スイッチャー

株式会社 テーク・ワン 様

2019年1月掲載

4KやHDR、12G-SDIのニーズの広がりを見据え4K HDR中継車を導入

株式会社テーク・ワン様は、新たに4K HDRや12G-SDIに対応する大型中継車を新造、導入され、最大20カメ対応の規模を生かし、スポーツや音楽ライブ系を中心に2018年5月から運用を開始されました。

  • 田中 丈晴様
    技術本部 制作技術部
    ビデオエンジニア
    田中 丈晴様

  • 橋本 渉様
    技術本部 制作技術部
    橋本 渉様

拡幅時の広大で快適な制作空間と拡幅なしでの運用を完全両立

当社ではこれまで、大型中継車と中型中継車の2台体制で運用をしてきました。今回の導入にあたっては、4K HDRのニーズの到来、12G-SDI機器の持ち込みや外部接続、地上波以外に向けたコンテンツ制作の広がりを見据えることがテーマでした。
当社の主力業務の地上波の番組制作においては、特に大阪周辺地域では、中継車の駐車スペースに限りがあることが多く、拡幅せずとも制約なしに運用できることは必須条件です。一方、ネット配信向けスポーツ中継などでは、スローやリプレイ用のビデオサーバーやCG装置も搭載しなければなりません。さらに今後、スポーツイベントの海外向け制作などではより広大な制作空間が求められ、その両立が課題でした。そのため制作スペースの向きやモニターパネルの配置、最近は一般化しているマルチビューアーを使うかどうか検討に苦心しました。最終的にモニターはマルチビューアーを使わず、拡幅時には中央から左右にスライド開きし、奥から拡幅時専用のモニターパネルが手前に出てくる珍しい形にしてもらいました。

20カメ規模のスポーツ中継に必要な装備をすべて1台の中に

システム構成としては、XVS-8000を4M/E仕様で搭載し、1M/E分は持ち出しも可能にするとともに、エマージェンシー列も装備して生放送に対応しています。カメラはHDC-4300を中心に最大20カメまで運用可能とし、カメラコントロールユニットHDCU-2000やベースバンドプロセッサーユニットBPU-4500Aをすべて車内に収容できるようにしました。モニターパネルのメインモニターとVEスペースには30型4K有機ELマスターモニターBVM-X300を配置しています。HDR制作時の各種変換用として、HDRプロダクションコンバーターユニットHDRC-4000も2式搭載しています。HDR制作時はS-Log3ベースで行い、最終段でHLG/BT.2020に変換を行ったり、HD/SDRサイマル時にはさらにダウンコンバートとSDR変換を行ったりしています。HDRC-4000を活用したHDR/SDRサイマル制作については、5月の運用開始以降4例ほど行っていますが、引き続き勉強し、ノウハウを蓄積したいと考えています。特に、今後HDRの本命と目されるHLGでのHDR制作を、従来のSDRライブ制作と同時に同等の体制で行えますので、お客様にも気軽にHLGを使用したHDR制作をお試しいただけるのではないかと期待しています。

拡幅時の状態のモニターパネル。中央にはBVM-X300

いままでの経験を生かした、さまざまな改善も随所に

今回はいままでにも増して、随所に細かなこだわりを盛り込みました。車内で最も長く過ごすのはVEです。VEにとってさらに快適な作業空間を追求すべく、幅広の通路をはじめとして細かなレイアウトも徹底してこだわりました。また、ライブ制作中は車内でさまざまな声が飛び交います。制作スペース、VEスペースともに、より集中して仕事ができるように、制作スペースとVEスペースの間に扉も設けました。これはスタッフからも大変好評です。

 

拡幅しないで運用可能、拡幅時には広大な空間となる制作スペース

 

左:制作とVEのスペースを区切る扉
右:4K HDRに対応した機材を搭載したVEスペースは十分な広さを確保

約30年ぶりの期待のソニー製中継車、結果も大満足

この中継車は当社が9台目に導入する中継車となりますが、ソニー製としては初期の1台以来の30年ぶりです。いままでソニーが検討にあがらなかったわけではなく、カメラについてはソニー製も使ってきましたが、なかなかソニー製の中継車は実現しませんでした。しかし、4K、HDRなどといった流れの中でのS-Logなど、お客様からはだいぶソニー製の機材やシステムのご指名をいただくことが増え、今回は「ソニーで」という流れができていました。導入後も、4Kで20カメ規模をCG装置やリプレイ含めて1台ですべて賄える中継車は多くないこともあり、いままでなかった引き合いをいただくことも増えました。
各社に提案をお願いした段階でも、4K HDRや最新のHLG対応でこの規模のシステムを現実的かつ実用的なトータルの提案をしてくれたのはソニーだけでした。システムインテグレーションの担当者も大変親切で、いろいろ教えてもらったり、さまざまな提案をしてくれました。
30年ぶりのソニーの中継車ということもあり、私たちには期待しかありませんでしたが、結果も大満足です。今後についても、機会があればソニーにぜひお願いしたいと思っています。今後の4Kカメラの新製品などについても、ソニーには引き続き期待をしています。