vol.2 ハイレゾ聴き比べ ヘッドホン編

Walkman® Owner's Information 第2号では、
『ハイレゾ聴き比べ ヘッドホン編』をお送りします。

ハイレゾ音源を楽しむためには欠かせない、
ハイレゾ対応ヘッドホン。それぞれのヘッドホンの個性の違いを体験
してきたので、「日経エンタテインメント!」がレポートします。

Hi・Res Audio

履かないで靴を選ぶ人はいない あなたの耳には、あなたのヘッドホン

あなたが愛用しているウォークマン®は、本当にあなたに合ったヘッドホンをその身にまとっていますか?
一見シンプルなようで、実は答えを導くのがなかなか難しい。なぜなら誰一人として、同じ“耳”を持っていないから。自分に合うヘッドホンはどれか? この正解に限りなく近づく鍵を探すため、今回、ハイレゾ対応ヘッドホンをよく知るジャーナリストに、自分に合ったヘッドホンの探し方を聞いた。

話を聞いたのは、音響機器を日々取材し、各媒体で執筆している、
IT・家電ジャーナリストの安蔵靖志氏。
あなたのハイレゾ対応ウォークマン®に向けて、オーバーヘッドバンドからは、ステレオヘッドホンのMDR-Z7と、MDR-1A、インナーイヤーからは、密閉型インナーイヤーレシーバーのXBA-Z5、XBA-A3、XBA-A2、そして、ポータブルヘッドホンアンプのPHA-3を用意。では早速、理想のヘッドホン選びに出掛けることにしよう(以下、語りはすべて安蔵氏)。

自分好みのヘッドホン選びの楽しさを語る安藤氏

大切なのは、自分に合った一品を探す作業を楽しむこと

ネット通販が便利な世の中になり、“ハイレゾ対応”という表示だけを見て、ヘッドホンを試さずに買う方、いらっしゃるかもしれません。たくさんのヘッドホンを取材してきた私としましては、これはできれば、やめていただきたい。『でも、自分が使うのは安価なものだし…』。こういう考えもいけません(笑)。価格で選んでしまうのも、ヘッドホン選びでよくある落とし穴です。
大切なのは、自分に合った一品を探す作業を楽しむことです。例えば、試着をせずに靴を選ぶ人はいないのに、ヘッドホンでは「聴ければいい」みたいな発想になるのは、身に着けるものを選ぶ姿勢としては、少し変ですよね。「どれがいいかな」と、ワクワクしながらヘッドホンを選ぶ楽しさをここに再現しましょう。ハイレゾ対応ウォークマン®の付属ヘッドホンは
ハイレゾ音質に対応していませんので、まずはヘッドホンを選ぶことが、ハイレゾを楽しむ第1歩なのです。

カラヤン指揮『ベートーヴェン/第9(第4楽章)』

今回は、オーナーのみなさんの代表として、ソニーのハイレゾ対応ヘッドホンの「聴き比べ」をするため、街角の店舗のように、各製品を一度に体験できる場を用意していただきました。
試聴にはハイレゾ音源から、よく知られたクラシックの名曲を選びました。巨匠カラヤン指揮の、『ベートーヴェン/第9(第4楽章)』です。年末になると、テレビやコンサートホールでよく耳にされる『歓喜の歌』も含まれます。『歓喜の歌』は、ハリウッド映画ではブルース・ウィリス主演の『ダイ・ハード』や、人気アニメ『エヴァンゲリオン』など、とても印象的な場面で使われるので、ご記憶のある方も多いのではないでしょうか。

いい音には、発見がある最新ヘッドホン聴き比べ。

1次元上の音作り。MDR-1A

それでは、あなたのハイレゾ生活にぴったりな、ヘッドホンを選んでみましょう。まず最初に聴いてみたのは、最新のMDR-1A。広帯域HDドライバーユニットが低域から100kHzの超高域までを再生するステレオヘッドホンです。
ハイレゾヘッドホンを選ぶ際に、サンプルとして聴く曲は、クラシックがオススメです。弦楽器や打楽器、金管、木管など、さまざまな楽器の音色、音質を聞き比べられますし、ホールでの演奏を収録した音の広がり、奥行き感も試すことができる。音量もピアニッシモからフォルテッシモまでレンジが広いので、音質・広がり・音域をトータルに、どう聴こえるか、それぞれ耳を澄まして知ることができます。
そこで今回は、カラヤン指揮の『ベートーヴェン:交響曲第9番 ニ短調作品125「合唱」より 第4楽章:プレスト』、いわゆる『第9』を選びました。

