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音楽CDと同等の高音質を実現したリニアPCM対応が新しい録音の世界を広げる

ICレコーダーならではのマイクの作り方について今回デザイン的に厳しかったところは・・・

橋本: ICレコーダーという製品は、基本的には小型で携帯性を重視したデザインが多いと思うんですね。ただし製品サイズが小さくなってしまうと、音響的には(左右のマイクが近いため)あまりステレオ感が出なくなったりしますので、指向性が悪くならないようにしてステレオ感を出す努力はしています。
今回SXシリーズで採用した単一指向性マイクというのはマイク正面からの音を集中的に拾う特性があるため、左右のマイク位置が近くてもステレオ感が出やすいというメリットがあります。しかし実際に製品として作り込む上での難しさとしては、マイクユニットの外側を囲ってしまうとだんだん無指向性に近くなり、本来の性能が出にくくなってしまうんです。単一指向性マイクというのは前だけではなくて後ろ側に空気が入らないと性能が出ないんです。結果、製品としてはステレオ感が出にくくなってしまいます。今回はマイクの性能を出すために、マイクのそばに二重にスリットが開いてるんです。もともとのデザインでは一重にしかスリットが開いてなかったんですが、デザイナーに「たくさんスリットを開けないと性能出ませんよ」と無理を言って、大きくしてもらったんです。ホントは嫌がってたんじゃないかと思うんですけど(笑

宮崎: まあ、意味があることだとはわかっていましたからね、それに対してデザインで追えないと、やはりいいものはできないかなというのはありますから頑張りました。
逆にそれがよかった面もあるんですけどね。
デザインだけでものが作れるわけではないし、設計だけでもモノは作れない。それが上手く融合したカタチに持っていけたかなという風には考えています。
今回デザインとして難しかったのは当然マイクの周りです。本当にコンマ1ミリとか細かい数字で追い込む作業を何回も繰り返してやってましたね。
モックも何個も作りました。当然そのカタチだけを作るのは簡単なのですが、その先の生産に向けて、型をとるための金型とかいろいろ発生してくるので、それの構造にあわせるようなカタチに持っていかないといけないなど色々と考慮しなければならないことがあります。そういうことを踏まえて最終的なものにしていくために、原型になるデザインから、そのイメージを崩さずいかに綺麗にカタチを作っていくかとか、そういうところでは細かい作業が入ってきますので、どうまとめていくのかというのは苦労したところですね。

橋本: 性能を出すと言っても、作ってみなければ性能をすべてシュミレーションできるわけではないので、実際にデザインしていただいたものを元に試作して、特性を計ってダメなところについて「性能が出ないのでスリットを大きくしてください」というフィードバックをかけるやり取りを何段階か繰り返させてもらったので、最終的にデザインが決まるまでにかなり時間がかかりました。とくにこの左右のマイクのデザインはぎりぎりまでデザイナーには苦労してもらいました。

宮崎: マイクのデザインだけでも1ヶ月くらいかかりましたね。

橋本: デザインをもらってから、実際にモノを作らなければ性能のフィードバックはできないので、ちょっと時間がかかるわけです。実際に録音して測定してみて、やはりこれでは性能が出ませんといったことをフィードバックするわけです。
最終的にはデザイナーも気に入ってくれたみたいですけど。

宮崎: 難しいところではあるんですが、ある程度デザインの指向としては、できるだけシンプルにまとめたいというのはあるのですが、そこに今回は上手く機能が表現できたのではないかと思います。スリットが増えたことで、高性能感といったものの表現が完成されたというか。
基本的にICレコーダーのユーザーというのは、ビジネスユースとか学習とかですので、そういうシチュエーションの中で「強さ」という要素をどこまで出していくか。基本はビジネスで、その延長線上で趣味でいい音を録るとかですね、そう考えたときにあまり極端に強いイメージを出してもユーザーには合わなくなるだろうし。