■ 真の自律ロボットを目指して
「元気なソフトを作ろう!!」
そうやって始まったプロジェクトですが、そもそも『元気』とは何か?それが一番の難問でした。
アクションの数を増やしたり、立て続けにアクションを出したりすれば、その間は元気に見えます。しかしそれではすぐに飽きてしまうでしょう。
「元気な状態」と「それ以外の状態」が、AIBOライフ/AIBOフレンド以上にしっかり表現できないと、ただうるさいだけのソフトウェアになってしまいます。そのため、長いスパンで行動遷移をコントロールする枠組みが必要でした。
また音声認識との両立も大きな問題でした。
AIBOは自分が音を発していたり、激しく動いたりしている間は、音声認識できなくなります。
そのため、アクションが出るタイミングを増やすということは、音声認識しにくくなり、お客様にとって使いにくくなるのではないか?そんな心配がありました。
■ モニター調査
お客様は、今のAIBOについてどう思っているのか?
そもそも『元気』なソフトウェアは必要とされているのか?
そんな疑問を解決するために、第一次試作ソフトを使って、社内モニター調査を行いました。
開発からサポート、さらにはマネージャーまでが
「AIBOとはなにか?」 「元気とは何か?」
について、真っ向から向かい合ったわけです。
■ ペットのビデオ調査
家庭内で飼われているペットの動きをもっと参考にできないか?
そんな思いから、各家庭のペットの行動をビデオに撮り、その分析を行いました。
中には、飼い主が寝てしまってから、急に部屋を散策し始める犬などもいて、興味深いものがありました。
■ 本能だけでコントロール
AIBOが自らの意思でおこなう大まかな自律行動
(例:探索する、暇なのでぼーっとする、昼寝する)は、おもに本能値を使用していますが、ずっと寝ている状態、ずっと歩いている状態にならないようにそれぞれの行動遷移があらかじめ想定された範囲にバランスよくプログラムされています。
「元気なAIBO」では、行動の複雑性を出すために、あえて安全性の高い行動遷移の仕組みを排除し、本能値のみで自律行動の遷移が行われるように変更しました。
この変更により、ずっと歩き続け疲れているときに、オーナーさんが無理に歩かせようとすると、歩いてすぐにやめてしまう、というような行動の時間的連続性が生まれました。
オーナーさんの使い方やお部屋の環境によって、設計者の予期し得ない行動遷移をすることが可能になったのです。
しかし本能だけでコントロールするには、非常にリスクを伴います。
例えば環境によっては、常に運動欲が高い、睡眠欲が高い状態などが続き、その結果、常に寝ている状態、常に歩いている状態になる恐れがあるからです。そのため、本能値に影響を与える情報の徹底したチューニングと行動遷移、アクションの選別を行いました。
これは1000以上のアクションやモーションを、状況に合わせて決めていくという気の遠くなるような作業ですが、これがいい加減ですと、自律行動は適当な動きしかできなくなります。
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