IT・家電ジャーナリストの安蔵靖志氏がヘッドホンを視聴した。

なるほど、聴いてみて思ったのは、MDR-1A の良さは、一言でいうと、“音の次元が従来機よりワンランク上がった”ということですね。曲の冒頭、チェロやコントラバスの音の重なりが、音同士が混じってぼやけることなく、きちんと聴き分けられます。音の粒のひとつひとつのサイズが、従来機では比較的大きく、音を明瞭に描ききれていなくて、“高級機”と呼ぶには少し物足りなかった。それが、MDR-1Aでは音の粒が小さく細かくなり、音の解像度が上がって、次元をひとつ超えた感じがありますね。

クラシック音楽のようにホールで演奏した楽曲は、その“ホール感”、音の広がりを追体験するために、イヤホンより、MDR-1Aのような耳を包み込んでくれるヘッドホンで聴くのがいいですよね。軽いですし、側圧もちょうどよくて、1時間、2時間聴いていても疲れないと思います。
どんな趣味でもそうですけど、良い道具で始めたほうがワンランク上の使用感を楽しめるので、上達は早いような気がするんです。ハイレゾの世界も同様で、せっかくの楽しみですから、高級な音色が楽しめるMDR-1Aを、普段使いでも存分に使いこんでみるのがいいんじゃないでしょうか。

さらに余裕を求めるならポータブルアンプ、PHA-1A

ウォークマン®でハイレゾ音源を聴き込んでくると、“この曲のこの部分、もう少し聴こえてほしいのに…”という感想を持つ欲求が出てくるかもしれません。そんな思いに応えてくれるのが、プレーヤーに接続することで、もう一段、音の質を上げてくれるポータブルヘッドホンアンプです。新モデル、PHA-1Aをウォークマン®につなぎ、前述のMDR-1Aで第九を聴いてみました。一言でいうと、PHA-1Aをつなぐことで “音に余裕ができる”という感想です。余裕ができるという意味は、例えば、50のパワーで同じ音を聴いても、50しか力が無いアンプで出した音だと、音が一杯一杯な感じがするんです。

一方、100の力があるアンプが出す50の音は、同じ50でも違う。高級車と軽自動車が同じ速度で走ったときの、安定感の違いみたいな感じでしょうか? 音のつながりが滑らかなんですよね。雑踏を歩きながら聴いていて、ついつい音量を上げてしまい、耳が痛くなってしまうようなときも、PHA-1Aがあれば、そんなに上げずに済むと思います。これはぜひ店頭で試してください。結構、音が変わります。

ポータブルヘッドホンアンプ PHA-1A

ポータブルアンプとウォークマン®、複数の機器を持つと充電が面倒くさく感じる方もいると思うのですが、PHA-1Aは、ウォークマン®を接続すると両方の機器が同時に充電できるので便利です(*)。それと、手に収まるこのサイズ感はいいですね。前モデルのPHA-1よりも容積で約50%、重量で約35%も小型軽量化しているので、軽くて持ちやすいですし、ポケットに入れても違和感がない。アルミの質感は手触りの良さだけでなく、ノイズ軽減も兼ねている。デジタル部とアナログ部の分離がうまくいっているんでしょうね。

(*)推奨USB ACアダプターAC-UD20使用時

まろやかさとシャープさを両立する、フラッグシップポータブルアンプ、PHA-3の実力。

MDR-1AとポータブルヘッドホンアンプPHA-3をバランス接続ケーブルでつなげば、頭の中に広がる“もっさりした音の感じ”が消え、よりグレードアップした音が楽しめます。ポータブルヘッドホンアンプPHA-3は、高品質ヘッドホンアンプを搭載して、バランス出力に対応しているんですよね。L/Rそれぞれのチャンネルを、正相、逆相の出力をもつ2つのアンプで構成していることで、ヘッドホンをいい音でパワフルに駆動するだけでなく、ノイズが低減されて、セパレーションが改善されている。

