読売テレビ放送株式会社 様

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“システムカメラ” × “Cinema Line” × “HDRC-4000”
音楽番組におけるマルチカメラ運用の新しいワークフロー
― 表現力向上と高精度な色合わせを実現 ―

読売テレビ放送株式会社様では、音楽番組における映像表現力および制作自由度のさらなる向上を目的に、マルチフォーマットポータブルカメラ『HDC-5500V』と、ジンバル運用カメラとしてCinema Lineカメラ『FX6』を導入されています。
システムカメラとCinema Lineカメラの併用において課題となるカラーマッチングに対し、HDRプロダクションコンバーターユニット『HDRC-4000』の新機能を活用した独自のワークフローを確立。高精度な色合わせと優れた運用性を両立し、音楽番組に求められる映像表現力の向上を実現されています。
本事例では、ワークフロー確立までの取り組みと試行錯誤、そして完成した運用方法についてお話を伺いました。

読売テレビ放送株式会社
技術局
テクニカルディレクター
ビデオエンジニア
菊地 健 様
読売テレビ放送株式会社
技術局
ビデオエンジニア
古門 優弥 様
読売テレビ放送株式会社
技術局
ビデオエンジニア
矢野 鼓子 様

音楽番組での
ジンバル運用に
最適だった『FX6』

放送品質と高い表現力を両立

菊地様:当社では、関西ローカルで放送している音楽番組「音道楽√(ルート)」、および年末の全国ネット特別番組「ベストヒット歌謡祭」を制作しています。音楽番組は当社としても注力しているコンテンツの一つであり、技術面からも映像表現力の向上に積極的に取り組んでいます。
従来はステディカムを用いた演出を行っていましたが、機材のコンパクト化によるフットワーク向上を目的に、小型ジンバル運用への移行を検討しました。

古門様:小型ジンバル導入当初は、ソニー製および他社製のハンディカムコーダーを使用しながら検証を進めていました。その中で、他局での『FX6』活用事例を知り、当社でもテストを実施しました。

『FX6』は、映像信号の品質が高く、ノイズが少ないことに加え、発色がソニーのシステムカメラに近く、マルチカメラ運用に適している点を高く評価しました。また、ジンバルに不可欠なワイヤレス伝送装置との接続に必要となるSDI出力を備えていること、バリアブルNDフィルターによって被写界深度を柔軟にコントロールできる点も大きな魅力でした。
これらの理由から、高い映像品質と操作性を両立できる『FX6』が当社の運用に最も適していると判断し、導入を決定しました。

コンパクトでありながら大判センサーならではのシネマティックな撮影ができる『FX6』。
ジンバルと組み合わせることで、高品質な映像表現と高い操作性の両立を実現。

『Monitor & Control』によるリモート運用の確立

菊地様:『FX6』導入当初の2022年頃は、カメラのリモートコントロールを行わず、カメラマンがジンバル操作に専念できるよう、アイリスやその他ペイント調整値を固定して運用していました。VEがフレームシンクロナイザーのカラコレ機能を使用して、色調整や露出管理を行っていました。

古門様:2023年に、Cinema Lineシリーズの制御に対応したスマートフォン・タブレット用アプリケーション『Monitor & Control』がリリースされました。『FX6』とタブレット端末をWi-Fi接続することで、リモートコントロールが可能となることが分かり、スタジオとスタジオサブ、また中継車と出先間でネットワークを構築して運用を開始しました。これにより、VE側からリモートでアイリス調整ができるようになり、急激な照明変化による露出オーバーも防げるようになりましたし、ダンスのような激しい動きをシャープに捉えるための高速シャッター設定も、リモートで柔軟に調整できるようになりました。大阪城ホールで行っている「ベストヒット歌謡祭」の中継では、カメラマンの周辺音が大きく、インカムが聞き取りづらい環境のため、VE側で各種設定変更が行えることは、オペレーション面や映像品質管理の視点で非常に大きなメリットでした。

菊地様:カラーチャートを基に事前に作成した複数の調整データをシーン設定として本体に保存し、これを『Monitor&control』からVEがリアルタイムに切り替えながらシステムカメラと比較できるようになったことは、運用面で大きな前進でした。

プロフェッショナルカムコーダー
FX6

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※プロフェッショナルカムコーダーサイトにリンクします

Monitor & Control

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システムカメラと
Cinema Lineをつなぐ
色合わせの進化

システムカメラとの色合わせという課題

菊地様:『FX6』導入当初は、マルチフォーマットポータブルカメラ『HDC-2000』や『HDC-4300』と組み合わせて運用していました。機動力や表現力は向上した一方で、システムカメラとの色合わせには課題がありました。

