XDCAM
映像制作機材 "XDCAM"

株式会社 フジテレビジョン 様

放送局

新HD報道制作システムの構築に向けて、取材・収録、伝送用途にXDCAM HD422シリーズを導入。技術的な検証を兼ねた運用を開始。

株式会社 フジテレビジョン 様

株式会社 フジテレビジョン様は、ファイルベースの新HD報道制作システムの導入計画を進行中です。その第一段階として、取材・収録、伝送用途にXDCAM HD422シリーズを採用され、技術的な検証を兼ねた運用を開始されました。

技術局 制作技術センター 報道技術部 主任 山本 智様、報道局 取材センター 取材撮影部 機材デスク 今井紀和様に、新HD報道制作システムの基本構想やXDCAM HD採用の狙い、現在の運用や評価などを伺いました。

http://www.fujitv.co.jp/

取材・収録・編集・送出・アーカイブを一貫するMXFによる「ファイル・ベースド・ワークフロー」を実現へ

当社は1997年に、報道制作にFINDS(Fuji Integrated News Directing System)という大容量のAVサーバーを使用したリニアとノンリニアのハイブリッドシステムを導入し、運用してきました。このFINDSの更新計画については、2005年頃から社内で検討を始めました。検討の中で構想の柱となったのが、「HDによるファイルベースド・ワークフロー」というコンセプトです。これは、取材・収録・編集・送出・アーカイブをMXFファイルで一貫させることで、報道制作のワークフローを大幅に改善し、よりトータルで効率的なシステムを構築しようというものです。

サーバーを使ったFINDSで、スピーディーな転送や画質の保持、効果的名番組送出支援との連携といった、ごく一部ではありますがファイル・ベースド・ワークフローの利便性を実感していました。その経験を踏まえ、報道制作に欠かせない効率性や即時性を高め、迅速、かつ安定したオンエアを実現することが目的です。

新HD報道制作システムは、ネットワーク報道制作システムやXDCAM HD422シリーズなど、ソニーの協力を得ながら完成を目指しています。その第一段階として、2008年にXDCAM HD422シリーズを導入し、取材や伝送系で技術的な検証を兼ねた運用を開始しました。

高画質で、しかもITやネットワークとの親和性も高いXDCAM HD422フォーマットを採用

コーデックやメディアの選択では、報道と技術双方で議論を重ねて、最終的にXDCAM HD422コーデックを採用することに決めました。

決め手は、一言でいうとトータルバランスに優れていたからです。高画質ながら50Mbpsとファイルサイズが比較的小さく、ネットワークやITとの親和性が高いこと。メディアであるプロフェッショナルディスクがトータル的に考えると非常にコストパフォーマンスに優れていて、しかもテープと同様のハンドリングができ、取り扱いやすいことなどを評価しました。

また、どんなシステムでも、更新の際には既存のシステムや設備と共存・協調しながら、スムーズに移行できることが理想的です。その点XDCAM HD422であれば、テープベースの既存の機器やシステムの中で運用しながら、スムーズにファイルベースのワークフローやオペレーションに移行することが可能だと判断しました。

ファイルによる取材だけでなく、ファイルによる編集までを、ソニーがきちんとサポートしていることもXDCAM HD422コーデック採用の決め手の一つです。XDCAM HD422シリーズとXPRI NSとの組み合わせならば、取材から編集までをファイルで一貫することができ、途切れることのないワークフローを実現できます。また、システムの規模が拡大するにつれ、どうしても細かいところで不具合が生じがちですが、両者を持ち合わせるソニーなら、確実に且つ迅速に対応していただけると期待しています。

また、報道制作にとってはメタデータが非常に重要です。取材からアーカイブまでをファイルベースで一貫させたうえで、効率的な素材管理やアーカイブ素材の再利用などのためには、このメタデータの活用が必要不可欠だと考えています。XDCAM HD422シリーズは、MXFファイル形式を採用しており、素材とメタデータの親和性が高く、また、その管理も容易なことから、これまでにない効果的なワークフローが実現できると確信しています。
素材とメタデータを一元的に管理・運用することで、全社的なデジタルアーカイブ構想へ繋がっていくことも考えています。

8式のPDW-740、22式のPDW-HD1500を導入 取材や伝送系で運用を開始


XDCAM HD422カムコーダーPDW-740を8式導入。本社・取材撮影部のほか、新宿支局や国会院内の映放クラブなどに配備して、運用中です。

現在、8式のXDCAM HD422カムコーダーPDW-740と、22式のXDCAM HD422レコーダーPDW-HD1500を導入し、まずはクローズドでファイルベースのメリットを生かしやすい部署に配備しています。具体的には、取材撮影部の拠点となる本社や新宿支局のみならず、国会院内の映放クラブ、中継車、その他支局などで、取材・伝送といった業務に活用しつつ、XDCAM HD422シリーズの性能・機能・使い勝手についてさまざまな実験や検証を併せて行っています。

