Vol.2 とらえたのは一眼の未来

01 一眼カメラの再定義

プロダクトデザイン担当 曽我部 卓

「ソニーの新しい一眼カメラの顔となるものを目指して生まれたのが『α7』です」
デザイナーの曽我部はこう切り出した。これまでのEマウントカメラの後継機でも、Aマウントカメラの小型版でもない、これからの一眼カメラとはどうあるべきか。それを再定義することがデザインの使命だったという。
「一眼カメラの本質を突き詰めるために、一度カメラの原点に立ち返る必要がありました」
しかし、曽我部の語るカメラの原点とは、単なる懐古主義ではない。

「一眼カメラは、交換レンズ無しでは語れません。あらゆるレンズを想定してデザインすることが大命題でした」この言葉を最も象徴しているのが、ファインダー・ユニットだ。
「レンズの延長線上に配置したこのユニットは、レンズとの一体感をなによりも重視し、かつ『α7』のシンボルにもなり得るものをデザインしています」大胆にカットされたサーフェイスもレンズとの親和性を考え、美しくバランスのとれた傾斜角度を計算しているという。そうして生まれる端正な平面からは、他のカメラにはない独特の硬質感が漂う。
「このファインダーの質感やフォルムを見れば、『α7』であることが一目で分かります」

クラシカルにも見える『α7』の造形について曽我部はこう語る。
「確かに一見オーソドックスな形に見えるかもしれませんが、手にとりその質感を直に感じてもらえばこれまでのカメラとは全く異なるものだと気づくはずです。なによりも、一眼カメラとしての必然性を突き詰めたからこそ、飽きのこない普遍的な造形を表現できたと思います」
一眼カメラの本質を見据えながらも、ソニーらしいアプローチで再構築することで、長く使うほどに愛着のわくデザインに仕上げたという『α7』。それは、これからの一眼のスタンダードとなる形をとらえ、再定義したカメラといえるかもしれない。

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03 もう一つの完成形

「35mmのFEレンズを付けた姿はまるでスナップカメラ。でも望遠レンズに換えた途端に重厚な一眼らしい雰囲気を醸し出す。どんなレンズが来てもさまになるのが『α7』です」
やはりカメラを構えたときに格好良く見えることも大事だと曽我部はいう。しかし本当に『α7』がすごいのは、どんなレンズが来ても小さなグリップでしっかりホールドできてしまうことだ。
「本体のグリップは、様々なレンズの装着を想定したうえで最適な形状を導き出しています。ですからレンズを換えても、カメラを構えた瞬間しっくりくるはずです」
これは『α7』がAマウントレンズ群を含むシステムの母艦となることを見据えている証でもある。

さらに『α7』専用の縦位置グリップでも、本体のグリップの設計思想を踏襲しているという。
「縦位置グリップは、基本的に本体と同じ操作感になるようにつくられています。また、レリーズが上部にあるのは、マウントアダプターの装着を前提にデザインしているからです」
実際にマウントアダプターを装着してみると、確かにグリップスペースにゆとりがあり、アダプターを装着したままでも一切邪魔にならずにしっかりホールドできる。
「ある意味この縦位置グリップは、マウントアダプターとAマウントレンズを同時に装着して初めて、想定した性能のすべてを引き出すことができる」
と曽我部は明かす。その姿に『α7』のもう一つの完成形を見た。コンパクトでありながら『α7』はどのカメラよりも拡張性に優れているといえる。

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02 コンマ1ミリの攻防

メカ設計担当 石川 大輔

「『α7』のデザインは小ささと使いやすさの絶妙なバランスの上に成り立っています」
その最たるものがレリーズとグリップの関係だと曽我部は語る。
「通常であればレリーズをグリップ上に配置するのが一般的ですが、そうするとグリップがボディと比べて必要以上に大きくなってしまいます。『α7』は小型という特長を最大限に生かすためにも、グリップは最小に抑えるべきだと考えました」
グリップの小型化とレリーズの使いやすさ、その最適なバランスを見つけるために、そこからはデザイナーとメカ設計で何度も議論を重ねては試行錯誤する日々だったという。


「軍艦部前方に配置したレリーズボタンの操作性を高めるため、そこを起点に全ダイヤル、操作ボタンをレイアウトし、内部機構を極限まで突き詰めています。それこそコンマ1ミリ単位のレイアウトをめぐって最後までデザイナーとやり取りしていましたね」
メカ設計の石川が語るように、『α7』の天面を見るとダイヤルのすべてがもうここしかないという位置に収まっていることに気づく。この凝縮感こそがポイントなのだと曽我部はいう。
「ダイヤルの緻密(ちみつ)なレイアウトは、まさにカメラとしての必然性が生んだもの。内部の機構的にも一切無駄が無いことが外観に現れています。そこに『α7』の美しさがある」
デザイナーとメカ設計の連携による精巧なデザインの美しさが、このカメラの付加価値をさらに高めているようだ。

