斎藤宏嗣が語る ハイクオリティーサウンドシリーズ斎藤宏嗣が語る ハイクオリティーサウンドシリーズ

斎藤宏嗣
斎藤宏嗣
的確かつ洒脱なコメントで人気があるオーディオ界を代表する評論家のひとり。早くからデジタルオーディオ技術に取り組みデジタルオーディオの第一人者の呼び声が高い。料理、スキーはプロ級。アマチュア無線からリコーダー演奏まで多趣味多芸の魅力人。
PFR-V1
 ヘッドホンは大きく分けて密閉型と開放型の2種類に分類できますが、それぞれ欠点をかかえています。密閉型は長時間着けていると疲れてしまい、また耳の中がむれてしまう。僕なんかは2時間に1回ぐらいは換気するんです。そのため、よく「将来換気扇を付けたら?」っていっています(笑)。逆に開放型は空気の流通性がよく、音も開放的になるのですが、オーディオ的なバランスでは、低音が筒抜けになってしまうんです。スピーカーシステムでいうと、エンクロージャーがなくて、空間で鳴らしているスカスカとした音のような感じになる。僕はそれぞれの欠点を補ったヘッドホンができないものかと、常々思っていたんです。
 それを目指したイヤースピーカーという商品があるのですが、まだ発展途上で、音像の表現、定位性、空間の広がりなどに改良の余地がある。現状のものを分かりやすくいうと、ヘッドホンを耳から遠ざけて聴いている感じがしてしまうんです。やはり目指すところは、しっかりとしたオーディオ性とスピーカーの持っている空間性を兼ね備えたものだと。そう思っていたら、このパーソナルフィールドスピーカーというものが出てきたんです。これが本当にソニーらしい商品。見た目のインパクトもさることながら、耳の一部にヘッドホンのドライブが組み込まれた感じで、実現している内容は非常に高度なものだと思います。 パーソナルフィールドスピーカー PFR-V1
希望小売価格55,650円(税抜価格53,000円)
 音を聴いてみると、確かに“ヘッドホンのようでありながらスピーカーである”。両方の特徴を上手く伝えていると感じました。これは、ドライバーユニットの性能もさることながら、高価でなかなか使えないパーメンジュールなどの素材を使ったことが、いい結果に結びついたんだと思います。また、バスレフダクトが耳の中の音道を利用してレンジをかせいでおり、スピーカーなどで聴いているより、ビックリするぐらい音の表情が変わる。特に今までの開放型のヘッドホンよりも、低域の量感や解像度が格段に違いました。まさに発想の勝利。新境地を開拓したという感じです。
 PFR-V1が登場したことで、音の空間描写、密着していない広がりのある再生が可能になった。このことはヘッドホン全体の底上げにすごく貢献すると思います。このシリーズは、ひとつのヘッドホンのジャンルとして定着すると思うので、今後もぜひ続けていただきたいですね。
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