スタジオでカラーチャートを用いて事前に調整しても、実際の照明下で撮影を始めると、微妙な色のズレが生じることがありました。現場では時間が限られる中で迅速に色合わせを行わなければならず、システムカメラ側の「16軸カラーマトリクス(マルチマトリクス)」を調整して『FX6』に寄せていましたが、本来の画づくりの良さを十分に生かし切れていないという課題感がありました。

『HDC-5000』シリーズの3D LUT活用と次なる一手

古門様:2024年夏、ソニー本社で開催された「『HDC-5000』シリーズの3D LUT活用事例」セミナーに参加しました。映像表現の自由度向上と、システムカメラと『FX6』のカラーマッチング精度向上が期待できると考え、中継用に購入していた『HDC-5500V』を、実際の番組収録に持ち込んで検証を行いました。
3D LUTの活用により、アーティストの世界観をVEサイドから後押しできるようになり、カラーマッチング精度も向上しましたが、「FX6と色を完全に一致させる」には至らず、課題が残る結果となりました。そうした中で、ソニーより『HDRC-4000』新バージョンVer. 2.7に搭載されるカラーコレクション機能の案内を受けました。

HDRプロダクションコンバーターユニット
HDRC-4000

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マルチフォーマットポータブルカメラ
HDC-5500V

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『HDRC-4000』で完成した高精度カラーマッチング

古門様:その後、当社が保有しているHDRプロダクションコンバーターユニット『HDRC-4000』を最新バージョンVer. 2.7へアップデートしました。本バージョンでは、「16軸カラーマトリクス(マルチマトリクス)」によるカラーコレクション機能が追加されており、入力した映像信号の色調整を、より細かく行うことができると期待できました。

結果的に、音楽番組において『FX6』のカラーコレクターとして『HDRC-4000』を使用することで、システムカメラとの色合わせ精度とオペレーション性は大きく改善しました。

『HDRC-4000』は、MSU(マスターセットアップユニット)やRCP(リモートコントロールパネル)から制御することができ、システムカメラと同様の操作感で扱える点が大きな特長です。シーンファイルの保存・呼び出しにも対応しているので、ワンタッチで調整データをリコールできる点も非常に有効でした。このワークフローにより、『FX6』を、システムカメラと同じ感覚で扱える存在へと進化させてくれたと感じています。『HDC-5500V』での3D LUTを使った映像表現力の向上、『HDRC-4000』を活用した高精度な色再現の向上が双方実現でき、ひとつ先のステージに進めたのではないかと感じています。

「音道楽√」の収録が行われる「3スタ」サブのマシンルーム内に常設された12式の『HDRC-4000』。現在改修中の制作中継車でも、色合わせ用に『HDRC-4000』の常設化を進めている。

楽曲ごとの色調整を支えるシーンファイル運用

矢野様:音楽番組では、楽曲ごとに照明や演出が大きく異なります。リハーサル時に楽曲ごとの色調整データをシーンファイルとして作成・保存し、本番ではそれを呼び出して運用しています。『HDRC-4000』によって、システムカメラと同じ運用ができるのは大変使い勝手が良いです。

古門様:制作・演出スタッフの映像リテラシーも年々高まっており、色やトーンへの指摘・要求も厳しくなっています。『HDRC-4000』導入後は、カメラ間の色の違いに関する指摘が激減しました。「色が合わないで悩む」という課題から解放され、「映像をどう表現するか」に集中できるようになったことが、現場の大きな意識変化だと感じています。

収録時のオペレーションスタイル。右手で『Monitor & Control』のアイリススライダーに触れながら、左手でマスターセットアップユニット『MSU-1000』を介して『HDRC-4000』をコントロール。

音楽番組以外への
広がり

野球中継やバラエティー番組でも活躍

菊地様:『HDRC-4000』は、野球中継における「審判カメラ」の色合わせにも活用しています。短時間・複数台での運用が求められる中、MSUやRCPから即座に調整できる操作性は非常に有効です。RCPアサインが使えるのもいいですね。

矢野様:スタジオの再撮モニターの色合わせにも効果を発揮しています。ある番組で、再撮モニター映像から実映像へ切り替わる演出があったのですが、『HDRC-4000』を使うことで、違和感のない自然な映像表現を実現できました。今後は、トークバラエティー番組における仕込みカメラなど、さらに多様なシーンでの活用を検討しています。

一同:「色が当たり前に合う」環境が整うことで、映像表現や演出を一段上のレベルで考えられるようになると期待しています。

※本ページ内の記事・画像は2026年2月に行った取材を基に作成しています

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