XDCAM
映像制作機材 "XDCAM"

中京テレビ放送株式会社 様

放送局

2017年8月掲載

中京テレビ放送株式会社様が「ささしまライブ24」地区の新社屋に移転。
最新の設備、システムで2016年11月より放送開始
充実したメディア集合体とし、柔軟なファイルベース運用を通してさらに魅力的な番組制作を実現。


北折政樹様

中京テレビ放送株式会社様は、2015年12月に竣工した新社屋で、2016年11月より放送を開始しました。
同社 技術推進局 放送技術部 副部長 北折政樹様に、新社屋建設の目的やコンセプト、設備・システム選定の決め手、運用での成果や評価を伺いました。
なお、記事は2017年4月中旬に取材した内容を、弊社にてまとめたものです。

「第二の開局」を目標に新社屋を構築へ


情報系番組やスポーツ番組で運用中のAスタジオサブ。最新鋭のマルチフォーマットスイッチャーXVS-8000(3M/E、64入力/16出力)を導入して、運用中。

名古屋市昭和区にある旧高峰町社屋は1969年の開局以来、増築を重ねながら運用してきましたが、オフィスおよび作業スペースの確保に限界がきました。そこで2011年、名古屋駅近くの「ささしまライブ24」地区の一部で、約7,120m²のスペースに新社屋を建設することにしました。これにより延床面積も旧社屋の約1.6倍となり、ゆとりあるスペース構築が可能になりました。

実際、部署間の壁をなくす大部屋化と会議室や打ち合わせスペースを充実させることができました。また、営業や事業などの部門が、これまでは本社と違う場所にありましたが、新社屋では同じ建物内に配備できるようになり、より充実したメディア集合体とすることができました。また、社屋の安全性や信頼性を高める免震装置を備えて免震性を高めるとともに、万一の際を想定して非常用発電機も設置しています。

もちろん、より魅力的な番組制作も目標の一つとなります。そこで最も重要な設備であるスタジオ/スタジオサブにソニーの最新システム、機器を採用しました。効率的な運用を目指してXDCAM Station XDS-PD2000/PD1000を40台導入し、スタジオサブでの収録、コンテンツ管理、検索・プレビュー・リトリーブや編集でも効率を向上させました。

開局から47年目にして初めての本社全面移転ということになりましたが、放送を開始してまだ5カ月あまりの段階ですが、順調に稼働、運用しています。「第二の開局」という目標もクリアできたのではないかと思っています。

サブシステムにXVS-8000/ICP-X7000を導入


A/BスタジオサブともにスイッチャーコントロールパネルにはICP-X7000を採用。有機ELを採用したソース名表示器、複数色で表示できるクロスポイントインジケーターにより確実な操作が可能。


制作系番組や生放送、音楽番組などを行っているBスタジオサブでもXVS-8000(3M/E、96入力/48出力)を導入。HD制作のみならず4K制作にも対応しています。

魅力的な番組制作で重要な役割を担うのがスタジオ/スタジオサブです。そこで、情報系番組やスポーツ番組で運用中のAスタジオサブ、制作系番組や生放送、音楽番組などを制作しているBスタジオサブのいずれにもソニーのマルチフォーマットスイッチャーXVS-8000とスイッチャーコントロールパネルICP-X7000を採用しました。

XVS-8000は、当社でも運用してきたMVS-8000などの操作性を継承しつつ、性能、機能、使い勝手が向上している点が魅力でした。従来のHD運用でも有効に活用できます。加えて導入の決め手の一つとなったのが、4Kへの拡張性です。4Kライブ制作をサポートするための豊富なリソースを搭載し、SDIに加えてネットワーク接続した各種AV機器との間で、新たにIP信号での入出力に対応したほか、ビデオクリップのデータ管理機能をさらに向上させている点も魅力でした。BスタジオサブのXVS-8000は、4Kでの運用も可能にしています。また、ICP-X7000も有機ELを採用した表示器をさらに運用しやすく、モジュールとM/E列ごとに分離できる構造により、機器配置の自由度を向上させることができました。

本格運用を開始して、トラブルの発生もなく、柔軟な運用に貢献しています。今後さらに運用を重ねることで、効率やスタッフの作業負担軽減にも寄与してくれるだろうと期待しています。

サブでの収録にXDS-PD2000を11式配備


各スタジオサブの収録、送出用にXDCAM Station XDS-PD2000を配備。Aスタジオサブに5台、Bスタジオサブに6台が運用中です。

スタジオサブでの収録には、XDS-PD2000をAスタジオサブに5台、Bスタジオサブに6台配備し、より効率的な収録を実現しました。

ファイルフォーマットには、基本的にはMPEG HD422 50Mbpsを採用していますが、今後は特に制作系などでより高画質の収録を可能にするXAVC-Intra 100Mbpsへの移行も検討していきたいと考えています。やはり高画質化は、魅力的な番組制作に不可欠な要素の一つだと思っています。その点ではXAVC 4Kフォーマットにも注目し、活用に向けた検討、トライアルも行っていきたいと思います。

BスタジオのカメラシステムにHDC-4300を6式採用

BスタジオのカメラシステムにはマルチフォーマットポータブルカメラHDC-4300を6式導入しました。B4マウントレンズ対応で、HDカメラシステムと連携して通常のHD撮影に柔軟に対応できるだけでなく、2/3型3板式4Kイメージセンサーの搭載で4Kにも対応できる点が魅力でした。4K撮影でも、フォーカシング等で苦慮することもありません。