そのおかげか、たとえば金管楽器の音が、まるで金管に光が反射したように、クリアに輝いて、同時にまろやかに響きます。このリラックス感と、雑踏でも聴きやすいシャープさは、家使いと持ち歩きの両面で活躍しそうです。また、ウォークマン®本体のノイズキャンセリング機能は、付属のヘッドホンかノイズキャンセリング機能対応ウォークマン®専用ヘッドホンの場合のみ対応となっているのですが、ハイレゾ対応ヘッドホンで聴く音はそんな周囲のノイズも気にならない聴こえ方ですね。

最上位ヘッドホン、MDR-Z7その実力を引き出す、こだわりの専用ケーブル。

そして、ハイレゾ対応ヘッドホンのフラッグシップ機であるMDR-Z7。 ドライバーユニットの口径がMDR-1Aの40mmに対して、70mmなので、両機で『ベートーヴェン/第9(第4楽章)』を聴き比べれば、MDR-Z7の方がより、コンサートホールのような自然な響きが迫力を持って感じられます。演奏開始3分頃からのピアニッシモな低音から、弦の音が徐々に響きあうところとか、音が“分厚い”です。振動板が大きいと、低域が弱いかと思いきや、MDR-Z7は低い弦の音にも苦手さを感じさせない。

大口径のドライバーだからでしょうか、低音が余裕を持って鳴っているのが分かります。とにかく、“自然でナチュラル”に音楽を感じることができます。音が左右の耳に分かれて聴こえてくるのではなく、音の空間の中に包まれている感じすらします。アコースティック楽器本来の音色も自然な音質で楽しめますし、大編成のオーケストラだと、さらに余裕を持って鳴っていることが分かります。またポータブルヘッドホンアンプPHA-3に専用のバランス接続ケーブルでつなげば、L/Rのアンプが2つで構成されていて、このMDR-Z7のドライバーユニットを最大限に鳴らしきってくれます。

バランス接続のケーブルは、なんとKIMBER KABLE社の協力のもとでつくられたものです。とにかく上を目指されるユーザーには、体験していただきたい最高級品ですよね。これでジャズのビッグバンドのような、ゴージャスでダイナミックレンジの広い音楽も聴いてみたいですね。また、装着感も最高級といえるもので、ふかふかとしたイヤーパッドに幅広のヘッドパッドで、長時間の音楽鑑賞でも疲れずに楽しめると思います。

ステレオヘッドホンMDR-Z7と、MDR-Z7用ケーブルMUC-B20BL1の組み合わせ

気軽に自分好みのいい音を手に入れるなら、インナーイヤー

さて次は、インナーイヤータイプですね。もちろん、オーバーバンドよりも軽量ですし、さりげなく着けられるので、誰でも手に取りやすいと思います。XBA-Z5、XBA-A3、XBA-A2のそれぞれで、『ベートーヴェン/第9(第4楽章)』を聴いてみましょう。なるほど、XBA-Z5が群を抜いています。新開発HDハイブリッド3ウェイドライバーユニットが、低域から広域まできちんと捉えていますから、これら3機種で、『歓喜の歌』の、低いところから一気にわぁっとなる盛り上がり感が、一番出ていると思います。

ただ、低音をどこまで重視するかは人それぞれで、何に例えたらいいでしょうか、味の濃さ、みたいな好みでしょうか?
XBA-Z5、XBA-A3、XBA-A2を聴き比べてみると、XBA-Z5より、XBA-A3、XBA-A2の方が耳になじみやすい、という人も結構多いんじゃないかと思います。普段、どういったタイプの音楽をよく聴くのか。たとえばヴォーカル系が好きな方は、低域から中高域までバランスが取れているXBA-A3、XBA-A2の方が、お気に入りのヴォーカリストの聴きなれた心地よい声を存分に出してくれると思います。XBA-A3は、高音域だけでなく16mmのダイナミックドライバーが中低域をしっかりと鳴らして、ヴォーカル系以外の広いジャンルのハイレゾ音源も楽しめそうです。ハイレゾで初めて聴いてみるといったユーザーの方は、全帯域のバランスに優れたXBA-A2から始めてみるのをおすすめします。

一方、私もそうですが、ヘッドホンって複数持ちたくなるものです。例えば、ライブ音源の楽曲を聴く場合は熱気があるぶん、どうしても音が雑多にガチャガチャとなりやすいですが、XBA-Z5であれば、会場の雰囲気からアーティストの息遣いやブレス感まで繊細に伝わってきます。細やかな音を響かせてくれるので、低域から高域までじっくり聴き込みたくなりますね。このようにライブ会場の臨場感まで感じられるのは、XBA-Z5ならではだと思います。

