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α77/α65 開発者インタビュー [3]XGA OLED Tru-Finder(トゥルーファインダー)編 ファインダー内で完結する撮影 新しい画づくりの世界を実現

  • 1.画質編
  • 2.スピード/トランスルーセントミラー・テクノロジー編
  • 3.XGA OLED Tru-Finder(トゥルーファインダー)編
  • 4.デザイン/操作性編
  • 5.レンズ・アクセサリー編
高速レスポンスを実便するトランスルーセントミラー・テクノロジーを支えているのは、高性能な電子ビューファインダー。“α77”“α65”には、世界初(*)となる高画質・高コントラストなXGA有機ELファインダーが採用された。開発に関わったエンジニアに、このファインダーのその魅力や、開発の経緯を聞いてみた。
*レンズ交換式デジタルカメラにおいて。2011年8月広報発表時点、ソニー調べ
佐藤 充 開発プロジェクトリーダー/内田 雅貴 商品企画担当/辻村 一郎 EVF光学系担当/野澤 和浩 EVFデバイス(有機EL)担当/村上 春佳 EVF UI開発担当

中級機としてあるべき電子ビューファインダーを目指し XGAサイズの解像度、有機ELの採用へ

世界初(*)のXGA有機ELファインダー「XGA OLED Tru-Finder(トゥルーファインダー)」。この高解像度・高コントラストのファインダーが“α77”“α65”に搭載されるに至った経緯は、どのようなものだったのだろうか。

商品企画担当 内田 雅貴

開発プロジェクトリーダー 佐藤 充

EVFデバイス(有機EL)担当 野澤 和浩

内田(商品企画担当)

 “α77”と“α65”を企画するにあたって、どのようなカメラであるべきか、あらゆる選択肢を検討した上で、考えられる最適なシステムを選択していきました。いわゆる「中級機」として“α700”の後継機に位置づけられる“α77”に電子ビューファインダー(以下EVF)を搭載することに関してもさまざまな議論がありましたが、撮影結果を撮影前後にファインダーから目を離さずに確認できることや、グリッド線、水準器、ピントの拡大確認など多様な撮影機能をファインダー内で実現できるため、高い撮影機能を望まれる中級機ユーザーだからこそ喜んで実感していただけるという確信がありました。

佐藤(開発プロジェクトリーダー)

 実は、“α55“と“α33“の開発時、トランスルーセントミラー・テクノロジーを初めて搭載するにあたって、この新しいシステムとの相性がよく、ユーザーベネフィットのある新しい撮影スタイルを提供したいと考え、EVFを採用しました。今回の中級機の“α77”“α65”にもEVFを導入するのなら、既存のOVFユーザーにもしっかり使ってもらえるように、OVFに匹敵するファインダーの開発が必要ということが、今回のEVF開発の、スタート地点だったと思います。  従来からのOVFユーザーの皆さんは、ファインダーの「見え」に対する評価がどうしても厳しくなります。その方々に使っていただくためには、どこまでの解像度やコントラストが必要か。色はどうすべきか。そうしたさまざまな目標値を設定して、それに対し電子ビューファインダーでできることは何かということを検討しました。“α55”では、それまでなかったSVGAという高解像度のデバイスを搭載して高い評価をいただきましたが、今回は、中級機クラスの機種のユーザーの皆さまにも「これきれいだね」と感じていただくために、解像度は技術トレンドの中で最高となるXGAサイズに設定し、コントラストやレスポンスに格段に優れたデバイスである有機ELを選択しました。

野澤(EVFデバイス(有機EL)担当)

 有機ELのファインダーへの搭載は“α77”“α65”が初めてです。このデバイスの開発に着手したのは2年ほど前からですが、以前より商品設計から高精細なEVFのリクエストがきていました。この時期に開発元から有機ELとEVFの組み合わせの提案がありました。コントラストの高さや発色の良さなど、従来のものよりさらに性能がいいことが確認されて、それなら開発しましょう、となったわけです。

* レンズ交換式デジタルカメラにおいて。2011年8月広報発表時点、ソニー調べ

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繰り返された試作とフィードバック 自然で美しいファインダーが完成

有機ELデバイスのカメラのファインダーへの搭載という前例のない開発事業は、当初からスムーズに結果が出たものではなかった。試作、フィードバック、システムの見直し、というサイクルが幾重にも繰り返され、徐々にその真価が形になってくる。

