のXLR型のほか、4極ミニジャックのインカム端子が備えられていて、スマートフォン用イヤホンマイクが使用できる点も好評です。中継では、デジタルエクステンダーもとても便利です。画質面でも遜色なく、即座にワンタッチで使えます。光学式エクステンダーと違い光量低下も起きません。レンズ付きパッケージ『HXC-FZ90S』が用意されていたことで、光学エクステンダー付きレンズを別途購入する必要がなく、1カメあたり約100万円単位でのコスト削減につながりました。『HXC-FZ90』は本体がコストパフォ―マンスに優れるだけでなく、細かな機能の充実が、周辺機器も含めたシステム全体のコストパオ―マンス向上に貢献してくれています。
スポーツ中継などではレンズのズーム倍率やエクステンダーが欲しい場面が多くあります。例えば野球で「ボールが空に抜けた」ような場面では、瞬時のアイリスフォローが不可欠です。お祭りの中継では、夕刻には陽が傾き、ホワイトバランスは刻々と変化します。そのリアルタイムのフォロー、カメラ間の色合わせなど、システムカメラでなければ対応できない場面があります。こうした制作要件を満たし、レンズを含めたシステム全体として、これだけの機能とコストパフォーマンスを兼ね備えた製品は他になく、『HXC-FZ90』は当社の目的にまさにジャストミートした製品となりました。
『HXC-FZ90』の導入によって、スタジオから中継まで、用途ごとに最適なカメラを使い分ける体制が整いました。今後は、地域イベントやスポーツ中継といったこれまで以上に機動力が求められる現場でも、システムカメラの強みを生かした制作に取り組んでいきたいと考えています。
制作環境の変化や視聴者ニーズに柔軟に対応しながら、地域に根ざした番組づくりをさらに充実させていきたいです。
※本ページ内の記事・画像は2026年2月に行った取材を基に作成しています