山王日枝神社の婚礼にて、ハイビジョンによるブライダルビデオ制作をできる限り早くスタートさせたいと考えていました。2010年に入り、地上デジタル放送への対応が進み、ご家庭にハイビジョン対応テレビやブルーレイディスクレコーダー／プレーヤーが本格的に普及するようになりました。同時に業務用HD機器のラインアップも充実するなど、タイミングとしても熟してきたと判断して、設備のHD化を行いました。まず、挙式を行う神殿内に3台のBRC-Z700を固定で設置し、隣接するコントロールルーム内にリモートカメラオペレーティングスイッチャーBRS-200と収録機としてXDCAM EXレコーダーPMW-EX30を導入しました。一体型でコンパクトなBRC-Z700は目立たず、しかも静かでスムーズなパン・チルト・ズーム機構や16ポジションのプリセット機能などを搭載し、厳かな雰囲気の神殿内でも目立たず、式次第に合わせて3系統の映像を一人のオペレーターで効率的に収録することができる点を評価しました。

次に、境内でのロケーション撮影や控え室での様子、そして披露宴や会食風景などのレセプション撮影用のカメラ選定に入りました。まず1920×1080のフルHD撮影ができること、メモリーによる長時間記録とファイルベースワークフローが可能なこと、コンパクトで使い勝手に優れていることなどを条件として選定作業に入りました。タイミングよく2010年1月にソニーからNXCAMカムコーダーHXR-NX5Jが発売になった頃でした。早速有力候補としてテストしてみると、私たちの選定条件をすべて満たすだけでなく、重量的に女性スタッフにも使いやすいと大変好評でしたので採用を決定しました。また、HXR-NX5Jと同時に発売されたフラッシュメモリーユニットHXR-FMU128を使うことでブライダル撮影には絶対欠かせないバックアップも万全にできる点も決め手の一つになりました。HXR-NX5JとHXR-FMU128をそれぞれ3台導入することで、2010年9月からハイビジョン撮影によるブルーレイサービスを開始することができました。

 

HXR-NX5Jの最大の魅力は、やはりそのクオリティの高い画質です。フルHD記録、AVCHDという高効率の圧縮方式の特性とも言える解像度の高さは、結婚式という一生の思い出を残しておく記録として最適だと思っています。ブライダルフェア等でHXR-NX5JやBRC-Z700を使って制作したサンプルムービーを見ていただくと、皆さんその美しい映像に魅入られています。実際、この美しい映像なら、ハイビジョンで残しておきたいというお客様も多く、ブライダルビデオの受注率もDVD時代の約5割から、7割近くにまで上昇しています。また、ハイビジョン撮影を理由に、他会場でご披露宴をなさるお客様から当社の出張撮影をお選びいただける方も増えております。

HXR-NX5Jでの撮影は、基本的にFXモード（1920×1080、最大24Mbps）を使用し、フレームレートはBRC-Z700と合わせて60iとしています。収録はSDカードで行っています。32GBでFXモードでも約170分記録できるので、ブライダルなら1枚で十分です。もちろん、デュアルメモリーカードスロットのリレー記録機能も使えるので、記録時間に不安を感じることはありません。同時に、REC状態でロックしたフラッシュメモリーユニットHXR-FMU128でバックアップしているので、撮り逃しの心配もありません。手持ち撮影でも、Active SteadyShotという強力な手ブレ補正機能を搭載しているので、フットワークが要求されるドキュメンタリー部分の撮影で威力を発揮します。また、高感度で暗部の撮影に強く、キャンドルサービスなど披露宴独特の演出にも会場の雰囲気を壊すことなく撮影でき、LEDライトやゲインアップで対応することも可能です。画づくりの点では、光学20倍ズームも魅力です。余興を行う友人の画から、そのまま引いてそれを楽しむ新郎新婦や列席者の様子を捉えるまでを1カットで構成することもできます。

HXR-NX5Jにはプロフェッショナル機にふさわしい、ピクチャープロファイル、SMOOTH SLOW REC、プログレッシブ対応など、クリエイティブをサポートする機能が充実しています。今後、商品の一層の魅力づくりに有効ではないかと期待しています。たとえば、ブライダルビデオには記録とは別に、オープニングムービーなどでの演出的な要素もあります。一般の参列者が民生用ビデオで撮る映像との差異化では、スローモーション撮影やピクチャープロファイル機能が有効ではないでしょうか。プロが撮る映像ならではの画や色づくりを事前に設定しておくといった使い方を検討しているところです。もちろん、当社ではブライダル以外にもビジネス用途の映像制作も行っていますので、HD/SDのハイブリッド記録、ストリーミング映像制作におけるプログレッシブ記録などのメリットを、今後お客様にご提案していきたいと考えています。

今回のHD化で実現したファイルベースのワークフローも、より効率的で、効果的なブライダルビデオ制作に大きく貢献しています。たとえば、近年ご披露宴の定番アイテムにもなっているオープニングやエンディングムービーです。日枝神社での美しいロケーション撮影や厳かな挙式を撮影して、当日行われる披露宴の会場で上映するといった演出があります。参進など境内でのHXR-NX5Jによる撮影データ（SDカード）、挙式が執り行われる神殿内でのBRC-Z700による撮影データ（SxSメモリーカード）をダイジェスト編集し、結婚式には参列されない列席者へのサプライズ演出として好評を得ています。テープ時代よりワークフローが改善され時間的な余裕が持てるようになったため、より細かな編集作業を行うことができ、コンテンツとしての高い評価を得ています。また、HXR-NX5Jはタイムコードを合わせる事ができるので、ご披露宴を2台で撮影するドキュメンタリー商品の編集作業は効率的になり、このワークフローの大幅な改善も、HXR-NX5J導入の大きな成果だと思っています。