3式をビルドアップ型で、2式をハンディ型で、1式をクレーン用で運用しており、生放送や制作系番組、音楽番組などでの効率的なHD収録、配信に貢献しています。地上波では4K放送が開始されても柔軟に対応してくれると期待しています。


Bスタジオには4K/HD対応のマルチフォーマットポータブルカメラHDC-4300を6式導入。ビルドアップ型3式、ハンディ型2式、クレーン用1式で運用中です。


ビルドアップ型のHDC-4300。CCU側はHDCU-2500/BPU-4000を利用しています。

4K/4K HDR収録でもトライアル実施


Bスタジオサブに設置されたVE卓。リモートコントロールパネルRCP-1501を6式のほか、30型4K有機ELマスターモニターBVM-X300を1台配備し、4K制作にも対応。

4Kトライアルも行っています。「ささしまライブ24」での音楽番組では4KとHDのサイマル運用を行いました。また、4K HDRにも4K S-Log3で収録することでトライアルを行っています。その画質の迫力、臨場感、クリアさは圧倒的で4K HDRの魅力を実感することができました。こうしたトライアルもソニーのサポートがあって可能になったと感謝しています。今後も4Kトライアルを続けて、HD SDRでのダウンコンバート運用なども検討することになるかもしれません。バージョンアップなどを含めて、ソニーの今後のサポート強化にも期待しています。

マイクロホンシステムにDWXシリーズを採用

魅力的な番組制作では、高音質、柔軟な運用対応など音質も重要になります。そこで、ソニーのデジタルワイヤレスシステムDWXシリーズを新規に採用しました。新周波数帯域全域対応、マイクロホン遠隔操作、周波数マネジメント、遠距離伝送などを評価した結果です。

Aスタジオではホワイトスペース帯13波、Bスタジオではホワイトスペース帯18波で運用しているほか、報道専用のCスタジオでもDWXシリーズを運用しています。

DWXシリーズの採用で、非常に高音質で効率的な音響環境を構築することができたと実感しています。

XDCAM Stationを活用してファイルベース化を推進

初めにも触れましたが、新社屋のコンセプトの一つになっているのがファイルベース化の推進です。XDS-PD2000/PD1000を活用して、制作系の収録から編集、仕上げまでのファイルベース化を促進しました。

しかし、より成果を上げるためにはファイル化の進行状況や素材の格納箇所の確認、再生制御などが柔軟にできることが求められます。そこで、XDCAM Station運用時は、生放送・収録番組に関わらず、XDCAM Stationの運用、収録、プレイリストの再生などを制御ソフトを使って制御を行っています。また、再生、収録の制御がボタン操作でできるXDS制御パネルも採用しました。スタジサブのみならず、制作、編集部門などにも設置することで、より効率的なファイルベース運用が可能になっています。


より効率的なファイルベースワークフローを実現するXDS運用制御ソフト、収録制御ソフト、プレイリスト再生制御ソフト、XDS制御パネルなどがスタジオサブや社内各部署で活用中。


MVS-8000を導入した制作編集室ではファイル化された素材やアーカイブデータを有効に活用中です。

また、スタジオでは、XDS-PD2000の内蔵SSDに映像と音声を収録した後、SxSメモリーカードにバックアップされ、メタデータとともに制作用サーバーに転送されます。これにより、収録後数分程度で編集をスタートすることができます。番組編集室でのファイルベースリニア編集にも柔軟に対応できるようになっています。さらに収録制御ソフトのバックアップ収録機能を使って効率的なバックアップ収録が可能になります。編集室ブースにはSxSメモリーカードUSBリーダーライターSBAC-US30も配備されているので、SxSメモリーカードを持ち込んでの運用にも対応できます。


制作、編集にはXDCAMドライブユニットPDW-U2やSxSメモリーカードUSBリーダーライターSBAC-US30などが活用されています。


制作編集室に設置されたXDCAM Station XDS-PD2000 。ファイル化された素材を活用することで効率的に編集作業を行っています。

「第二の開局」の成果を実感、本格運用に向けた努力も

新社屋での放送を開始してから約5カ月の段階ですが、トラブルもなく、スタッフ、オペレーターからの不満の声もありません。制作と営業とのコミュニケーションも楽に、詳細に行われるようになっており、番組制作、生放送などもよりスムーズに行えるようになっていると感じています。

スタジオ/スタジオサブの機器やシステム、DWXシリーズ、XDCAM Stationを活用したファイルベースワークフローにも不満を感じることはありません。今後の本格運用を通して、さらに効率的で柔軟な生放送、番組収録などに有効に活用していきたいと考えています。また、4K/4KHDRにも積極的に取り組んでいきたいと考えています。

総合的な評価はまだ早いかもしれませんが、開局47年目を迎えての新社屋全面移転は、「第二の開局」として成功し、新たな中京テレビ放送の魅力的な番組制作や、地域との連携・サポートの強化にも貢献してくれるのではないかと考えています。

今後もソニーには、先進的な機器、システムなど充実したラインアップと、現場の意見・要望にも柔軟に対応し、サポートしてくれることを期待しています。また、XAVC 4Kフォーマットの普及や、4Kライブ制作インフラのIP化についても普及促進を図ってほしいと思います。