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株式会社 ダイバーシティメディア様 コミュニティチャンネルのHD放送開始に合わせて撮影・収録からアーカイブまでをファイルベース化。3式のHDC-4300/BPU-4000で4K制作にも挑戦。
  • PWS-4400
  • PMW-F55

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株式会社 ダイバーシティメディア様

株式会社 ダイバーシティメディア(旧 株式会社ケーブルテレビ山形)様は、2016年5月にコミュニティチャンネルのHD放送を目的に制作・送出機器の更新を行い、7月よりHD放送を開始しました。ハウスフォーマットにXDCAMを採用、一貫したファイルベース運用により、将来的な4K放送も視野に4K/HDが混在可能な機器構成としました。
同社 メディア戦略局 制作技術部 部長 鈴木皓大様、同部 次長 定永洋一様に、今回の更新の目的、コンセプト、システム選定の経緯や決め手、運用状況と成果などを伺いました。  
なお、記事は9月下旬に取材した内容を、編集部でまとめたものです。


  • 鈴木皓大 様

  • 定永洋一 様

効率的なHD運用と4Kへの柔軟な拡張性を前提に選定


4K/HD対応のカメラシステムとしてマルチフォーマットポータブルカメラHDC-4300を3式導入。ベースバンドプロセッサーユニットBPU-4000、収録サーバーとしてマルチポートAVストレージユニットPWS-4500を採用し、スタジオでも持ち出しでも運用できるようになっています。


HDC-4300はスタジオでは情報番組に運用中(写真・左)。リモートコントロールパネルRCP-1501(写真・右上)での効率的なオペレーションに加え、30型業務用4K液晶モニターPVM-X300(写真・右下)を配備することで4K映像の確認、管理も行えるようになっています。

今回、当社が制作・送出機器の更新を行った背景には、コミュニティチャンネルのHD化があります。チャンネル数も1チャンネルから4チャンネルに増えることもあり、より柔軟で効率的なHD放送を可能にするシステムが必要でした。そして、もう一つの理由が運用が課題となっていたアーカイブシステムの更新でした。開局以来の完パケや素材をテープで保存していましたが、保管・管理、再利用などを想定するとベースバンド素材では限界がありました。こうした点から、取材からアーカイブまでファイルベース化は必須だと考えていました。

また、将来的な4K対応を前提としたシステムで4K/HDが混在可能な機器構成とすることも更新コンセプトの一つにしました。コミュニティチャンネルの4K放送だけでなく、当社ではPC、スマートフォン、タブレット、映画館へ配信するコンテンツ制作にも注力しており、4K制作はこうした点でも有効に活用できるのではないかと考えました。

このコンセプトに的確に対応してくれたのがソニーの機器、ソリューションでした。まず、HDのハウスフォーマットにはXDCAMを採用することにしました。放送業界での実績の高さに加え、東北地区の広域ネットワーク会社 東北ケーブルネットワーク(TCN)各局でも多く採用しており、番組交換に活用できる点を評価しました。また、放送業界で多く使われている4KフォーマットがXAVCであることも、親和性の高さからXDCAM採用の一因となっています。

送出には、将来対応で4KとHDの混在運用が可能の番組自動送出システムSWEV-N100AとXDCAM Stationを導入。アーカイブシステムに、オプティカルディスク・アーカイブ第2世代モデルを採用することにしました。そして、撮影・収録にはマルチフォーマットポータブルカメラHDC-4300 / ベースバンドプロセッサーユニットBPU-4000と、マルチポートAVストレージユニットPWS-4500を採用しました。HDC-4300については事前検証も行っており、高感度・低ノイズ、深い被写界深度、ITU-R BT.2020に対応の広い色域、ハイフレームレート(HFR)や、4Kハイダイナミックレンジ(HDR)への拡張性も魅力でした。さらに、カメラマンから要望が多かった、既存の資産も有効に活用できるB4マウントレンズ対応も決め手の一つになっています。