メカユニット担当 岸田 武夫

辻村(EVF光学系担当)

 光学的には、今までOVFユーザーだった方々が使ったときの違和感をいかに最小にするか、という点に注力しました。例えばそのひとつに、小さな有機ELの部品を使って画面をいかに大きく見せるかという課題があります。これについては、視野角約33.3°と“α900”に匹敵する見やすさに仕上げることができました。
 OVFにはOVFに適した、EVFにはEVFに適した性能のバランスの取り方というものがあります。それは理論的にわかってはいても、色んなことから影響を受ける人間の感覚、というか心理的なものにも左右される部分が多く、実際に開発を始めるとまた違った結果になることが多いのです。デバイスのタイプが異なる“α55”とも違います。試作してその都度フィードバックをかけながら設計するということに、難しさがありました。

野澤

 電気系でもいろいろありますが、大きなところでいうと有機ELを通電した際の輝度劣化を抑えると共に画品位を維持するということでした。商品設計と一緒になって、どの程度までだったら使いこなせるものになるか、という許容範囲を決めた上で、それに満たない部分はシステム上で最適化を行ったり補正回路を設けたりしています。“α77”“α65”は大幅な高精細を実現していることで消費電力も増えていますから、ファインダーだけでなく、カメラ全体で消費電力を見直したりということも行っています。

 ただ、1年半ぐらい前に、このファインダーのサンプルが出来上がったときはびっくりしましたね・・・色々な問題がありすぎて、どうやって商品設計に謝ろうかなあと(笑)。そこから改善していったんです。

辻村

 わたしも最初見たときは「なんだこりゃあ」と思いました(笑)。光学系のほうも部品の精度がまだぜんぜん出ていない状態だったので、見え方がめちゃくちゃで、ショックを受けたというのが実際正直なところです。ただ有機ELもレンズも、「ここをこう直せばすごく良くなるな」という、ポテンシャルの高さをその時点でも確かに感じました。それを信じて直していけばいい、というのがありましたね。将来的にはまだまだ進化の余地はありますが、今の時点での最高のレベルに達したと思っています。

村上(EVF UI開発担当)

 ファインダー内のUIは、これまでのαユーザーの皆さまからのご意見も踏まえながら開発をスタートさせています。このUI開発においては、相反する2つの思いがありました。ひとつは、ファインダーで撮影する時に、画に集中できるように、煩わしい表示は少なくしたいということ。もうひとつは、せっかくEVFになるのだったら、ファインダー内に多くの設定情報を表示したいということです。いろいろ情報は出したいけれど、画の邪魔をしたくない。この問題は、今回搭載されたXGA解像度の有機ELのおかげでかなりの部分が解決されました。XGAで解像度が高いので、文字やアイコンを小さくしてもしっかり判別できます。この解像度を利用して、画の外に表示を並べる形にしたのが一番大きな点です。さらに画に集中するという意味では、長時間覗いている人にとっては、だんだんその情報も邪魔になってきます。そのため、カメラを操作していない状態が続くと、アイコンを消すようにしています。

内田

 私はこのファインダーを見て、とても自然に画づくりができているなという印象を持ちました。電子ファインダーであるにもかかわらずOVFを覗いてるかのような、とても自然な、、目に負担のないファインダーに仕上がっていました。これはデバイスである有機ELのポテンシャルの高さゆえに、無理することなく表示ができているからそういった自然なビューができているわけです。奇をてらった派手さはないかもしれませんが、とても自然で、ファインダーとして本来あるべき姿が実現できていることが重要だと感じました。

村上

 アイコンを担当していた私からすると、今回のEVFはこれだけアイコンを小さくしてもしっかり見えるXGAの解像度がすごい、の一言です。見え方はとてもきれいですし、普通に使っていても目が全然疲れない。これならずっと覗いてられるなあと、単純に感激してしまいました。

辻村

 私は“α900”のOVFでも設計に携わったのですが、設計側としては、EVF、OVFという区別はあまり重要ではないんじゃないかな、と思っています。ファインダーという一つの機能があって、そこで要するに壁を感じずに、違和感なくそのまま使えるということが重要なのであって、その点で、本当に違和感の少ない、完成度の高いものに仕上がったと思います。

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高解像度だからできる様々な新機能 スマートテレコンバーター、ピーキング etc.

