スイッチャー

日本テレビ放送網株式会社 様

放送局

2015年8月掲載

HDC-2000シリーズとMVS-7000Xでバラエティーにもドラマにも対応できる3G-SDI対応の新システムを導入。


スタジオカメラシステムにHDC-2000シリーズを、スタジオサブシステムにMVS-7000Xを採用して更新された生田第3スタジオ。3G-SDI対応とすることで4K など次世代映像制作にも対応する拡張性を秘めています

日本テレビ放送網株式会社様は、ドラマやバラエティーの収録で使用されている生田スタジオの第3スタジオを、HDC-2000シリーズ、MVS-7000Xなどの採用により更新され、2014年12月より稼働を開始しました。
同社 技術統括局 制作技術統括部 主任 時松淳一様、株式会社 日テレ・テクニカル・リソーシズ 営業センター 設備戦略部 九里隆雄様、株式会社 日テレ・テクニカル・リソーシズ 制作技術センター 技術制作部 福田伸一郎様に、スタジオの更新コンセプト、システム選定の経緯や決め手、運用状況と成果などを伺いました。
なお、記事は2015年4月中旬に取材した内容を、編集部でまとめたものです。


  • 時松淳一様

  • 九里隆雄様

  • 福田伸一郎様

バラエティーにもドラマにも対応できる高品質かつ柔軟なシステム

当社の生田スタジオは、主にドラマなどの収録、編集、完パケまでの作業を行う設備として運用しています。第1スタジオ、第2スタジオはドラマ制作専用となっており、今回更新した第3スタジオは、ドラマだけでなくバラエティーの収録、番組制作にも使われています。

このドラマとバラエティーに対応できるスタジオカメラ/サブシステムを構築することが今回の更新コンセプトの柱となりました。マルチフォーマットカメラシステムHDC-2000シリーズ、マルチフォーマットプロダクションスイッチャーMVS-7000Xは、性能・機能・操作性の面で、当初から有力候補の一つと考えていました。

しかし、最終的な決め手は、そうした点だけではありません。第3スタジオの運用に伴う映像表現やワークフロー、オペレーションに合った要望にソニーが的確なインテグレーションで対応してくれたことでした。

たとえば、HDC-2000シリーズの高画質・高解像度はバラエティー番組ではそのまま有効な映像表現となりますが、ドラマではそのままでは使えないケースもあります。演出や表現によっては、高解像度化の流れに逆行するような場合もありますが、ドラマ撮影では肌が綺麗に見えるように、高精細というより、肌の質感、なめらかさ、つややかさが大切になります。また、照明が暗い中でも肌の質感が良く見えることも必要です。

こうした要望に対し、ソニーはカメラのスキンディテール機能の向上で対処してくれました。標準と任意の設定を切り替えできるので、番組の内容や表現に合わせた対応ができます。

また、システム上のタリースピードの向上についても評価しています。カメラを切り換えたつもりでも、前の映像がわずかとはいえ残るようなことは好ましくなく、カメラマンのストレスにもなります。タリースピードの向上でこうした悩みも解消しました。

スタジオサブの機材に関しては、万一の際に備えてMVS-7000Xのコントロールパネル前方のクロスポイント列内にエマージェンシースイッチを配備し、別電源対応を含めて当社の要望に、柔軟かつ適切に対応いただきました。

また、3G-SDI対応による拡張性も評価し、これらを総合的に判断して、導入を決定しました。


スタジオカメラにスタンダードタイプHDC-2000を2台、ポータブルタイプHDC-2500を4台採用。高解像度・高画質・低ノイズの優れた基本性能に加え、ビューファインダーの視認性の高さ、タリーランプのスピード向上などでバラエティー、ドラマの収録で好評を得ています。

安定した状態で稼働できている点を高く評価


スイッチャー卓。MVS-7000X(4ME/40入力)を採用することで8キーヤーのDSKやPinP表示、音声付きのCGワイプなどで多彩な映像表現が可能な点が好評。緊急時対応のエマージェンシースイッチパネルも搭載。シャープなフォルムの木製コンソールや卓の脇に装備された色分けできるLED照明もスタンバイ中/本番中で使い分けなどに使用できます。

第3スタジオの新システムは、2014年12月から運用を開始しました。「AKBINGO!」などのバラエティー番組のほか、「戦力外捜査官SPECIAL」、「学校のカイダン」、4月15日に放送開始した「Dr.倫太郎」などのドラマの撮影・収録でも一部使用しています。

まだ本格運用を開始して半年にも満たない段階ではありますが、安定した状態で稼働できています。エマージェンシースイッチを使用するといったケースもありません。スタッフやオペレーターから不満の声を聞くこともなく、ストレスを感じることなく番組制作に集中できていると思います。

HDC-2000シリーズを使った撮影では、明るく高精細な映像が好評です。あえて照明を落として行うドラマ撮影でも階調表現に優れ、ゲインを上げてもノイズを抑えた収録ができます。また、有機ELビューファインダーHDVF-EL75/EL70も、視認性が高くフォーカス合わせに有効です。家庭で多く使われるようになった大型液晶テレビにも対応するフォーカス、画作りに貢献すると実感しています。


VE卓(写真・左)。マスターモニターに25型放送・業務用有機ELモニターBVM-F250Aを採用。写真・右上は、収録用に配備されたHDCAMデッキ、バラエティー番組の収録のほか、ドラマでもバックアップ用に使用されています。ほかにXDCAM HD422レコーダーPMW-1000を2式装備(写真・右下)、素材確認やオフライン用として活用されています。

スタジオサブのスイッチャー卓やVE卓、照明卓にもマスターモニターとしてBVM-F250A、素材モニターにPVM-A170などの放送・業務用有機ELモニターを導入しており、カメラマン、ビデオエンジニア、照明スタッフ、そしてスイッチャー、ディレクターが同じ高解像度の映像を共有できるので、より密なコミュニケーションが可能になっています。

HDC-2000シリーズは、高感度・高SN比である点も魅力です。さらに、MVS-7000Xでは、多彩な映像表現が威力を発揮しています。豊富なキーヤー、ショートカットボタンや、音声付きで対応できるCGワイプ、PinP表示などもバラエティー番組で効果的に使っています。

4K など次世代の映像制作も視野に入れて運用の幅を広げたい

更新した新システムの本格運用を通して、新システムならではの性能や機能をフルに活用して、より魅力的な番組制作に役立てていけるようにしたいと考えています。また、生田スタジオでは初めてとなるソニーのスタジオカメラ/サブシステムの可能性についても検証して、今後のスタジオ更新の際に役立てていけたらと思っています。さらに、3G-SDI対応の設備となっていますので1080/pや4K、8Kといった次世代映像を使った制作に向けた検証作業も行っていきたいと考えています。

ソニーには、今回のシステム構築で発揮した現場の声を反映したシステムインテグレーションを、今後も強化、拡充するとともに、次世代映像制作に向けたソリューションとラインアップを提案し続けて欲しいと思います。