ISDN・TA用ワイヤレスアダプター

●DOS/V POWER REPORT '98年12月号（株式会社インプレス）掲載


	ISDNを導入するとき、ひとつの悩みとなるのがISDN TAの配線折り返しだ。ソニーが販売するワイヤレスアダプター『WNS-230』を利用すれば、快適にインターネットを楽しむことができる。

ワイヤレス230.4kbpsでISDNをフル活用

　インターネットに最適な通信インフラストラクチャとして急速に普及するISDN。しかし、部屋のレイアウトによっては配線が面倒だったり、生活空間にマッチしないケースも起こり得る。
　たとえば、DSU内蔵ISDNターミナルアダプタをPCの近くに設置すると、居間の屋内配線引き込み口（モジュラージャック）からPCのある部屋までケーブルを伸ばし、再び居間へ向けて電話機のためのケーブルを伸ばさなければならなくなる。つまり、配線の折り返しが発生してしまうわけだ。

　そこで注目したいのがソニーのISDN・TA用ワイヤレスアダプター『WNS-230』だ。WNS-230はRS-232Cポートに直結することにより、PCとISDNターミナルアダプターの間をワイヤレスで結ぶことができる製品だ。
　たとえば、DSU内蔵ISDNターミナルアダプターをWNS-230と接続した状態で居間に設置し、PCのRS-232Cポートにもう1台のWNS-230を接続することにより、居間とPCを設置した部屋をワイヤレスで結ぶことができる。つまり、WNS-230を利用することにより、場所を気にせずにインターネットを楽しめるわけだ。

ワイヤレスのISDNターミナルアダプター間は64k、PHS登録型は32kの通信速度が最高だが、ISDN・TA用ワイヤレスアダプターWNS-230は230.4kの通信速度を実現する

ソニーから発売されているISDN・TA用ワイヤレスアダプターWNS-230なら配線折り返しも起こらない

　また、WNS-230は通信速度を最大230.4kbpsまで設定できるのも特徴のひとつだ。通常、ISDN回線で128kbps接続をする場合、DTE速度（PCとISDNターミナルアダプター間の速度）を230.4kbps以上に設定しなければ、十分なパフォーマンスを得ることができないが、WNS-230はISDN回線の128kbps接続で必要とする条件をクリアできるスペックを搭載している。

　最近ではワイヤレス対応のISDNターミナルアダプターが販売されているが、それらの製品は最大64kbpsまでしか通信速度を設定できないため、ISDN回線が持つパフォーマンスをフルに引き出せない。その点、WNS-230ならISDN回線、ISDNターミナルアダプターが持つパフォーマンスをフルに引き出すことができるわけだ。もちろん、シリアルポートが115.2kbpsまでしか対応していないPCでも問題なく利用することが可能だ。

複数のPCでTAの共有が可能
　ISDNターミナルアダプターをワイヤレス化するWNS-230はPCを複数台導入しているような環境でも威力を発揮する。というのも、通常複数のPCを導入すると台数分の通信環境を用意しなければならない。つまり、PC1台ずつにそれぞれISDNターミナルアダプターあるいはモデムが必要になり、さらに配線の取り回しに頭を悩ませることになる。
　ところが、WNS-230なら1台のISDNターミナルアダプターをワイヤレスで共有することができるため、PCを複数台持っていても通信環境をそれぞれ用意する必要はない。設定も簡単で、WNS-230の前面に装着されている通信モード設定スイッチを切り替えるだけでいい。また、逆に1台のPCで複数のISDNターミナルアダプターを利用するといったことも可能だ。

複数のPCを導入してもWNS-230ならISDNターミナルアダプターを共有することができる

ビー・ユー・ジーが開発した独自の暗号化技術を採用

　WNS-230が優れているのは、ワイヤレスやスペックだけではない。高い信頼性、優れた耐妨害性を持つ通信方式や暗号方式を採用しているため、安心して利用することができるのだ。
　WNS-230では軍用通信として歴史がある『スペクトラム直接拡散』と呼ばれる通信方式を採用している。普及クラスのワイヤレスアダプターとしては、WNS-230が初の採用だ。この通信方式は雑音や妨害電波に強く、PHS並みに微弱な電波でも情報の欠落や誤りが少ないため、高品質なデータ通信が可能だ。盗聴もされにくく、秘話性も確保されている。
　さらに、WNS-230ではMN128シリーズなどでおなじみのビー・ユー・ジーが開発した独自の暗号化技術が採用されているため、通信データの漏洩や傍受を防ぐことができる。従来の無線LANでは隣の家やオフィスが同じ機種を持っていると、傍受や混信などを起こす可能性があったが、WNS-230には暗号キーを設定できるため、十分なセキュリティが確保されている。新規に増設するときもケーブルでWNS-230を接続し、ディップスイッチを操作した後に、電源を入れると暗号キーが設定される仕組みだ。
　通信距離も屋内で30m、屋外で300mと長く、鉄筋の建造物でも1Fと2Fの間で通信が行なえた実績もある。ISDNターミナルアダプターをもう1台購入するより安価に手に入り、ISDN環境を快適にするWNS-230は注目の製品と言えるだろう。