ポストプロダクションワークフロー

HDR制作に必要な機材

HDR制作には特殊な機材が必要なのか、と尋ねられることがありますが、基本的には既存の製品でHDRの映像制作を行うことが可能です。ただし、魅力的なHDR映像を制作する過程においては、概要「What's HDR」で触れているように、広いダイナミックレンジと広色域で素材を撮影しておくことは留意しておく必要があります。ソニーのCineAlta 4K カメラF65 やPMW-F55、マルチフォーマットポータブルカメラHDC-4300などは、優れたキャプチャリングの性能を備えているため、「S-Log」やRAW記録により、広いダイナミックレンジで撮影することが可能です。色域に関しても「S-Gamut」というソニーの定めた広色域データ形式に対応しており、その再現性も十分であるためITU-R BT.2020の広い色域をカバーする色域で素材を撮影可能ですので、HDR映像を制作するにあたり、幅広い表現力を発揮できるということになります。
信号監視やポストプロダクションでのモニターとしては、HDR表示モードを備えた30型4K有機ELマスターモニターBVM-X300 を始めとした、高輝度・広色域を再現可能なモニターを使用します。

  • ※S-Log、S-Gamutの詳細については、こちらをご参照してください。

ポストプロダクションワークフロー

ポストプロダクション(編集、グレーディング、フィニッシング)におけるHDR制作のワークフローも、モニタリングを行いながら、意図するコンテンツに仕上げていくという過程は、従来のコンテンツ制作と同じ作業の流れになります。

一方、HDRコンテンツ制作のフィニッシングプロセスでは、放送用、OTT*1用、シネマ/ Ultra HD Blu-ray用など、提供するサービスによって採用しているEOTF*2(規格)が異なるため、それぞれに適した規格に変換して納品する必要があります。つまり、同一のHDRコンテンツであっても、納品先によって、複数のバージョンの完パケを作成することが必要になります。そこでご提案できる一つの手法がS-Log3をEOTFとした中間マスターの作成です。
S-Log3は、イメージセンサーの持つ性能を必要かつ十分に生かすことができるように、暗部からハイライト部までのビット数をバランス良くマッピングすることを考慮し、開発しています。このマッピングが適切でないと、限られたビット数においてSN比が悪化したり、バンディング(画像の滑らかなグラデーションの部分に現れる濃淡の縞)が目立ったり、コーデックにおいては圧縮効率が大幅に低下したり、圧縮ノイズの増大を招いたりする可能性があります。S-Log3は従来の10bitのビット深度の中で広いダイナミックレンジを扱ってもクオリティーを十分に維持できるため、フィニッシングプロセスでの変換の際に画質劣化を最小限にすることが可能です。

HDRコンテンツの制作はこれから撮影していくものにとどまりません。F65やPMW-F55などで過去に撮影した作品なども、S-LogやRAWで撮影したダイナミックレンジの広い素材であれば、再カラーグレーディングを行うなどのリマスタリング作業により、HDR版のコンテンツ制作が可能です。また、フィルム素材の場合もリマスタリング可能なため、映画作品などで、HDRリマスタリング版の再リリースによるビジネスチャンスが生まれます。

以上のように、HDR制作はS-Logなど広ダイナミックレンジの撮影に対応する機器があれば始めることができます。当面はSDR作品のみを制作する場合でも、S-Log3の素材から制作することで、高品位なSDR作品を制作することができます。また、将来のHDR作品のリリースにも対応できる可能性を持っておくという点で、ダイナミックレンジの広い状態で素材を残しておくことが重要になります。

  • *1 OTT:Over The Topの略。動画・音声などのコンテンツ・サービスを提供する事業者、またはそれらのコンテンツ・サービスそのもののこと。
  • *2 EOTF:Electro Optical Transfer Functionの略。信号レベルと輝度の関係を決める電光変換特性。
    OETF:Optical Electro Transfer Functionの略。輝度と信号レベルの関係を決める光電変換特性。

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