法人のお客様 事例 社会課題の解決をめざすAI解析ソリューションの提供

社会課題の解決をめざすAI解析ソリューションの提供

AI専門チームにより課題解決に迅速に対応

近年、AIを活用したサービスやソリューションのニーズが増える中で、当社はこれまで培ってきた映像・音声の技術をもとに、映像制作業界や社会インフラを支える企業・官公庁向けにAIソリューションを提供してきました。社会環境が目まぐるしく変化する今、社会が抱えるさまざまな課題に対して、AI技術を活用した課題解決や新しい価値の獲得を望む声が数多く寄せられています。そこで私たちは、AIを活用したソリューションの開発と提供を加速し、お客さまのご要望に迅速にお応えすることを目的に、2020年4月より、AI推進室を設立しました。今回は、組織設立の背景とともに、納入事例やこれからのビジネスの展望をご紹介します。

日々進化するAI技術に対応できる組織を

映像制作の現場では以前から、働き方改革による制作作業の省力・省人化や、より付加価値の高いコンテンツ制作を実現するために、AI技術の活用が検討されてきました。それに加えて、視聴環境の多様化やコロナ禍による社会変化にともない、これまで以上に効率的に価値の高いコンテンツを制作することが求められています。また、道路や鉄道をはじめとする社会インフラに関わる業界では、施設の老朽化や人材の減少に対応するため、点検コストを削減し、かつ現場作業の安全性を向上する施策の検討が行われています。こうしたニーズに対し、当社が放送局ビジネスで長年培ってきた映像・音声技術に、AIを組み合わせた新しいAIソリューションの提供を加速すべく組織を設立。企画、マーケティング、エンジニアといった多岐にわたる人材を擁し、お客さまへのスピーディーなご提案と、課題解決の立案から設計・開発、施工はもちろん、運用・保守まで一貫してサポートする体制を強化しました。ソニーのAI技術をベースにしながらも、日進月歩で進化する最新の技術を取り入れることで、より付加価値の高いAIソリューションを提供し、映像制作や社会インフラ業界をはじめ、さまざまな分野で社会課題の解決に貢献することを目指しています。

映像制作から社会インフラまで、幅広く活用できるAIソリューション

ソニーのAI解析ソリューションは、すでにさまざまなシーンでの活用が始まっています。株式会社NTTぷらら様では、「ひかりTV」プラットフォームの次世代化に向け、2019年から商用サービスを開始した「ダイジェスト映像自動作成へ向けた映像・音響解析プラットフォーム」で、ソニーの映像・音声解析技術が利用されています。また、株式会社TBSテレビ様(以下、TBS様)には、当社のAI音声認識システムとTBS様の字幕システムを連携させ、字幕を自動生成する「もじぱ音声認識テキスト化システム」をご提供しました。従来なら1時間未満のニュース番組の字幕書き起こしに、約3名の人員を必要としていましたが、高精度なAIエンジンが番組の音声をリアルタイムでテキスト化することで、実質1名で対応できるようになりました。省人化と価値あるコンテンツ提供の両方を実現するシステムとして高い評価をいただいています。

株式会社TBSテレビ様にて、もじぱ運用の様子

また、2020年の夏には、手のひらサイズのボックスにAIアルゴリズムを搭載した「画像鮮明化システム」の提供を開始しました。このシステムに映像を入力するだけで、暗所や逆光など、人が目視では確認しづらい映像をAIが自動でシーン判別し、リアルタイムに鮮明化することができます。また、HDMI入出力のシンプルな機器構成で、システムへの追加がしやすく、コストを抑えながら既存カメラの視認性を改善することが可能です。このような点が幅広く注目され、監視や防犯、防災など、自然環境により映像の視認性低下が避けられないシチュエーションでの活用が見込まれています。さらに、AI画像解析の認識率の向上にも、このシステムが注目されています。画像解析では入力する映像の画質が高いほど精度が上がるため、このシステムで画質を向上させることで、「顔検出/認識」や人物の「姿勢推定」、「物体検知」などにおいて、人やモノの認識率を安定化させる点でも、お客さまから多くのお問い合わせをいただいています。たとえば、建物のひび割れや傷などを高精度に検出することで、防災用途にも役立てられると期待されています。

