スイッチャー

株式会社 テレビ埼玉 様

放送局

2015年1月掲載

MVS-7000XやHDC-2000シリーズで、機動性に優れた現用中継車システムを更新。
よりポテンシャルの高い中継・収録を実現。


システムを更新したHD中継車HR01。写真は、Jリーグ中継で運用時の様子。併設されているのが音声中継/機材運搬などの支援を兼用した中継車。

株式会社 テレビ埼玉様は、同社のキラーコンテンツの一つであるスポーツ中継などにフル稼働中のHD中継車のシステムを更新され、2014年4月より本格的に運用されています。

同社 技術局長 河上利文様に、今回の中継車システム更新の経緯や目的、更新コンセプトと主な仕様、運用状況などを伺いました。また、実際にJリーグ中継で運用中のスタジアムをお訪ねして、技術局 放送技術部長 高橋良也様に、収録・中継のオペレーションなどを紹介いただくとともに、運用の成果やシステムの評価などを伺いました。

なお、記事は2014年9月下旬に取材した内容を、編集部でまとめたものです。

スタジオ/スタジオサブの更新を契機に中継車システムを再構築


高橋良也様


河上利文様

当社は、2011年2月にミニ中継車(SR01) を導入し、XDCAM HD422カムコーダーPDW-700などを使い、報道取材用として運用を開始しました。そして同年7月には、HD中継車(HR01) を新たに導入し、各種スポーツ中継にフル稼働することで「スポーツのテレ玉」のイメージ向上に大きく貢献する成果をあげてきました。

今回、この中継車HR01のシステムを再構築することになった契機は、局内のスタジオ/スタジオサブの更新です。そこで、HR01で運用していたMVS-6000やHDC-1000シリーズをスタジオ/スタジオサブに移設するとともに、HR01のシステムを再構築することにしました。これにより、HR01の元々の設計コンセプトであるコンパクトで機動性に富み、ポテンシャルの高いシステムという特性を一層進化させることが目的でした。看板番組の一つであるスポーツ中継のクオリティーをさらに向上させ、より魅力的なコンテンツとして視聴者に提供していきたいという狙いからです。

機器やシステムの選定を行った結果、前回と同様にソニーの機器、システムインテグレーションを採用することにしました。スイッチャーにMVS-7000X、カメラシステムにHDC-2000シリーズを採用した新HR01は2014年3月に完成し、4月より本格運用を開始しました。


スタジオ( 写真・左) と、スタジオサブ( 写真・右)の更新の際HR01で運用されていたスイッチャーMVS-6000、カメラシステムHDC-1000シリーズ6式を移設。

性能・機能などポテンシャルの高さと3G-SDI による拡張性を評価


スイッチャーにMVS-7000X(3ME) を採用。豊富な入出力、充実したキーヤーによる機能性の高さが好評です。3G-SDI対応など、将来的な4K対応など拡張性、発展性も採用の決め手になっています。


マスターモニターにPVM-L1700を採用したVE卓(写真・左) と、収録機器ラック(写真・右)。PDW-F1600/HD1500、PMW-1000とHDW-D1800でファイル/ベースバンドでの収録が可能です。

今回のシステム再構築に際して、引き続きソニーのシステムインテグレーションを採用した理由は、実績・評価の高さに端的に示される信頼感、オペレーションを継承できる点などに加え、充実したラインアップがあげられます。たとえば、カメラシステムのHDC-2000シリーズは、高感度、高SN比といった一層の高性能化に加え、スポーツ中継で有効に使える2倍速スローなど機能性も格段に向上しています。また、スタジオに移設したHDC-1000シリーズとカメラ、CCUの接続互換があることや、操作性も共通なので、中継規模に応じて連携して運用できる点も魅力です。

スイッチャーのMVS-7000Xについても性能、機能面でのポテンシャルの高さは中継・収録業務のハイクオリティー化、効率化に大きく貢献してくれると評価しました。また、3G-SDI対応などによる拡張性、発展性も選定ポイントの一つとなっています。具体的には4K収録もその一つになります。地上波放送局にとって4Kは、まだロードマップも提示されておらず直近の課題ではありませんが、検証を含めた取り組みはいずれ必要になるのではないかと思っています。特に、スポーツの中継・収録は有力な4Kコンテンツの一つになると想定されますので、当社としても期待をしています。機会があれば、HR01を有効に活用して試験運用や検証作業を進めてみたいと考えています。