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04 表現を高めるシークエンス

UI設計担当 畠中 文一 操作系検討担当 小西 一成

「すべての操作系で、ハイレベルな一眼ユーザーの求めるものを追求した」と、ボタン配置からUI設計まですべてを監修したという畠中は、『α7』の目指した操作性をこう語る。
「制作過程では当然ユーザーテストを何度も重ねますが、『α7』ではさらに何人ものプロカメラマンに協力してもらいました。プロフェッショナルの視点からダイヤルやボタンレイアウト、カスタム性を吟味してもらい、その意見を操作系の隅々までフィードバックさせています」

「しかし、それぞれのパーツや機能単体で操作性を高めるだけでは不十分」であることに気づいたと語るのは実際に操作系検討を担当した小西だ。
「上級者にとって最も重要なのは、作品を撮るためのワークフロー。意図した手順で各設定をいかにスムーズに変えられるかが求められます。そのため、あらゆる撮影シーンを想定しながら操作の動線パターンをシミュレーションし、ボタン配置や機能を決定しました」
上級者ともなれば、シャッターを切るまでの手順や動作が作品の仕上がりを大きく左右するといっても過言ではない。『α7』は、その一連の流れをまさに最短・最小限の動きでできるように物理的にもソフト的にも徹底的に作り込まれている。

UIデザイン担当 赤川 聰

「さらにユーザーインターフェース(UI)のレスポンスも、これまでと次元が違う」とUIデザインを担当した赤川もその操作感について断言する。
「ソフト開発チーム内のレスポンスの速さを追求する専門チームが、無駄なアルゴリズムを極限まで排除し、上級者でもストレスなく操作できるレスポンスを実現しました。またUIの視認性も高め、使いやすさにも非常にこだわって仕上げています」カスタマイズ性については
「我々がデフォルトで用意したもの以上の振れ幅を備えているので、ぜひ自分だけの使い方を発見して創造性のある『α7』ライフを楽しんでください」と赤川は満面の笑みで締めくくった。

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“Customize My α7”

ボディ右側にほぼすべてのダイヤルとボタンを集約した『α7』は、
右手操作だけで撮影設定が素早く行えるように作られているので、
どこに何の機能を割り当てるかが『α7』を使いこなす重要なポイントです。
「様々な撮影シーンに対応できる最適なバランス」と開発陣が語る
初期設定の状態で使うのもおすすめですが、撮影シーンやスタイルに合わせて
自分流のカスタマイズができれば『α7』で撮る楽しみは一層深まるはず。
ここでは最初に知っておきたいカスタマイズ方法や便利な機能を紹介します。
ぜひ、自分だけの使いやすい『α7』にカスタマイズしてみてください。

Customize 01 Fn(ファンクション)機能を使いこなす

『α7』のファンクションメニューは最大12個まで機能を登録できる。Fnメニューへの機能の割り当ては、[MENU]ボタンから[カスタム設定]を選び、6番目にある[ファンクションメニュー設定]を選択。あとはファンクションの上段1から下段6まで好きな機能を選択するだけだ。とはいえ、風景やポートレート、スナップなど、撮影シーンによってよく使われる機能や設定は異なってくる。使用頻度の高いものから、撮影の要所でワンポイント的に使うものまで、自分の撮影スタイルにあわせてレイアウトまで考えて機能を割り当てることが重要だ。

Fn(ファンクション)は前・後ダイヤルで素早く設定しよう
シンプルなミニマム設定

機能をそれほど多用しないというユーザーには、必要最低限の機能だけを割り当てておくシンプル設定がおすすめ。割り当てたい機能が6つ以下の場合、選択メニューは1段だけになるため、画面表示もすっきりし、機能選択も迷わずできる。

Customize 02 ボタンカスタマイズ機能を使いこなす

40項目以上の機能を自由に割り当てられるボタンカスタマイズ機能だが、その設定方法はとても簡単。[MENU]ボタンから[カスタム設定]を選び、6番目にある[カスタムキー設定]を選択するだけだ。あとは設定したいボタン名にそれぞれの機能を割り当てるだけで登録は完了。ボタンカスタマイズする第一のメリットは、使いたい機能を瞬時に呼び出せること。それはスナップ撮影などの速写性が求められる撮影にとても有効だ。

さっそく設定した「クリエイティブスタイル」を使ってモノクロ写真を撮ってみよう
いつでも呼び出せるように登録する

カスタマイズしたセッティングは、2つまで登録することができる。登録したプリセットは、モードダイヤルの [1] と [2] を切り替えるだけで、瞬時に呼び出せる。スナップ用や風景用と決めておくと便利だ。

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VOL.1 ずっと思い描いていたカメラ
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