写真家の想いと作品

貫井勇志/RX1Rでなくてはできない 作品づくりの世界がある

Profile: 1964年7月2日東京生まれ。映像作家として撮影作品「平成職人の挑戦」、監督作品「SMALL WORLD」、「血族」、などがある。 写真家としては映像専門誌「DVJ」誌の表紙を担当し、2008年7月からはソニーのコーポレートサイト上の企画である"α" CLOCKプロジェクトに専任カメラマンとして参加。世界遺産の撮影を開始する。

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4Kから8K、大画面ディスプレイ時代へ

ついさっきまでけっこうな雨が降っていた忍野八海です。この時はもう雨は止んでいましたが、頭上に延びた木の枝を伝わって水滴が水面に落ちるのをじっと待って撮りました。周囲に観光客の方がいたので三脚は使っていません。暗いところが沈み過ぎたらおどろおどろしい写真になってしまいがちですが、ダイナミックレンジが広いおかげで黒がつぶれずにとても爽やかです。また、全体にシャープなのに柔らかい感じがある。つまり階調が豊かなのでギリギリした感じがないんです。本当に水がそこにあるかのような質感が出ていて、現像しながら、この水を触りたいと何度も手を伸ばしそうになりました。ここまでの解像感のカメラがあると、これから4K、8Kという大画面のディスプレイが大きな意味を持ってくると思います。ディスプレイであればフィルム写真時代に印画紙にプリントすると大変な費用がかかった大きさまで簡単に拡大できるので、写真の展示に向いていることはもちろん、今まで見えなかったような小さなモノも見えてくることで、撮る側の意識も大きく変わってくるに違いありません。

新しい動画表現の可能性が生まれる

35mmなのに望遠で撮ったようにも見えます。絞りはF9.0まで絞っています。右端の木の何本か、手前から重なり合って見える木の、奥と手前の立体感の表現がすごい。しかも画面の端ですから、これまでのレンズだと見なかったことにしておいたようなエリアです(笑)。これもほとんど黒つぶれがありません。僕も、つぶれそうだったりとびそうだったりするものはあらかじめフレームに入れるのをあきらめてしまおうと思うこともあるのですが、このカメラだと「あの辺りなら大丈夫」というように思える。カメラひとつで自分のアングルの自由度が広がることを実感します。僕は動画作品も制作しますが、いま、RX1Rで撮影した写真をつなげて、タイムラプス映像を作ったらどうなるんだろうと考えています。しかも木の裏に回り込むなど、移動撮影をしながら撮った静止画をつないでいく。一枚の静止画でもこれだけの立体感が出ているわけですから、あたかもその場所にいるような、タイムラプスができるのではないかとイメージしています。

単なる記録が「作品」に変わる

カメラを三脚につけて、こういう光になるのを待って撮りました。つまりピントが合った手前には雲を通ったやわらかい光が当たり、奥は少しぼけてかすかにモヤがかかるというレイヤーを作ることで、奥行き感、空気感をつくることができるのを待っていたんです。1〜2時間は待ちましたね。F11まで絞りながら、一番手前の根の当たりにピントを持ってきて、後ろにピントが行かないようにしています。パンフォーカスでもなく、ぼけでもない、現代日本画のような、なんだろう? という感じを出せないかなと。そんなことにチャレンジするというのも、RX1Rを手にしたことで初めて浮かんだ発想です。このカメラは、肉眼で気づかないような微細なものを見ることができるという解像感の世界と、階調の豊かさのような芸術寄りの要素のバランスが面白い。単なる標本採集もこうしたらいい感じになるかな、というようにプラスアルファしていける楽しさがあります。ただの記録も作品に見せてしまう。だからカメラや写真好きの人だけでなく、初心者の人にこそぜひ使って欲しいと思うんです。

RX1Rを持つことは 光りをデザインすること。 写真に対する 意識まで変えてくれる

RX1Rを持つということは、写真、つまり光を グラフィカルにデザインすることです。 フォーカスをどう合わせるか。どこを明るくするか。 解像感の高さ、ダイナミックレンジの広さ階調の豊かさにより、自分でコントロールできる幅が 格段に広がります。レンズが交換できないぶん 写真のセンスが大いに鍛えられます。 RX1Rじゃなければできない作品作りがある。 写真に対する意識まで変えてくれるカメラです。

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