カメラには、ほかにもENG運用を想定してXDCAMメモリーカムコーダーPXW-FS7を2台、4KアップグレードライセンスCBKZ-X70をインストールしたPXW-X70を1台、ハンディタイプのPMW-300K2を2台導入しました。これらにより、コンセプトとした4K/HD混在運用が可能な機器構成にすることができたと考えています。

HDC-4300をスタジオと持ち出しで効果的に運用


過去の複数フォーマットのテープメディア素材をオプティカルディスクに効率的にファイル転送できるテープデジタイズステーションPWS-100TD1を導入。


送出サーバーとしてXDCAM Station XDS-PD1000(写真・左)を採用した番組自動送出システムSWEV-N100A(写真・右上)でXDCAMフォーマット(MPEG HD 35Mbps)による効率的なファイルベース運用を実現。電子番組表(EPG)の自動生成を活用することで効率的な番組送出を実現しています(写真・右下)。

コミュニティチャンネルのHD放送は2016年7月から開始され、新たに導入した機器、システムはトラブルもなく、安定した状態で運用できています。送出サーバーとしてXDCAM Station XDS-PD1000を採用したSWEV-N100Aは、多チャンネル送出実行監視機能、電子番組表(EPG)の自動生成、ライブ中継に便利なアンタイム機能などを活用することで効率的なHD放送をサポートしています。

HDC-4300については、PWS-4500、BPU-4000、カメラコントロールユニットHDCU-2500を可搬式ラックマウントに収納しておくことで社内のスタジオ運用と、持ち出し運用に対応できるようにしています。スタジオでは情報番組での顔出し運用などで、外ではスポーツ、イベントなどでの撮影・収録に活用しています。

4K撮影もトライアルで、地元バスケットボールチームのパスラボ山形ワイヴァンズの熱戦を撮影・収録・HD放送を行いました。スタジオサブには30型業務用4K液晶モニターPVM-X300を配備しているので、4Kならではの迫力と臨場感を社内スタッフも実感することができました。

XDCAMメモリーカムコーダーもさまざまなHD撮影に活用しています。高画質・高機能に加え、使い勝手の良さも魅力です。たとえば、PXW-X70のWi-Fi機能を使った遠隔操作です。コンサートで指揮者を撮った際、カメラから離れた場所からタブレットでズーミングやアイリス調整が簡単にできました。カメラマンを置けない撮影もライブ中継では多いので便利に活用できると実感しました。

アーカイブシステムは、11月にオプティカルディスクアーカイブユニットODS-D280Uを導入し、運用を開始します。第2世代モデルの大容量、高速の書き込み、読み出しスピード、アーカイブ運用の時間短縮に期待しています。今後増えてくる4K素材の保管・管理、再利用にも有効に使えるのではないかと思っています。また、テープデジタイズステーションPWS-100TD1も配備するので、過去の膨大なテープ素材のファイル化、保管、活用も効率的に行えるだろうと考えています。

スポーツやライブイベント、フィラー映像などで4Kを活用へ

新たに導入した4K/HD機器は、今後も幅広い番組制作、配信コンテンツ制作で4K/HD同時収録などで本格運用していきます。4Kや4K HDRについては、まだ具体的なプランが決まっているわけではありませんが、スタジオ収録やスポーツや映画祭などのライブイベントで活用していきたいと考えています。また、山形や東北ならではの景観、史跡、祭事などを4Kフィラー映像として残していくことも今後の重要な課題と考えています。

4K制作の積極的な取り組みにより、HD制作はもちろん、4K HDRについても実際の運用を通して検証作業を行い、当社のスタッフ、オペレーターが4Kの魅力をいかんなく発揮できるノウハウを蓄積していくことが重要なテーマと思っています。

ソニーには、今後も4K対応の機器やシステムのラインアップ強化とともに、当社の要望にも柔軟に対応したソリューションを提供して欲しいと思います。特にIP伝送で効率的な4Kシステム構築を可能にするネットワーク・メディア・インターフェース(NMI)には大いに期待しています。