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ミュージックビデオ制作「中島みゆき『荒野より』」(ヤマハミュージックコミュニケーションズ)

プロダクション

NXCAMスーパー35mmカムコーダーNEX-FS100Jを2台と多彩なスチルレンズとの組み合わせで作品世界を情緒豊かに描く

ミュージックビデオ制作「中島みゆき『荒野より』」(ヤマハミュージックコミュニケーションズ)

中島みゆきさんのヒット曲「荒野より」のミュージックビデオ(ヤマハミュージック、本編6分57秒、TVスポット30秒)が2011年10月に完成、各種プロモーションやCMとして配信・オンエアされて好評を得ています。この作品は2台のNXCAMスーパー35mmカムコーダーNEX-FS100Jと多彩なレンズとの組み合わせで、中島みゆきさんの楽曲ならではの骨太でしかも情緒に溢れた作品世界を描いています。

この作品の脚本・演出・撮影を担当した映像作家・翁長裕様と、セカンドカメラマンとして撮影に参画された江頭康雄様に、NEX-FS100Jを採用した狙い、演出や画づくりにおける成果、さらに今後の映像コンテンツ制作における可能性などについて伺いました。


中島みゆき「荒野より」ミュージックビデオ

この作品は、YouTubeの中島みゆき公式チャンネルでも鑑賞できます。

スーパー35mmの大判イメージセンサーと多彩なレンズ交換に対応したことで記録だけでなく表現も可能にするビデオカメラとしてNEX-FS100Jに注目


翁長裕 様


江頭康雄 様

スチルカメラマンからスタートして、その後にフィルムやビデオを使った映像制作を手がけてきたキャリアからしますと、ビデオカメラの最大の特長は記録に優れているということです。たとえば、被写界深度は深く、それだけ情報量が豊富ですべてをきれいに見せることができます。一方、この特長は表現者としての立場からみますと弱点ともなっていました。表現というのは、思いやメッセージを伝えたいということでもありますから、見せたいところを見せる、周囲をボカすことで主題・主役を強調する、柔らかい画でイメージを喚起するといったことが求められます。それは、ビデオカメラでは正直難しいことでした。もちろん、デジタルシネマカメラF35などを使えれば問題ないのでしょうが、小規模に活動する映像作家にとっては簡単に手が届くカメラではありません。プロモーションビデオなどの世界で、デジタル一眼レフカメラの動画撮影が普及した要因の一つがここにあった思います。

しかし、昨今スーパー35mmサイズの大判センサーを搭載したレンズ交換式のビデオカメラが登場したことで、状況が大きく変化してきました。ソニーのラインアップでいえば、最上位モデルとしてCineAltaカメラF65が発表されたばかりですが、すでにCM撮影など幅広い映像制作に活躍するデジタルシネマカムコーダーPMW-F3があります。そして、小型・軽量、優れたコストパフーマンスを実現したモデルとしてラインアップされたのがNXCAMカムコーダーNEX-FS100Jでした。このNEX-FS100Jは、まさに多くの映像作家が待ち望んでいたビデオカメラで、記録だけでなく表現も可能にするビデオカメラであると判断しました。これが、今回のミュージックビデオ「中島みゆき/荒野より」の撮影にNEX-FS100Jを採用した一番の理由です。


シーンやカットに応じて多彩なスチルレンズを使って撮影。クラシックレンズなど6タイプ14種類のレンズが撮影に使われました。

特に、フランジバック長の短いEマウントの特長を活かしてアダプターを介することで多彩なレンズに対応できる点が大きな魅力でした。明るい単焦点のレンズを使い、開放絞りで撮影することでレンズ固有の特長を活かすとともに、ピンフォーカスと個人的に呼んでいるのですが見せたい所、伝えたい主題にフォーカスを当てる手法で作品制作を行ってきました。それもあってクラシックレンズと呼ばれるものも含めて、多数のスチルレンズを保有しています。これらの個性的で、独自の表現力を持ったレンズ群を駆使することで楽曲のイメージに合った世界を表現することができるのではないかと思ったことがNEX-FS100Jを使った決め手になっています。フル35mmのカメラと比べると、頭の中で画角を換算する手間はありますが、表現の幅を大きく広げる魅力に比べれば苦にはなりません。

