小寺(以下 K) 今回のGUIには、“PSX”などに搭載されているEE/GS(エモーションエンジン/グラフィックス・シンセサイザ)が使われているということですが。 坂口 そうなんです。“PSX“でも採用していますが、この描画エンジンでメディアを一元的に扱っていく、快適な操作性を実現しています。今までにない快適な動作がお楽しみいただけるかと思います。 山田 このチップでは、毎秒450フレームという高速描画をおこなっています。例えばチャンネルを縦にスクロールしても、一つ一つの数字を追いかけて読めるでしょう? ここが描画性能の差で、ちゃんとフレーム処理しているという証拠なんです。 K このインターフェースがテレビに搭載されることで、操作性はどう変わるのでしょう? 山田 一番のポイントは、チャンネルを一覧で探したあとに選択できるというところです。今までのテレビでのチャンネル変更は、探している間も画面が切り替わってしまいますよね。このGUIであれば、どんな番組があるのかを、すばやく視覚的に確認できるわけです。見るものを決めたあとで、チャンネルが切り替わり、番組名も表示しますので、もう新聞のテレビ欄を見なくてもよいテレビに仕上がったと思っています。 坂口 今回の<ベガ>は「フルダブルチューナー機能」搭載なので、番組を画面に表示しているチューナーとは別のチューナーを使って、地上放送波やデジタル衛星波からいつでも番組表データをダウンロードすることができます。またシングルチューナーのテレビでは、画面に出ているものを録画するしかありませんでしたが、この機能によって裏で番組を録画しながら、表では自由にチャンネルを変えることもできます。 シンプルと高機能の共存
K リモコンのデザインが携帯電話みたいで、かなりユニークですね。 山田 ここに至るまでは、リバーシブルにしようとか、いろいろな試行錯誤がありました。今回はGUIにクロスメディアバーを採用するので、ジョイスティック操作がメインになる。じゃあテンキーよりこちらを優先しよう、そこをシンプルにやってみたらどうだ、と考えた結果、最終的に携帯電話のような「折りたたみ」にしました。「折りたたみ」と決めた時点で、デザインセンターと相談して携帯電話をデザインしていたデザイナーにお願いしました。 K そうですよね、デジタル放送のようにチャンネルが3ケタになってしまうと、もう放送局=数字ではなくなってしまう。 山田 主な操作とテンキーとの関係を切り離して考えるようにした時点で、あらたな概念作りが必要になると思っていました。極端に言うと、「XMB」ならテンキーがなくても操作ができるわけです。これがGUI連動の一番大きな付加価値ですね。今までのリモコンでは、文字が見やすいか、ボタンが押しやすいかなど、多くの課題を抱えていましたが、これなら手元を見なくても操作ができます。 K その代わりリモコンを開けば、ボタンがずらりと。 坂口 閉じた時にはシンプルにテレビを操作でき、開けばテレビ以外にも別の機器が操作できる多機能リモコンになります。今までのリモコンは映像の早送りなど、走行系のボタンだけが他機器の操作に対応していましたが、このリモコンは、テンキーなど内部にある全部のボタンで他機器を操作できます。もちろんソニー製品だけでなく、他メーカーのレコーダーなどほとんどの機種に対応し、5種類まで登録が可能です。 K しかもこのリモコン、ずいぶん高級感がありますね。 坂口 ユーザーがもっとも触れる部分だからこそ妥協は許されません。操作性は、ユーザーインターフェースとリモコンでワンパッケージなんです。リモコンは操作性が一番重要です。こういった高額商品は長く使っていただくためにも、インターフェースにこだわるべきなんです。 山田 ここまでの商品ができたのは、リモコンを製造する技術の進化も貢献しています。折りたたみ機構、ジョイスティックの機構など、デバイスの進化も必要でした。今回は携帯電話やゲーム機といった他の事業部との技術やノウハウの共有ができた。ユーザーインターフェース自体の技術の高まりだけでは、ここまでの操作性は実現できなかったでしょう。
※“XMB”および、「クロスメディアバー」は、ソニー株式会社および株式会社ソニー・コンピュータエンタテインメントの商標です。
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ソニー株式会社 ホームエレクトロニクス ネットワークカンパニー テレビ事業本部 商品企画部 FTV商品企画課 統括課長 山田 倫靖 ソニー株式会社 ホームエレクトロニクス ネットワークカンパニー テレビ事業本部 商品企画部 FTV商品企画課 係長 坂口 淳 |
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聞き手 映像作家/映像アナリスト 小寺信良 バラエティ、報道、コマーシャルと活動拠点を変え、芸術面と技術面の両方で10数年のキャリアを持つ、映像のプロである。その知識と経験を生かした内容の濃さで、映像関連のライターとして圧倒的な支持を得ている。WEBでは、AV Watch「小寺信良の週刊Electric Zooma!」、ITmedia「アンカーデスク」でコラムニストとして活躍中。 > |
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