スイッチャー

株式会社 権四郎 様

プロダクション

2018年 5月掲載

音楽ライブ制作の高度化に対応し、HDC-4300を導入。
制作環境の改善や設営・撤収のスピードアップを目指し4K中継車も新造。
S-Log収録・HDRへの展開も期待。


製作中の4K中継車。両拡幅を採用。

株式会社 権四郎様は、音楽ライブ・コンサート収録やステージ大型ビジョン演出用に4K対応マルチフォーマットカメラHDC-4300を導入され、すでに運用を開始すると共に、2017年12月の運用開始に向けて、4K対応マルチフォーマットプロダクションスイッチャーMVS-7000Xを中心とした、4K中継車の導入を決定されました。

同社 エンジニアリングプロモート部 部長 山内章平様、テクニカルプロモート部 副部長 中村勇喜様に、導入の経緯やコンセプト、機器やシステムインテグレーター選定のポイント、導入後のご感想などを伺いました。

なお、記事は2017年9月に取材した内容を、弊社でまとめたものです。

山内章平様
山内章平様

中村勇喜様
中村勇喜様

事業展開と将来性を見据えて、4Kシステムカメラを増備


全部で8式を導入されたHDC-4300。

これまで、音楽ライブ・コンサートの収録やステージ上の大型ビジョン演出用にHDC-2600を3式、PMW-F55を3式、さらに必要に応じて他社からの機材を合わせて運用してきました。また、システムカメラの増強を検討していた中で、予定をしていたアーティストのライブツアーで、ステージ演出に8Kの大型ビジョンが使用されることが決まっており、新たに導入するシステムカメラは4Kにしよう、となりました。現在のところは、さほど4Kの需要は高くありませんが、案件としては確実にありますし、今後も増えていくことは間違いありません。ですから、今の段階でHDという選択肢はないかな、と考えました。今回導入をしたのは、HDC-4300を8式です。従来から使ってきているCineAlta 4KカメラPMW-F55も、ライブやコンサートを中心に運用しており、用途に応じて使い分けていくことを想定しています。

制作環境の向上と、設営・撤収の省力化を目指して4K中継車も導入


高解像度映像が必要とされるステージ演出。

システムカメラの増備と相まって求められたのが設営や撤収の省力化と時間短縮です。従来は、可搬型ラックを使用して現場ごとに仮設のシステムを組んでいました。また、そのスペースも会場の一角という形が一般的でした。そのため、より充実した制作環境を構築すべく4K中継車を導入することにし、中継車にビルトインする予定のHDC-4300を先行導入して運用開始しました。

設計は音楽ライブ・コンサートを主用途に想定し、撮影監督が中心となり仕様を検討しました。一般的に中継車はビデオエンジニアなどが中心に検討されると思いますが、弊社では撮影監督が中心となったことで、一般的な中継車とはだいぶ趣が異なる仕様になったと思います。基本的なシステム構成としては、HDC-4300のカメラコントロールユニットHDCU-2000とベースバンドプロセッサーユニットBPU-4000を最大20式まで車内に搭載・運用可能とし、80入力のMVS-7000Xを中心にRGタリーへの対応、自動フォーマットチェンジャーによるHD/4K、24〜60pのワンタッチ切り替えに対応しています。レコーダーは制作サイドのリクエストに応じたフォーマットのものを都度搭載する設計です。スロー卓などは省き、長時間の制作でも快適な環境を作るべく、制作ルームを最大限まで拡大しました。両拡幅のボディを使い、30〜40台のカメラといった大規模な制作でも、各列の座席からモニターパネルを一望できる広大な空間を確保しました。制作室後列は音楽レーベルのクライアントさんがお座りになることが多いので、クライアントさんからの眺望を特に重視しました。

また、珍しい装備としては冷蔵庫も2式搭載しています。車内からアクセスできるものと、車外からアクセスできるものです。特に野外音楽フェスなどでは長時間の制作となりますので、スタッフにとって快適な制作環境を重視しました。車内の椅子についても、外国製のブランド品を入れるなど、細部にこだわりました。音楽用にフォーカスした設計とすることで、多くの台数のカメラへの1両での対応や、広大な制作空間を実現することができました。

「黒が美しい」「ハイライトの伸びが違う」と感じたHDC-4300


製作中の車内の様子。右側がVE卓。

先行導入したHDC-4300は、6月から9月にかけての全国ツアーで運用しました。感想としては「4Kならでは」のとてもインパクトのある映像が撮れ、大変満足しました。副社長も「4Kを導入していなかったらどうなったていただろう」と述べていたほどです。実際に運用を行って感じたのは、黒の美しさや、黒からのグラデーションの美しさです。SN比も良く、従来に比べてダイナミックレンジが広く感じられました。ユーザーガンマを当てたときのハイライトの伸びの良さに違いを感じました。難しいと言われる4Kのフォーカシングについても、シビアさは感じるものの、2/3インチということもあり、被写界深度も深く、問題なく運用できています。

画質だけでなく、操作性・統合運用の観点でHDC-4300 を選定

4Kシステムカメラの選定においては、他社からもデモ機をお借りし、比較して検討しました。実際に使い比べてみた結果としては、各種の操作に対する追従性の良さや、画質の面でHDC-4300が優れていたため、ソニーを選びました。もともとHDC-2600やPMW-F55なども持っていますので、統合した運用、という面でもHDC-4300は合理的な選択でした。中継車のシステムインテグレーションについては、ソニーのカメラとの整合性などから自然とソニー一択となりました。

Super35mm から中継車まで、4Kの幅広い選択肢を前面に

今回、4Kのシステムカメラ導入に加えて、4K中継車を導入したことで、クライアントの皆様への提案の幅が大きく広がります。中継車については12月頭の納車翌日から早速活躍してもらおうと考えています。

Super35mmイメージセンサー搭載のPMW-F55についても、カメラだけではなく、シネレンズも広く保有しており、ここまで幅広い選択肢を提示できる会社も少ないと思いますので、それを強みにしていきたいと考えています。特に音楽ライブ・コンサートについては、多数のカメラが必要になるため、どうしても中継車が求められる傾向があります。今後は中継車もあり、4Kの体制も万全ということで、よりクライアントの皆様のお役に立てるのではないかと期待しています。

また、音楽ライブ・コンサートでは、ステージの明暗のコントラストが激しいため、できるだけラチチュードを広く撮影・収録し、ポストプロダクションで調整したい、というニーズがあります。そのため、4Kにとどまらず、HDRにも積極的に取り組んでいきたいと思っています。PMW-F55を導入していたのもS-Log撮影へのニーズがきっかけの一つでもありました。

ここまでの導入で、ソニーのカメラを一貫して導入してきていますが、これらのカメラを全て一体化して運用できるソニーを選んできてよかったと思います。HDC-4300のS-Logは4Kのみでしたが、HDでもHDRへのニーズがあり、アップデートでの対応など、ソニーには、今後も引き続き、新たな期待にも応えてもらえたら嬉しいと思っています。


中継車に搭載される MVS-7000X とコントロールパネル。