スイッチャー

株式会社 あいテレビ 様

放送局

2015年8月掲載

高画質、高機能なHDC-2000シリーズとMVS-7000Xを採用し、スイッチャー、VEのワンマンオペレーションも可能なシステムを構築。


MVS-7000XとIXS-6700を中心に構築されたA スタジオサブ。

株式会社 あいテレビ様は、情報番組などの制作、オンエアを行うAスタジオ/スタジオサブをマルチフォーマットカメラシステムHDC-2000シリーズ、マルチフォーマットプロダクションスイッチャーMVS-7000Xなどにより2014年10月に更新され、運用を開始されました。
同社 編成報道局 編成制作部斎藤幹宏様に、更新コンセプトや、機器、システム採用の決め手、運用の成果と評価などを伺いました。
なお、記事は2015年4月中旬に取材した内容を、編集部でまとめたものです。

当社のワークフロー、オペレーションに合ったシステムを


斎藤幹宏様

当社のAスタジオ/スタジオサブは、かつてアナログ設備で運用していたところで、今回の更新は、ほぼ新設に近い設計のシステムとなっています。更新に際しては、HD化と当社の番組制作におけるワークフローやオペレーションに柔軟に対応できるシステムであることを条件としました。

こうした視点で、系列のキー局などの導入実績や運用状況を確認しながら選定作業を開始しました。まず、スタジオカメラシステムには、HDC-2000シリーズを導入することにしました。すでに中継車でHDC-1500を活用しており、操作性を継承しながらより高画質、高機能な撮影ができる点を評価しました。


MVS-7000X(3ME、24入力)には、P/P列をME列の上に配備するなど、当社のオペレーションに合わせたパネルの配置が施されています。各ME列に4つのキーヤーを装備し、メモリー機能の充実などによる使い勝手の良さも好評です。写真・右はVE卓。最大6台のカメラをコントロールできるように設計されています。


今回の更新コンセプトで最も重要な柱の一つが、スイッチャー、VEのワンマンオペレーションの実現でした。リモートコントロールパネルをスイッチャー卓にも可動式で配置することで、スイッチャー一人でもカメラコントロールを含めたオペレーションが可能になっています。

一方、スタジオサブのシステムについては、決して広いとは言えない場所にも設置でき、高性能・高機能であると同時に柔軟な運用が可能であることが条件となりました。最終的には、スイッチャーにMVS-7000X、ルーターにIXS-6700を採用したソニーのシステムを採用することに決定しました。プロダクションスイッチャーなのでライブ運用にはどうかといった不安がありましたが、他局での運用状況や、キーヤーをはじめとした充実したメモリー機能の活用で、ライブでもポテンシャルの高さを生かせると評価しました。

また、パネル配置の自由度や複雑な映像配信にも柔軟に対応できる機能など、当社の要望に対応可能なソリューションも評価しました。中でも一番の特長と言えるのが、スイッチャー、ビデオエンジニア(以下、VE)のワンマンオペレーションへの対応でした。スイッチャー卓に最大6台のスタジオカメラの制御が可能なリモートコントロールパネルを可動式で配備しています。これにより、番組収録など、アイリス調整だけで運用できるケースではVEに頼ることなく、スイッチャー一人で収録やオンエアを行うこともでき、効率的なオペレーションが可能になりました。

2015年3月30日より「NEWS キャッチあい」で本格稼働


スタジオカメラにスタンダードタイプのHDC-2000を2式とポータブルタイプのHDC-2500を2式導入。中継車で運用中のHDC-1500を持ち込んでの運用にも対応しています。今後はHDC-2000シリーズの中継車での運用も検討されています。


放送・業務用有機ELモニターも多数導入、運用されています。スイッチャー卓(写真・左)、VE卓(写真・中央)にPVM-A250/A170、ほかに素材モニターとしてPVM-741、カメラのビューファインダーとしてHDVF-EL75/EL70(写真・右)を採用し、一貫した高精細な画像で情報を共有し、効率的なオペレーションを実現しています。

Aスタジオ/スタジオサブの新システムは、2014年10月に納品され、11月と12月の選挙特番という大型の生番組が初めての運用となりました。自社の映像と系列局の配信映像など、複雑な構成、柔軟な乗り換え、テロップの差し替えといった高度なオペレーションが要求されますが、安定した状態でこれらの難題をクリアすることができました。その点で非常に満足しており、また優れた機能性や操作性を高く評価しています。

そして2015年3月30日から、月曜〜金曜の夕方オンエアの「NEWSキャッチあい」で本格稼働を開始しました。まだ運用して間もない段階ですが、トラブルもなく安定した状態で運用できています。明るく、高解像度の映像は社内での評価も高く、より魅力的な番組制作に貢献してくれると期待されています。

また、スイッチャー卓やVE卓に、放送・業務用有機ELモニターを多数導入し、カメラにも有機ELのビューファインダーを導入しました。同じ高解像度、色の再現性、階調表現で画を共有できるので、スタッフのストレス軽減にも寄与しています。特にカメラマンには、ビューファインダーの優れた視認性が、見やすく、撮影がしやすいと好評で、HDC-2000シリーズの特性を発揮する意味でも有効です。

番組収録でも運用を開始していますが、前述したスイッチャー、VEのワンマンオペレーションの活用などで、より効率的なコンテンツ制作が可能になったと実感しています。

運用を通してノウハウを蓄積してより魅力的な番組制作を

今後の本格運用を通して、ノウハウを蓄積してより魅力的な番組制作に役立てていきたいと考えています。それにふさわしい、ポテンシャルが高く、使い勝手にも優れたシステムを構築できたのではないかと思います。さらに、直近の課題ではありませんが、4Kを含めた次世代映像制作の検証にも役立てていければと期待しています。


ENGセンター(写真・左)内に配備されたXDCAM Station XDS-PD1000(写真・右)。既存のベースバンド運用に加えて、プロフェッショナルディスクでのCMなどの持ち込み素材が増えてきていることに対応しました。

次のターゲットはファイルベース/ネットワーク化への対応になると思います。今回の更新でもENGセンターに XDCAM Station XDS-PD1000を導入しましたが、CMや外部持ち込み素材としてXDCAM HDフォーマットによる プロフェッショナルディスクが多用されるようになっており、それに対応するのが主目的です。

今後は送出部門でもファイル化、ネットワーク化が必須のテーマとなってきますので、XDSサーバー送出システムが有力候補の一つになってくるのではないかと考えています。シンプルで分かりやすく、社内スタッフで緊急時の対応が可能な点などは当社の運用、オペレーションにも極めて有効なのではないかと思います。

また、現在ベースバンド運用の撮影・収録、さらにアーカイブのファイル化も検討する必要があります。ベースバンドにはベースバンドならではの良さがありますが、フォーマットの継続性や系列局との連携、持ち込み素材の効率的な運用を考えますと、ファイル化は不可欠であろうと想定しています。

ソニーには、今後も柔軟なシステムインテグレーションや、機器やシステムのラインアップの拡充などにより、現場の要望を的確に反映したソリューションを提案し続けてほしいと思います。