またひとつ、進化を遂げたワイヤレスヘッドホン。

ワイヤレスと有線の2WAYで楽しめる理想の形。MDR-1ABT

ソニーが開発したワイヤレス高音質コーデック「LDAC」により、既存技術*に比べ、最大約3倍の情報量が伝送可能になったBluetoothヘッドホンMDR-1ABT。通勤通学でも活躍するワイヤレスタイプの1台だが、その音質や使用感はどうなのか。こちらも、IT・家電ジャーナリストの安蔵さんに、カラヤン指揮の第九を聴いてもらった。
*Bluetooth® A2DPのSBC(328kbps/44.1kHz時)
(以下コメントは安蔵氏)

正直、このヘッドホンは僕が描いていた理想形で、発表されたときから、楽しみにしていました…。うん、やっぱりいいですよね。当然、Bluetooth®なので、圧縮された音ですが、ビットレートが3倍になったことで、特に高域の音の解像感が、エッジが立って、シャキっとして、圧縮によって音が失われていることを感じさせない。音質を向上させる『DSEE』を搭載しているのもあって、多様な音が重なってもひずみや破綻がない。輪郭が一層際立った感じです。
これまで、Bluetoothヘッドホンというと、耳に当てて聴いた瞬間、“まぁ、こんなもんだよな”という感じだったのですが、かなり、上のレベルまで来ましたね。個人的には、もう有線のヘッドホンは要らないかな、と思ってしまいそう(笑)。でも、せっかくのハイレゾ音源はハイレゾで聴きたいので、その際は、ケーブルでつなげば、ハイレゾヘッドホンになる。そうやって、無線と有線の両方をツーウェイで使い分けられる、というのが、何よりいいですよね。

約4時間の充電で、最大30時間聴けるので、通勤通学での利用なら、週に一回充電すれば十分。これも有難いです。タッチコントロールセンサーも、慣れれば直感的に操作できて、“今はこの曲じゃない”というシチュエーションで、曲をヒュンヒュン飛ばせる。
店頭の試聴コーナーで、ワイヤレスのヘッドホンは、試せないところも結構あるので、実際にBluetoothヘッドホンを使ったことが無い方も多いかもしれません。でもMDR-1ABTは音質・使い勝手ともにオススメですので、ぜひご試聴ください。

LDACとは
ソニーが新たに開発したLDACは、既存技術(*)に比べ最大約3倍の情報量を伝送します。LDACに対応した機器間では、ハイレゾ音源をはじめ、お持ちのさまざまな音源を高音質でワイヤレスリスニングできます。
*Bluetooth®A2DPのSBC(328kbps/44.1kHz時)
LDAC
詳しくはこちら
    対応機種
  • ・ZX2
  • ・A10シリーズ(ソフトウェアアップデートが必要)
WALKMAN A10シリーズをお持ちのオーナー様へ
本体のアップデートのご案内
「LDAC」への対応には、アップデートが必要です。本体アップデート情報はこちらをご確認ください。

自分のウォークマン®を手に、試聴に出掛けましょう。

ハイレゾ対応ウォークマン®のユーザーのみなさんには、今回ご紹介したハイレゾ対応ヘッドホンをショールームや最寄りの量販店の店頭で、試していただきたいです。お試しの際に最も大切なのは、必ず、お手元の愛機を持っていって、実際につないで聴いていただくことです。あなたのウォークマン®に入っている楽曲こそ、あなたの耳が好む音楽です。収録されたライブラリーは、人それぞれまったく異なります。
いつも聴きなれている曲目だからこそ、それを新しいヘッドホンで聴いてみると、「あれ? 普段聴こえない音が聴こえる」と気づきます。誰かが「この機種がいい」と言っても、それはその人の好みであって、他者の耳にも通じるとは限りません。
自分のウォークマン®と各ヘッドホンをつなぐことでどんな新発見があるか、それを探すことこそ、ヘッドホン選びの醍醐味だと思っています。そんなワクワク感を胸に、実際に聴いてみて、ぜひ自分に合ったヘッドホンを探してみてください」

ご紹介したヘッドホンを体験できる場所はこちら

  • 東京・銀座 ソニービル
    ソニーショールーム

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  • ソニーストア 名古屋

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  • ソニーストア 大阪

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安蔵靖志 IT・家電ジャーナリスト

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