平野紗季子(フードブロガー)インタビュー

自分の中の真実を写すカメラ

ブロガーとして、日々「食」の楽しみを写真と文章で伝えている平野紗季子。
「料理は写真で振り返ると、その時の“味”や“匂い”や“音”を思い出せるんです」と語る彼女は、小学生から食日記をつけ続ける生粋のごはん狂で、料理の写真をしっかりと残すためにカメラは常に持ち歩いているという。
カメラとは切っても切り離せないライフスタイルを送る彼女が語る、カメラとクリエイティビティの関係。

location: HAKUSUIDO

PROFILE

平野紗季子

平野紗季子/SAKIKO HIRANO
美食ブロガー。1991年生まれ。小学生から食日記をつけ続ける生粋のごはん狂。
SAKIKO HIRANO -BLOG-|.fatale|fatale.honeyee.com

?平野さんは.fataleでブログを書かれていますが反響はどうですか。

平野:友達からは『美味しいお店教えて』ってよく言われます(笑)。もちろんブログの感想も言ってくれますが、今は『クリスマスはどこのレストラン行ったら良い?』って聞かれることが多いですね(笑)。

?写真は普段からよく撮られるのですか?

平野:撮ってます。例えば、画家は死んでも絵は残るし、バンドが解散してもCDがありますが、レストランは閉店したらその味には二度と出会えないし、料理は消えものなので、せめてその瞬間の姿を残しておきたい、と執着してしまいます。だから当然よりよい形で残したいと思うので、携帯カメラじゃなくてレンズのついているカメラで撮影するようにしています。

ーブログを見ていると印象的な写真が多いのですが、シャッターを押したくなる瞬間を教えて下さい。

平野:歩いていて『ハッ』とする瞬間に出会うと、写真を撮りたくなります。このNEX-5Rは、これまで以上に私を積極的に外へと連れ出してくれる良い相棒のような存在ですね。カタチやデザインも好きだし、私が持っても重くない。大きい一眼だと小さなレストランでは目立ってしまいますが、ちょうどいいサイズで私の行くお店でもよくとけ込んでくれるんです。

ー具体的にはどういった写真を撮ることが好きなんでしょうか?

平野:料理の写真だったら、食べかけの写真を撮るのも好きです。グーグルの画像検索で“料理”というワードを検索すると、手の着いていない綺麗な写真が沢山出てくるのですが、それだと物足りなくて(笑)。料理は完璧な姿で佇んでいても価値がなくて、食べた時にこそ初めて意味が出るものなので、食べかけの写真の方が見る人がその料理について想像しやすくなるし、人の痕跡が残ると感情も抱きやすいと思います。

平野:カメラはコミュニケーションの良いきっかけにもなりますよね。入り難い場所でもカメラを持って『写真撮らせてもらっていいですか』と言うと、買い物目的じゃなくても入れてくれたり。カメラを通して街と繋がっていける気がします。カメラを持っていたら自然と良い写真を撮りたいと思うので、普段は行かないような高架下の飲食店街にも入る勇気が沸きます(笑)。

NEX-5R撮影写真1/60 秒 F4.0 -0.3 EV ISO500 ミニチュア

平野:この写真は、蛍光色の値札とカニ玉のでろっとした赤いソースを撮りたいと思ったのですが、周りの色が激しかったのでミニチュアのピクチャーエフェクトをかけて、撮りたいカニ玉を綺麗に表現できるようにしました。

NEX-5R撮影写真1/160 秒 F5.0 +0.0 EV ISO100

ーこういうエフェクトによって表現が広がりそうですか?

平野:食堂のライトって蛍光灯が多く、必ずしも美味しそうに撮れないんです。これまでは撮った写真をパソコンに取り込んで加工していましたが、NEX-5Rならカメラ上で直接できるから便利。ブログは他人に見せたいというよりも自分の言葉と写真で記憶を綺麗に残したいという欲求があるので、ピクチャーエフェクトやWi-Fi機能によって作業が簡単になると更新の頻度が上がって、ちゃんと残すきっかけにもなると思います。

ーデジタルカメラは瞬間やその場の想いを撮るという事に適しているんでしょうね。イメージをデジタルで残すという事と食べ物を記録するという事の相性は良いんじゃないでしょうか?

平野:そうですね。写真で振り返るとその時の“味”や“匂い”や“音”を思い出せるんですよ。文字だけでは足りないので、写真ってありがたいなと思います。特にNEX-5Rなら撮った写真を見ると料理を食べたときの感情をちゃんと思い出せる程美しく鮮明に撮れるし、自分が思った通りに伝えられる。写真は記憶とつなげてくれる役割もあるから、良い写真が撮れると良い思い出ばかりになっちゃう(笑)。

ー平野さんにっとってカメラとは何でしょうか?

平野:よりよい記憶を作るものですかね。人間って見たものを忘れちゃうから、写真を見返した時に思い出を塗り替えられることってあると思います。特に食は忘れがちですから。料理って数十分の間ですごく変化するじゃないですか。例えば、卵を割ると中から半熟の黄身が出てくるシーンや炭酸の泡とか、一瞬一瞬で同じ景色がないのが食事だから、いい思い出と感じた時にはすぐにシャッターを切れるのが私なりのいいカメラです。写真は『真実を写す』と書きますが、私は頭の中できらびやかな世界を想像しがちなのですが、NEX-5Rだったらその世界を表現できるんです。だから主観の中の真実を撮影できるカメラだと実感しています。

―最後に、平野さんの今後の夢を教えて下さい。

平野:夢は都市の食文化をより良い方向にもっていく、その跡継ぎができる人間になることです。具体的には、レストランに対してみんなが積極的にお金を使うようになるということですね。例えば、高級レストランには、美味しさだけでなく、盛りつけの美しさや料理にナイフを入れる時の感触など、あらゆる感性に訴えるものがあるんです。若い世代がレストランって素敵だと思ってくれたらレストラン文化が活性化するだろうし、そういう未来になったら良いと思うので、私は写真と文章でそれを伝えていきたいです。私は昔のレストランの写真を見ていいなと思うことが多いのですが、理想としては100年後の人が私の写真を見て、同じようにいいなと思ってもらえるような写真を残していきたいです。その他にも、30歳位になったら自分のお店を持ちたいという夢もあるし、とらやとコラボしたいという野望もあります(笑)。

平野紗季子が使う、NEX-5R

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