現在、過去の回想シーン、中島みゆきさんご本人のシーンをそれぞれレンズの特性を生かして表現することでメッセージを素直に表現


LEICA NOCTILUX-Mを使って撮影された現在のシーン。


ZUNOW 50mmなどで心象風景にふさわしいボケ味の映像と効果的なスローモーション映像で構成された回想シーン。


中島みゆきさん出演シーンでは、Carl Zeiss Distagonを使って高品質で情感に溢れた映像を実現しています。

今回の作品は、一言で言えば人間の幸せの基本は家族にあることを主題にしました。楽曲のテーマやメッセージを、より身近な視点から取り上げてみました。具体的には、父親の訃報から家族の大切さを改めて見つめ直すというストーリーで、現在と過去、そして中島みゆきさんご本人の登場シーンという3部構成にすることで、主題が素直に分かりやすく伝わるように表現しました。まず、1回見ただけでストーリーや時系列が明確に、しかも結果的にメッセージが素直に伝わるように、3部それぞれに合った個性のレンズを選んで撮影しています。

現在のシーンではLEICA NOCTILUX-M 50mm(F1.0)を使用し、さらにFinal Cut Proを用いて後処理で色を抜きモノクロ映像にしました。回想シーンには、ZUNOW 50mm(F1.1)を主に使用して、決して鮮明な映像ではない過去の思い出などの心象風景を表現しました。そして中島みゆきさんご本人の登場シーンでは、Carl Zeiss Distagon 16mm/ 24mm/ 85mm(F2.0)を使用し、上質でしかも情緒豊かな映像表現を追求しています。サブカメラにはRaylor Hobson cookeの 16mm/ 18mm/ 25mm/ 40mm/ 50mm/ 75mm(F2.0)/ 100mm(F2.8)を装備して、それぞれのシーン撮影に適宜活用しています。また、屋内撮影で引きがとれないケースでは、ULTRA WIDE-HELIAR 12mm(F5.6)も使用しました。

こうした多彩なレンズの個性をそれぞれに活かすことで、イメージに合った映像表現が可能になりました。また、基本的に明るいレンズを使用し、開放絞りで撮影することで被写界深度を浅く保ち、主題やメッセージをより鮮明かつストレートに表現できたと思っています。さらに、回想部分に出てくる自転車シーンで使った超ローアングルカットと、プリクラ撮影シーンのカメラ目線のカットではミラーレスのデジタル一眼カメラNEX-7を使用することで独特のアングルと画角を実現しました。同じEマウントレンズの特性を生かした撮影でした。このように、当初期待した通りに、多彩なレンズを使えるNEX-FS100Jの魅力を今回の撮影で使用してみて改めて実感することができました。

照明不要の高感度・低ノイズ、小型・軽量ならではの機動力を発揮した撮影。60p記録によるスロー&クイックモーションも表現の幅を広げる強力なツール

NEX-FS100Jの表現力の高さは、もちろんレンズ交換だけではありません。一番印象的だったのは、動画専用に開発された大判センサーによる高感度・低ノイズでした。実は今回の作品は、スケジュールや予算の関係から照明が一切入っていないのですが、まったく支障なく撮影することができました。夕景や夜間のシーンがなかったということもあるのですが、時にスケジュールが夕方になってしまうことがありました。たとえば、家族で写真館に出かけるシーンがその一つですが、夕方の屋外でもスームズに撮影することができました。テストの段階からゲインを上げてもノイズの不安がないことを知っていましたので、安心して使用することができました。

 
 

小型・軽量でハンドリングしやすく、機動力を発揮できる点もNEX-FS100Jの大きな魅力です。今回は民家を借りて撮影したのですが、狭い場所でも2カメ体制で撮影でき、スピーディーに予定カットを消化することができました。3日間の予定で撮影しましたが、このカメラでなかったら無理だったかもしれません。手持ち撮影の自由度も高いので自転車シーンなどの撮影に有効に活用しています。また、グリップやビューファインダーなどを着脱でき、外部モニターなどのアクセサリー取り付けを考慮した設計も機動力の向上に貢献していると思いました。