カムコーダーのPDW-740については、カメラマンたちの評判は上々です。メディアはテープからディスクに変わりましたが、現在 主力機として使っているHDCAMカムコーダーとほぼ同様の操作性・使い勝手なので、ファイルを意識せず、テープと同じ感覚で使用できます。特にマニュアルを読まなくても使用が可能です。また、取材カメラとしての完成度が非常に高く、総重量は重くなったものの本体前後の重量バランスがとても良いので、楽になったという声も出ています。こうした点に加えて、原理的に素材の上書きがないこと、サムネイル表示で簡単に素材確認やプレビューができるといったファイル記録ならではのメリットを享受でき、信頼性や安定性といった点でも好評です。


XDCAM HD422レコーダーPDW-HD1500を22式導入。本社内、支局、中継車などに配備して伝送用途などに活用中。写真は取材撮影部プレビューシステムのPDW-HD1500。

PDW-HD1500は、現在は主に伝送やプレビュー用として活用中です。ハーフラックサイズなので、HDCAMレコーダーHDW-S280と対でラックマウントすれば、プロフェッショナルディスクとHDCAMテープとの効率的なオペレーション、運用が可能です。

プロフェッショナルディスクは、現在600枚を運用中ですが、このメディアのコストメリットには非常に大きな期待を持っています。当社ではテープは元素材としてアーカイブにて約1年間保存されます。従って、その期間は取材テープが戻ってきませんので、常に買い足していないと不足することになります。また、安定した取材を実現するためにアーカイブから戻ってきた取材テープは一定回数使用した後に廃棄処分にしています。これに対して、プロフェッショナルディスクは書き換えが1,000回以上、再生だけなら1,000,000回以上というスペックですから、メディアの使用期間を延長可能であり、結果として購入コストを抑えることが可能になります。また、メディアの再利用に関する管理も容易になります。

新HD報道制作システムでは、このディスクの管理をシステムで行えるように検討しています。システムに接続されたレコーダーに挿入するだけで、自動的にディスクに記録された素材やそのメタデータを閲覧可能にし、ディスクの使用回数や劣化状況などを一目でわかるようにしたいと考えています。そうすることで、ディスクの管理が効率的に行えるようになり、また同時に管理コストを抑えることが可能になります。結果として様々なワークフローが改善され、ファイル化によるメリットを享受できると期待しています。

プロキシAVデータやキャッシュREC、デジタルエクステンダーなどニュース取材での活躍に期待

ニュース制作で最も重要なのは、言うまでもなく、いかに必要な素材を取材し、そして迅速にオンエアできるかにあります。XDCAM HD422シリーズが持つプロキシAVデータは、高速での転送が可能であり、システム内部でうまく活用することで、より短時間でのニュース制作に繋がるのではないかと、その可能性にも期待しています。

取材の最先端となるカムコーダーについては、デジタルエクステンダー機能も有効に活用していきます。取材現場では、もっと寄りたい時がありますが、そうしたときに便利に使えると思っています。感度を落とさず、2倍のエクステンダーが可能ですから、もっと対象に寄りたいとき、あるいは現場を観察したい時などに効果的に使えます。テストしてみると、確かに解像度は若干落ちますが、それほど気になるレベルではありませんでした。スローシャッター機能と併せて、ニュース取材に便利な機能です。

キャッシュREC機能を標準搭載している点も魅力です。ディスク交換している間も、メモリーが収録してくれて、新しいディスクに遡って記録してくれるので、撮り逃しの心配がありません。HDCAMカムコーダーにも搭載されていましたが、ディスク交換中のキャッシュREC機能は報道取材に非常に便利な機能の一つです。

今後の運用の中で、ファイル記録のメリットやこうした機能を含めてXDCAM HD422オペレーションの習熟度を上げていき、ファイル・ベースド・ワークフローに馴染むことで、新HD報道制作システムにスムーズに移行できるようにしていきたいと考えています。

技術局 制作技術センター 報道技術部 主任 山本 智様

技術局 制作技術センター
報道技術部 主任
山本 智様

XDCAM HD採用の決め手は、一言でいうとトータルバランスに優れたフォーマットであるということです。圧縮方式にMPEG-2を採用することで、高画質でありながらファイルサイズは50Mbpsと比較的取り扱いやすいこと。カムコーダーやレコーダーがテープのオペレーションや操作性を継承しており、テープベースからファイルベースに移行しやすいこと。さらに、プロフェッショナルディスクの優れたコストパフォーマンスをあげることもできます。当社が考えるファイル・ベースド・ワークフローに適したフォーマットだと思います。

報道局 取材センター 取材撮影部 機材デスク 今井紀和様

報道局 取材センター
取材撮影部 機材デスク
今井紀和様

PDW-740は、まだテスト運用の段階ですが、カメラマンの評判は上々です。メディアはテープからディスクに変わりますが、操作性や使い勝手は従来使っているHDCAMカムコーダーとほとんど変わらず、違和感やストレスを感じることなく運用できる点が一番の魅力です。しかも、カメラバランスの良さなど、取材カメラとしての完成度も高くなっています。その上で、上書きがないことやプレビューが簡単であるなど、ファイル記録ならではのメリットの数々を享受できます。