物体検知を使い火と煙を検知
身体の姿勢を推定する「姿勢推定」
「顔認識」と「導線検知」を使い、人物の導線を監視

最近では、ドローンやロボットによる点検・調査・測量などのソリューションを提供している株式会社アイ・ロボティクス様に画像鮮明化システムを納入しました。近年、ビルの天井裏や橋げた、地下鉄線路などの構造物点検において、ドローンが活用されるケースが増加しています。同社では、さまざまな現場で超小型のドローンを活用した点検の実証実験を行い、すでに実用化し運用しています。従来のドローン撮影による点検では、暗所や狭い場所での撮影が多く、画質が低下するという課題がありましたが、その課題を解決できる点を高くご評価いただきました。

3Rのテクノロジーを、社会問題の解決手段に

ソニーグループでは、「Reality(リアリティ)」「Realtime(リアルタイム)」「Remote(リモート)」の3Rテクノロジーを軸に価値創出を目指し、さまざまな課題解決に取り組んでいます。たとえば「リアリティ」では、前述の画像鮮明化システムによって、より人間の眼での見え方に近い映像再現を可能にします。また、放送業界では「リアルタイム」性が求められ、フレーム単位(1/60秒)に対応したAIソリューションも実現しています。「リモート」では、昨今のリモート環境での制作ニーズに応え、クラウドを活用して場所を問わずアクセスできるAIプラットフォームサービス「Media Analytics Portal」の提供も始めています。このようなソニーの技術力を最大限に生かしていくことはもちろんですが、今後はさまざまな業種、業界との協業も見据えた新しいビジネス展開を加速していきます。放送局や社会インフラ企業のみならず、これまでアプローチできなかったお客さまにも新たなソリューションを提供していくことで、世の中の課題解決を目指します。

織部(AI推進室 室長)

〜映像・音声システム構築の実績により培われた技術力を活用し、社会に貢献していく〜
AIの文脈において映像・音声は欠かせない要素です。AIビジネスの領域でさまざまなお客さまにお会いすると、AIのみならず、それに関わる映像・音声についてのノウハウが求められていることが多いと実感します。私たちはこれまで、全国の放送局様に映像ソリューションを提供してきましたので、そこで培ってきたノウハウや技術を最大限に生かすことで、社会課題の解決や、人々の安心、安全に貢献できるAIソリューションの提供領域を広げていけると感じています。今後、AIが当社のビジネスの大きな柱となるように事業を育てていきたいと思います。

森崎(AI推進室 ビジネスリーダー)

〜AIが人の代わりではなく、未来の可能性を広げるものに〜
現在は、人がAIに学習させて煩雑なオペレーションや単純作業を置き換えることが主流ですが、これからは逆に人間がAIから学習し、人間の可能性を広げていくものにシフトしていくのではないかと思います。たとえば映像制作ではカメラマンや編集など多くの手を介して作品がつくられますが、AIだからこそ可能にするクリエイティブの領域があるのではないかと考えています。新たなAIソリューションで、まだ人が見たことがないものを創造し、世の中をもっと面白くするエンジニアリングをしていきたいと思います。

堀田(AI推進室 マーケティング・企画)

〜現場のノウハウを可視化し、AIによる業務ソリューションを提供したい〜
コロナ禍でさまざまな働き方変革が求められています。たとえば、製造業や物流業では、ECサイトでの購入ニーズが増え続けており、商品は多様化し物量は増加する傾向にあるため、業務範囲も広く複雑になっています。また、業務のさまざまな場面においてノウハウが属人化しており、効率化を図るのが難しくなっています。こうした見えないノウハウを可視化し、AIで自動化することで少しでも業務を支援できるソリューションを企画し、社会を支える多くの方にご利用いただける価値の提供、認知度の向上を図っていきたいと思います。

村田(AI推進室 エンジニア)

〜「AIのことならソニー」といわれるような実績を残したい〜
AIビジネスの取り組みはまだ始まったばかりですが、今後、多くの企業の方に「AIのことならソニー」と言われるような流れがつくれるように、エンジニアとして誰もが知っているような実績を残したいと思います。たとえば、防犯・監視ソリューションなども現在検討しておりますが、日々のリスクを少しでも減らし、社会に安心や安全を提供できるような仕事にも貢献していきたいと思います。

AI推進室のメンバー