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アトムの夢とAIBOの現実 解説:司田武己

第三回 アトラスという危険
 「ロボット工学三原則」というものをご存知だろうか。
 1950年にSF作家のアイザック・アシモフが発表した短編集『われはロボット』のなかで提唱したロボットの規定である(その原形は1941年に雑誌で掲載された『われ思う、ゆえに‥‥』のなかで示されている)。

第一条 ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。
第二条 ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなければならない。ただし、あたえられた命令が第一条に反する場合には、この限りではない。
第三条 ロボットは前掲第一条および第二条に反するおそれのない限り、自己をまもらなければならない。
 アシモフの描いたロボットはこの三原則に従うようにプログラムされているので、正常である限りロボットは三原則に従う。これは、ロボットという未知の存在を定義するために必要な原則だといえる。人間を超える腕力や能力を持つように作られたロボットは、決して人間に逆らってはいけないのである。不意にその力を振り回して猛獣になっては困るからだ。
 それは、命令だけをきくロボットとは違って、自律しているロボットにはとくに大事なこと。第1話の『パワーアップ!』では、知恵の育っていないアトムはうっかり大人を振り回してしまう。アトムのようなロボットは一歩間違えば、人を傷つけてしまうのだ。
 だから、アトムの世界には「ロボット法」というものが制定されていて、人間を傷つけたり殺したりしてはいけないことになっている。第6話『アトラス誕生』のなかではそれを逆手に取られ、「ロボットはロボット法で人間に暴力をふるっちゃいけなんだろ」と言われながらアトムは虐められてしまう。それでもアトムは都市に住む人間とうまく調和していくように努力する。だが、間違った心を持ったロボット「アトラス」は都市の破壊を選んだ。
 徳川財閥総帥の息子「ダイチ」は絵を描くことが好きな素直な子供だった。ところが、次第に権力を持つ父親のエゴイズムによってダイチは“支配”される。画家になる夢も壊されたダイチの心は傷つき、社会全体を恨むようになった。暴走族となったダイチだったが、不幸にも交通事故で死に、天馬博士によって「アトラス」というロボットに作り替えられる。生まれ変わったダイチは徳川グループの施設を破壊し始めた。
  アトムはアトラスの行動を阻止する。アトラスの過去を知らないアトムだが、アトムも「トビオ」という悲しい過去を背負っていることが分かる。ただ、アトムは超人的なパワーを正義に使い、アトラスは暴力に使った。アトラスはダイチの歪んだ心を制御できないために「危険」なロボットになってしまったのだ。

 ロボット開発者はこの点に気を配らなくてはならないという。ロボット工学の博士、東京大学の舘教授は『鉄腕アトムコンプリートブック』(メディアファクトリー)のなかで、「人間の形をしているから「アトム」なのではなく、“安全知能”がしっかり組み込まれているから「アトム」なんです。つまり、(原作のアトラスに組み込まれた)“オメガ因子”のように危険な知能を埋め込むと「アトラス」という間違ったロボットが生まれるんです。だから、「アトム」を開発したつもりでも、知らず知らずのうちに「アトラス」を作ってしまっては困るのです」と語っている。
 現代のロボット開発の大きな壁の一つがここにある。
 二足歩行が実現した現在、当面の課題は「安全に機能するロボット」であり、ロボットは操縦型にして脳の部分は人間が代用しておく。人工知能が人間のレベルに達するには、まだまだ相当な時間を要するからだ。人間の行動はパターン認識だけでなく、経験に基づいて成長する判断能力を備えている。それをロジックにして、マイクロコンピュータで解析するにはあまりにもデータが多すぎるのだ。
 エンターテインメントロボットとして生まれたAIBOには「ロボット工学三原則・AIBO版」が決められていて、その第一条に安全性のことがきちんと書かれている。実際、AIBOの脇で指を挟みそうになると自ら脱力するし、ボディには人を傷つけない素材が使用されている。AIBOは自律でありながら安全性を兼ね備えるロボットとして重要なモデルケースなのだ。

 第7話『アトム VS アトラス』の最後、アトラスは月にある徳川財閥の宇宙空港でアトムと格闘する。そのとき、月から見える美しい地球の姿を見てアトラスは改心した。幼いころ、優しかった父親と月に行く夢を見てはしゃいでいた自分の姿を思い出したからだ。ダイチは本当は父親が大好きだった。好きだからこそ、権力を得ながら変わっていく父親の姿に反発するしかなかった。かけがえのない親子の絆は金と権力によって引き裂かれた。父親はそのことを息子の死という代償の果てにしか気付くことができなかったのだ。
 大量生産・大量消費が終焉を迎えた今、失った人間同士のコミュニケーションを取り戻すタイミングを得ているのではないか。それを取り戻した先にしか、人間と共存できる“安全なパートナー”としてのロボットの存在を見ることはできない。
アトム豆知識
「10万馬力」ってどれくらいの力?
原作のアトムが10万馬力であることを知っている方は多いでしょう。馬力は文字通り馬1頭あたりが持つ力のことを示しますが、数値で表現できます。1馬力とは1頭の馬が行う平均的な仕事率(単位PS)のことで、1秒あたりに75kg・メートルの仕事量を差します。人間の仕事率は約10分の1馬力です。実際の10万馬力とは、最近のジャンボジェット機相当の出力です。だから、10万馬力というのはものすごく大きな力なんです。ちなみに、原作の最初のころのアトムの力は500万ダイン(1ダインは1秒あたりに1g・センチメートルの仕事量)でした。これは10万馬力の1500分の1の力です。


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