スイッチャー

日本テレビ放送網株式会社 様

放送局

2018年2月掲載

日テレNEWS24マスター・N2スタジオ/サブを一括してソニーのSIで更新。
日本テレビとして初めて、報道サブにOTC(ワンタッチコントローラ)を導入。


運用中のN2サブのオペレーションの様子

日本テレビ放送網株式会社様は、同社日テレNEWS24マスターおよびN2スタジオ/N2スタジオサブの更新にあたり、HDポータブルカメラHDC-2400、マルチパーパスカメラHDC-P1を中心としたカメラシステムならびに、マルチフォーマットスイッチャーXVS-8000を核にした日本テレビ放送網株式会社様として初となるOTCシステムを導入され、2017年3月より運用を開始されました。

同社 技術統括局 報道技術部 次長 小和瀬達也様ならびに、同局主任 各務裕之様、同局副主任 矢口太郎様に、システム更新の経緯やコンセプト、機器やシステムインテグレーター選定のポイント、導入後のご感想などを伺いました。

なお、記事は2017年10月に取材した内容を、弊社にてまとめたものです。


  • 小和瀬達也様

  • 各務裕之様

  • 矢口太郎様

更新にあたり日テレNEWS24に特化したOTC導入の要望

日本テレビでは、おおまかに12年単位のスパンでシステムの更新を計画しています。2003年に汐留新本社が完成しており、2015年に12年を迎えるということもあり、その3年前となる2012年10月に、我々技術統括局と報道局合同でのシステム更新プロジェクトを立ち上げました。

今回の更新にあたっては、報道局からは、N2を日テレNEWS24に特化したシステムにするべく、OTCを導入したいという要望があがっていました。一方で、弊社ではOTCを過去に導入した経験がなく、まずはOTCについて学ぶために、OTCを提供されている各社さんの導入事例を見学させていただくなどして理解を深め、同時にシステムインテグレーターの選定を行いました。その結果として、日テレNEWS24マスターおよびN2スタジオ/N2サブのSIをまとめてソニーに代表して請け負っていただくことに決定をしました。

N2スタジオのカメラシステム HDC-P1とHDC-2400

主要機器が1つのメーカーで構築できる優位性でソニーを選択

カメラ、スイッチャー、OTC、編集システム、モニターなどに至るまで、幅広い機器を1つのメーカーで構築できるという優位性からソニーにインテグレーションをお願いする決定をしました。今まで、日本テレビでは報道のスタジオを含めて、生放送を行うスタジオのインテグレーションをソニーにお願いした事例はあまりなく、全く不安がなかったわけではありません。しかし、中継車などでの導入実績や、今回中心になった我々が、それぞれカメラマン、ビデオエンジニア、編集出身ということもあり、ソニーの製品を実際に使い、良さを知っていたので、ソニーにお願いをしてみようという流れになりました。また、ビデオサーバーを抱えるCVセンターは直近の更新でソニーのシステムを導入しており、CVセンターのビデオサーバーと連携してOTCで送出できる点も選定の大きな理由となりました。

スタジオはHDC-2400とHDC-P1、サブはXVS-8000を中心に構成

N2スタジオのシステム構成としては、HDC-2400を2台、コンパクトタイプのHDC-P1を2台導入しています。HDC-2400は2台ともカメラマン運用も可能ですが、通常は1台をプロンプターのついたリモート雲台に据えています。プロンプターカメラ前のフロアモニター下にはOTCと連動したカウントダウン表示パネルを設けています。HDC-P1はリモート雲台専用で、プロンプター側に載せることもできます。サブについては、OTCからの制御が可能なM/E3列仕様のXVS-8000を中心に構成しています。当初はM/E3列で足りる予定でしたが、施工開始してから、再撮モニターにもスーパーも入れたいしミックスもしたいのでM/Eをもう1段欲しい、ということになりました。そこで、XVS-8000の持つスプリットモードを使って3列目のM/Eを2列に分割し、M/E3段のコントロールパネルの2段目の裏に再撮用の4列目のM/Eを入れる形で運用することにしました。このスプリットモードにはだいぶ助けられました。