60p記録対応もNEX-FS100Jならではの特長です。今回は1920×1080 24pを基本ベースに撮影していますが、自転車のシーンでは60p記録し、編集で24pのタイムラインに乗せることで2.5倍のスローモーション映像にしました。フルHDの高画質で、しかも滑らかなスロー映像を使うことで情感にあふれる回想シーンとすることができました。このスロー&クイックモーション機能については、意外に知らない映像作家も少なくないのでもっと強くアピールしてもよいと思います。編集で行った場合のようなカクカクした感じがまったくなく、しかも現場でプレビューできるメリットは多くの映像制作で有効に活用できます。

NEX-FS100Jは、インタビューや商品撮影、ブライダルビデオにはもちろんドラマや映画の撮影など幅広い映像コンテンツ制作に威力を発揮すると期待

おかげさまで、今回の作品は大変好評をいただくことができました。もちろん、中島みゆきさんご本人にも見ていただき、満足してもらうことができました。中島さんはアーティストですから、どんな制作物に関してもシビアな評価、判断をされます。以前のミュージックビデオでも必ず1、2点は修正指示を受けることがありましたので、今回のプレビューでもその覚悟でいたのですが、一発でOKをいただくことができました。映像に込めたメッセージが素直に伝わったからではないかと思うのですが、であるとするならNEX-FS100Jを使った成果と言えるかもしれません。

実は、中島みゆきさんはツアーと並行して、「夜会」という非常に人気のあるミュージカルイベントをシリーズとして行っています。昨年17回目となる「夜会-2/2-」の公演が行われたのですが、この舞台収録にもNEX-FS100JをPMW-F3とともに使っています。カメラをセットするスペースが非常に限られていたのですが、NEX-FS100Jの機動力を活かすことで、1ポジション2カメ体制を確保することができました。舞台の収録なのでズームが必要になりますので、この時には付属レンズ(SEL18200)を使用しました。編集はこれからですが、魅力的な舞台の再現していてくれるのでは期待しています。

NEX-FS100Jの高品質で、被写界深度の浅い画は、プロモーションビデオやミュージックビデオだけでなく、幅広い映像コンテンツに有効に活用できます。これは撮られる立場に立てば一目瞭然のことで、自分だけにフォーカスが合った映像ほど魅力的なものはありません。実際、インタビュー撮影にこのカメラを使ったことがありますが、背景がボケていて自分に焦点を当てた、きれいな映像は非常に好評でした。すると、次の時にもこのカメラを指定することが多くなるのです。商品撮影でも同様です。商品魅力を訴求する上でこれほど有効な手段はありません。ブラダルビデオにも極めて有効です。スローモーションが撮れる点も含めて、特に花嫁さんには嬉しい映像になると思います。

 

もちろん、ドラマや映画の撮影にも十分に使えると思います。若手の映像作家、カメラマンにとって、これまで映画が遠い存在だった一番の理由は資金力、端的に言いますと機材の問題でした。このカメラを使って撮影し、宣伝はYouTubeにアップロードして行う、そんなことが可能になったのではないかと思います。
デジタルハブという考え方がありますが、このNEX-FS100Jを基幹コンポーネントとして、用途に応じてレンズやアクセサリーを選んで撮影する、そういう映像制作が今後より活発になっていくのではないでしょうか。今回の撮影で使ってみて、その思いを強くしましたし、同時にそうなることを期待しています。

 
中島みゆき「荒野より」

2011年11月16日にシングルで発売。TBS系列日曜劇場「南極大陸」の主題歌となるなど大ヒットする。同年11月26日に発売された38枚目のオリジナルアルバム「荒野より」(ヤマハミュージックコミュニケーションズ)にも収録されています。

翁長裕様のプロフィール

おなが・ゆたか●映像作家、撮影監督。1957年(昭和32年)沖縄県那覇市出身。和光大学人文学部芸術学科中退。スチルカメラマンのアシスタントを経て、1982年フリーカメラマンとして独立。以後、ビデオやフィルムを使った映像制作にも取り組む。1983年、「RCサクセション」のオフィシャルカメラマンに採用される。1986年、株式会社イフ設立、ディレクター&カメラマンとして有名アーティストのプロモーションビデオ、ミュージックビデオ、TVプログラム、写真集等を手がける。中島みゆき作品のミュージックビデオは、「愛だけを残せ」、「一期一会」に続いて今回作品が3作目。

http://www.if-inc.com/

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