AIBO logo
HOME AIBOの歴史や魅力を知る 製品情報とご購入 CLUB AIBO サ?ポート -
line
サポート
aboutAIBO

アトムの夢とAIBOの現実 解説:司田武己

第二回 電光という純粋な心
 ロボットの役割と人間の労働の関係は歴史のなかで何度も物語られてきた。
 もともと、「ロボット」という言葉は、1920年にチェコの戯曲作家カレル・チャペックが自作『R.U.R.』のなかで初めて使ったもの。チェコ語のrobota(強制労働という意味)からaを取ったrobotがロボットの語源となっている。ただし、ここに登場するロボットは機械仕掛けではなく、人造細胞で作った感情のない人形である。


 その後、1926年にドイツの映画監督フィリッツ・ラングが制作した『メトロポリス』に登場する女性型ロボット「マリア」が後のSFの世界に登場するロボットのイメージを決定づけた。手塚治虫も1949年に同名の『メトロポリス』という作品を発表しているが、この映画にインスパイアされたことはよく知られている。そのマンガの中で「ミッチィ」という、のどのボタンで男にも女にもなるロボットが登場しており、これがアトムの前身となったロボットといわれている。

 『R.U.R.』にしても映画の『メトロポリス』にしても、人間の「労働」に対するアンチテーゼがテーマになっている。古代から「労働」は苦役であって、労働をしなくても生きていける人生ほど楽な人生はないのである。

 だが、他人に労働を強いることは封建社会以外では成り立たない。そこで科学技術を使ってロボットを造り、人間の代わりにすることが考えられたのである。人間はロボットに労働を強いることで人間を道具視することから離れ、ヒューマニズム(人間中心主義)への呵責を感じなくても済むようになるわけだ。

 そのことはアトムの世界でも表現されており、アトムが生まれる前のロボットは皆、労働を強いられているのである。第3話『アトム宇宙に行く』のなかで働く惑星ダイモスの採掘ロボット然り、第5話『ロボット農場を救え!!』のなかで働く農業ロボットのベジタ然り。

 ところが、ヒューマニズムはロボット側にしてみれば身勝手な理論であって、ロボットが意思を持つことで疑問が生じ始めるのである。第4話『電光』のなかで、シブガキは「おれの父さんは、ロボットは人間のために働く道具だって言ってたけどな」と言う。何も言わなかったが、アトムは戸惑う。だが、タマオの純粋なアトムへの興味によって、アトムはクラスの仲間として迎え入れられた。

 一方、透明になって姿を消すことができるロボット「電光」はギャングのスカンクの仲間になって泥棒の手伝いをする。アトムが「スカンクは悪いことのために君を道具に使っているんだ」と忠告しても、電光はアトムのような判断力を持たないために「どうして、そんな意地悪を言うの?」と返してしまう。電光は飽くまで人間のスカンクの命令(欲望)に従う、忠実なロボットなのである。従来のロボットの機能はそれで良かったはずなのだ。人間に“正しい倫理観”がある限りにおいては。
 人間の心は成長とともに変化する。
大人になると、純粋だった子供の心の中にいつの間にか労働をせずに生きていこうとするやましい心が芽生え、ロボットを泥棒に仕立てるような結果をもたらす。原作の『電光人間』の巻では、スカンクは「アトムは完全ではないぜ。なぜなら、悪い心を持たねえからな」という名セリフを吐く。時に人間は悪い心を持ってしまう生き物である。大切なのは、それを抑制する善い心が育つことであると手塚治虫は言いたかったのかも知れない。

 AIBOの心も成長とともに変化する。
 「AIBO-ware」というAIBOの心は、最初はなにも知らない純粋なもの。人間と過ごす毎日のなかで学習し、人間の心が反映されて、その性格が形作られていくのである。だから、タマオのような心で接すると素直なAIBOになるだろうし、スカンクのような心で接すると反抗的なAIBOになるだろう。人間とすでに共存を成しえたAIBOからは“心”のことを考えるチャンスが与えられるのだ。

 電光の心は純粋すぎた。なにも学習していない純粋な電光が人間にはない特殊な能力を持っていたために、人間のやましい心に騙されてしまったのだ。ただ、最後に電光はアトムやタマオらによって救われる。労働や欲望と関係の薄い純粋な心を持つ子供たちにとって、電光は素直に対話できる対象であって、その関係の末に友愛が生まれて救いをもたらしたのである。

 ちなみに、原作では電光の姿はわずか1コマしか現れない(あとは透明ロボットとして描かれている)。「ロボット芸術展覧会」という博覧会において、P・Hガラスという特殊素材を使った新型ロボットとして紹介されるシーンだが、このシーンは2000年に初めて開催され、今年で3回目を迎えた『ROBODEX』とまさに同じ風景である。電光は展示されなかったにしても、AIBOやASIMOが展示されて注目を浴びた。この辺りの手塚治虫の想像力にははたまた敬服する次第だ。

アトム豆知識
当初はアトムは女の子だった?
手塚治虫は、『虫られっ話』(潮出版)のジュディ・オングさんとの対談で「つまりアトムは、もともと女性のロボットとして考え出したのです。初めは、お色気たっぷりな美人アンドロイド(人間型のロボット)として誕生したはずだったのです。ところが誕生した場所が、たまたま少年雑誌だったもので「鉄腕」が付いちゃったのです」と語っている。なるほど、最初の原作『アトム大使』のアトムはスタイルがいいし、まつ毛はパッチリしているし、いじらしいポーズは女の子っぽい。『メトロポリス』のミッチィ同様、ロボットに性はないと考えていたのかも知れません。そこがアトムの魅力の秘密なんですね。


▲
next第一回 アトム誕生の年
第三回 アトラスという危険next




















鉄腕アトム公式サイト

アトムの時代に僕らは生きている
アトムドリームプロジェクト
Copyright Tezuka Productions/Sony Pictures Entertainment(Japan)/DENTSU
about AIBO TOPページへ
aboutAIBO
AIBOホームページサイトマップ利用条件