スポーツ中継を中心にフル稼働中、安定性・機能性の高さが好評

新HR01は導入後、プロ野球やJリーグなどのプロスポーツ、高校野球、サッカー、ラグビー、バレーボールなどのアマチュアスポーツの中継・収録にフル稼働しています。また、他局やプロダクションへの貸し出し運用でも大変好評をいただいています。コンパクトなAT車による機動性、新たに導入したシステムの高性能・高機能、音声中継と機材運搬を兼ねた中継車との連携運用などは、社内外から高く評価されています。

これまでの運用で一番の評価点は、トラブルが一切ないことに象徴される信頼性と安定性です。特にスポーツ中継では、実況映像が途切れるといったアクシデントは絶対に避けなければなりません。そうした不安を感じることなく、業務に集中できることは最大のメリットになります。もちろん、映像のクオリティーも向上していると実感しています。HDC-2000シリーズの明るく、SN比に優れた映像は、屋内外のスポーツ中継に有効です。2倍速スローも高校野球の地区予選大会などで使っていますが、非常に滑らかなスロー映像は魅力的だと実感しています。今後も幅広く活用できる機能ではないかと期待しています。

スイッチャーMVS-7000Xのポテンシャル、機能性の高さもスタッフ、オペレーターに好評です。具体的には、ME列を使って行っていた複雑な作業をキーヤー一つで操作できたり、CGの取り扱いも簡便にできる点などです。そのため素材の監視や管理、配信、収録など本来の業務に集中でき、あまりストレスを感じることのない運用が可能になっています。

新HR01 は、今後もプロ/アマを問わずスポーツ中継を中心とする業務や、他社へのレンタル運用にも有効に活用していきたいと思っています。

運用を通して、当初に設定したコンセプト「コンパクトながらより高性能、高機能」を実現できたのではないかと満足しています。これからスタッフ、オペレーターの習熟度をさらに向上させ、新しいシステムが秘めた大きな可能性をフルに発揮して、より魅力的な番組制作に生かしていきたいと思っています。


Jリーグ中継では、カメラシステムに6台のHDC-2000シリーズを導入し、HDC-1500 2台とあわせて8カメ仕様で、スタジアムの内外、ピッチの近く、オフサイドライン撮影用など各所に配置して、迫力と臨場感にあふれた競技実況映像を撮影しています。

XDCAM HD422(50Mbps) によるファイルベース化を実現

当社は、今回のスタジオ/スタジオサブと中継車システムの更新と、同時進行の形で局内設備においてXDCAM HD422(50Mbps) によるファイルベース化を2014年3月に完了しました。これまでHDCAMによるベースバンド運用を中心としていた取材用のカムコーダーについては、報道系で既設のPDW-700の他に新設のPMW-500を2台、PMW-160を1台導入し、制作・スポーツ系にはPMW-400Kを1台、PMW-160を5台、PMW-100を1台導入してファイルベースに対応しました。

また、デジタルベータカムの過去素材をプロフェッショナルディスクにコピーする作業を1年半前からスタートしています。コピーの際にプロキシAVデータを生成してサーバーに取り込み、コピーした素材をMXF ファイルでブルーレイディスクにコピーするという手順です。

さらに、新たな試みとして64TB のファイル共有サーバーを採用し、これもフォーマットはXDCAM HD422(50Mbps) で統一して、スピーディーに送出サーバーに登録できるようにしています。

これにより、取材、編集、送出、そしてアーカイブに至るファイルベースのトータルワークフローが可能になりますので、より効率的な番組制作、オンエアに貢献できることを期待しています。

残されたプロジェクトは、2019年頃のマスタールームの更新で、これを機に来年を目標に新社屋を増築する予定です。新社屋では2階にマスタールーム、1階に中継機材庫を設ける予定です。新HR01をはじめとした中継機材を一括管理できるようになり、より機動性に富んだ運用が可能になるだけでなく、スタジオカメラとの連携運用の際にも迅速に準備、出動できる体制が整うと期待しています。それにより、スタッフの負担もさらに軽減できるのではないかと思っています。

ソニーには、これまでと同様の充実したサポート体制を継続するとともに、4Kをはじめとした次世代映像制作の新しいソリューションについても積極的に提案していただきたいと思います。