困難を極め、大規模だった更新も、スケジュール通りに完工

今回の更新では、N2のみならず、N1や他の設備についても、同時期に更新となり、全体としては大規模な更新となりました。現場の施工についても、更新後のフロアやサブの配置は変えず、現用システムが稼働しているすぐ脇で、生放送中は手を止めてもらいながら施工を進める、というような難度の高いものでした。そのため、全体としては、なかなかスケジュール通り進まない場面も多くありました。しかし、ソニーにお願いした部分に関しては、2016年11月末から3月中旬にかけての施工に全く遅れもなく、予定通り完工ができました。

OTC導入で大幅に省力化、現場のチャレンジ精神にも刺激に

OTCには、さまざまな要望を入れてもらい、ほぼカスタムなシステムになったと思います。またOTCと組み合わせて使用するループ送出システムも大きなポイントです。日テレNEWS24では30分の生放送の後、内容の差し替えがなければ、その後ループ放送に入ります。ループ送出については、従来は生放送を同録したのちに、手作業でループ用の編集を行っていました。今回新たにループ送出システムを導入したことで、生放送のライブスイッチングや送出を即時にデータ化し、ループ放送用のプログラムを自動的に生成して送出に入れるようになりました。例えば、トピックごとのリード(ネタ読み)やVTR部分の単独の差し替えなども、簡単に行えるようになりました。このループ送出については、2003年の汐留への移転時から導入したいと考えていましたが、当時は実現できず、これまで念願だった機能です。

OTC卓のコントロールパネル 左)OTC 、右)スイッチャーXVS-8000

このほか、OTCやOTC連動のスタジオフロア内のカウントダウンタイマー表示により、一般的な番組ではタイムキーパーが不要となると共に、フロアディレクターのいない運用も可能になりました。一方で、すでにOTCを導入されている局では一般的かも知れませんが、VTR明けに、スタジオのロングショットへ戻るところまではOTCで、その後はトークなどをマニュアルでスイッチングする、といったような、番組内での従来型オペレーションとの併用も行っています。

同じシステムが長く続くと、人間は「成長をしよう」「チャレンジをしよう」という気持ちが希薄になりがちですが、今回 OTCを導入したことで、OTCを活用してどのような制作がで きるか、といった面で、現場の刺激になっていると感じています。 導入当初は、OTCに慣れておらず、戸惑う場面もありましたが、現在は制作スタッフも慣れ、ソニーのOTCを導入して良かったと感じています。もうすぐしたら、OTCなしでは無理、という感じになるのではないかと思っています。

きめが細かく、引き出しの多いSIに満足

システム全体にわたり、かなり多くの要望を出しましたが、ソニーに「無理」と言われたことが一つもありませんでした。また、全てにおいてセンスが良いとも感じました。操作性が良いだけでなく、デザインが良く、共通した操作性で使えるのが魅力です。卓のデザイン、アプリケーションのUI、ケーブルの吐き出し口などいずれもセンスを感じました。また、要望に対するソニーの提案の引き出しの多さも印象的でした。施工現場においても、造作が出来上がりかけた段階になってから、見て感じて出した要望にも、その場で造作を作り変えてくれるなど、対応の素早さ・臨機応変さにも感銘を受けました。

さらに、お願いした範囲以外にも、今回の更新対象となりながら、我々が全てのメーカーさんと直接折衝しきれなかった小さな個別のシステムについて、ソニーに代わりに取りまとめてもらい、大変助かりました。今回はかなり大がかりで大変な更新でしたが、ソニーにシステムインテグレーションをお願いし、とても心強く感じました。

今回の更新後、すでに半年が経過しました。しかし、初めてのOTCということもあり、運用開始してから「こうしておけばよかった」と感じる部分も多くあります。そのような相談にも継続的に対応していただけているので、ソニーにお願いしてよかったと感じています。今後も、そういったことは出てくると思うので、引き続きのフォローアップを期待しています。