ファインダーから目を離さずに、自然に撮影ができるというメリットの他に、“α77”と“α65”には、高解像度のEVFだからできるさまざまな機能が盛り込まれた。

内田

 ファインダーの本来の使命は、被写体をしっかりとらえることです。そのときに被写体をどのような状況でも確認できることにプライオリティを置いています。その基本をおさえた上で、ホワイトバランスなどの設定も、覗きながら確認しながらできるようになっています。このように、、ファインダーから目を離さずに、作画の状況を確認しながら、スムーズに撮影することが可能です。

佐藤

 EVFの利点をとことん追求した結果、スマートテレコンバーターという、原理的に画質劣化の無い拡大機能も盛り込みました。ファインダーを覗きながら実際に拡大ズームされた画像を確認してシャッターを切る。これはOVFではできません。記録画像サイズは小さくなりますが、イメージセンサーが有効約2430万画素と超高画素なのでこの機能も更に活きてきます。本当にユーザーにベネフィットがある技術が達成できたと思っています。

村上

 そうですね、EVFの一番のメリットが、今までライブビューだからできていた機能をEVFにも展開できるということですので、その中の代表例がスマートテレコンバーターとピント拡大表示です。ピント拡大表示や、ピーキングの機能は、マニュアルフォーカス(以下MF)時のピント合わせを容易にします。また撮影後にも再生した画像を拡大してピント確認ができます。中級機ユーザーの皆さまはMFでのピント合わせをされることも多いので、そういう意味ではピント拡大表示とピーキングはEVFだからこそできるメリットとして活用していただけます。

 他にも、ホワイトバランスや露出補正などの設定を忠実に反映させるだけではなく、OVFのようにそのままの明るさで見られるモードもあります。これは、いままでOVFを使っていたお客様にも使いやすいようにという配慮からです。

 動画も、EVFで覗きながら撮影できるのは大きな特長です。液晶モニターでは外光が反射して見えにくくなることがどうしてもありますし、カメラをしっかりホールディングするためにファインダーを使いたい、ということもあります。静止画を撮影しながら、ここは動画で残したいなというときに動画撮影するという一連の動作を、ファインダーを覗いたままできるというのは大きなメリットです。また、動画撮影時にシャッタースピードを変えるようなとき、この有機ELの高画質なEVFなら動画の「残像感」まで確認しながら撮影できます。これはOVFではできないことですね。

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画づくりに凝るユーザーへ。 レンズの味まで見えるファインダー

完成し“α77”“α65”に搭載された「XGA OLED Tru-Finder(トゥルーファインダー)」。開発に携わった担当者の立場から、ユーザーの皆さまに向けたメッセージを一言づつ話してもらった。

佐藤

 解像感やコントラストが非常に優れているので、いままでEVFだからといって抵抗感を持たれていたOVFユーザーの皆様に、ぜひいちど覗いていただいて、ご自分の目で確認していただきたいと願っています。そうすればわかっていただけると確信できる、自信作です。

村上

 ファインダー内でなんでもできます。構図や色など、しっかり集中しながら調整して、いままでにない新しい写真を撮っていただきたいと思っています。

野澤

 このEVFには0.5型の有機ELが使われています。この小型で高精細なデバイスは、ソニーの有機EL技術の結晶であることはもちろん、イメージャーで使われているカラーフィルター技術や、SXRDのプロジェクターに使われているアッセンブリ技術など、ソニーがこれまで培ってきたさまざまな技術が事業部をまたいで結集されています。EVFはOVFとは違うとおっしゃっている方々にも、このファインダーをぜひ実感してもらいたいですね。

辻村

 このファインダーは、OVFとEVFという垣根や固定概念なしで使っていただきたいですね。さらにこのファインダーなら、ぼけ味などのレンズの特性も精緻に、ありのまま再現します。これまでOVFに愛着を持ってこられた方こそ、そういったものがよりはっきりと確認できることに、喜びを見いだしていただけるものだと確信しています。

内田

 画づくりに凝る上位機種のユーザーになるほど、より被写体に集中をしたいし、その集中を途切れさせたくない。それが一番できるカメラです。このファインダーには、OVFカメラにはなかったベネフィットがあります。撮影するという行為全体にわたって、設定、画づくり、撮影、確認というプロセス全部をファインダー内で完結できるということをぜひ実感していただきたいと思います。

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