映画と音楽の融合を目指した新しいプロジェクトとして注目を集めているCineMusica(シネムジカ)の第 3弾「White Mexico」(監督・脚本:井上春生、撮影監督:木村重明)が、2007年夏に公開されます。この作品は、全編をXDCAM HDカムコーダーPDW-F350LでHD 24P撮影しており、スロー&クイックモーション機能を活用したハイスピード撮影映像や、機動力を活かした空中撮影映像などを効果的に用いた、新感覚のロードムービーに仕上げられています。
ホームページより、今回 XDCAM HDで制作された「WhiteMexico」の予告編をご覧いただけます。
http://www.white-mexico.jp/index.html
- ●CineMusica(シネムジカ)
-
2006年に株式会社エピックレコードジャパンが中心となって設立した映画制作の新しいプロジェクト。「CineMusica(シネムジカ)」とは、 Cinema+Musicからきた造語で、プロモーションシネマというコンセプトで、年間3〜4本の映画とシングル楽曲のリリースをシンクロさせ、相乗効果とコンテンツ制作の効率化を図っています。
第1弾は2006年10月に公開された「チェリーパイ」(監督・脚本:井上春生)。主題歌に、アーティストいきものがかりの新曲「二輪花」が起用され、映画本編で主題歌が流れる部分がそのままプロモーションビデオとなり、テレビの音楽番組等でオンエアされました。また、第2弾は2007年3月公開の「東京の嘘」(監督・脚本:井上春生)で、新人アーティストnangiの「ジンクス」がテーマ曲となっています。●井上 春生 (いのうえ・はるお)
映画監督・脚本家・CMディレクター。大学卒業後、東映京都撮影所の演出部に5年所属。現在では400本以上の映画・テレビドラマ・番組・CM等の制作を手がける。2003年、映像制作会社HUGMACHINEを設立。映像・音楽で貢献するNPOクロスアーツ副代表理事。主な作品は、「ため息の理由」(2005年:脚本・監督)、「bird call」(2006年:脚本・監督)、「チェリーパイ」(2006年:脚本・監督)、「東京の嘘」(2007年:脚本・監督)など。●木村重明 (きむら・しげあき)
撮影監督、カメラマン。1988年〜89年渡仏、VIDEO NETWORK PARIS撮影部を経て帰国後フリーに。10年ほど前からHD撮影の可能性に着目しており、数々のHD作品の制作に参画。主な作品は、「ため息の理由」(2005年:撮影監督)、「bird call」(2006年:撮影監督)。シネムジカシリーズ「チェリーパイ」(2006年)、「東京の嘘」(2007年)、「WhiteMexico」(2007年)。また、2006年に日本橋ドームシアターで公開された「HOKUSAI〜北斎の宇宙」で撮影を担当。井上監督のほとんどの作品で撮影を担当されており、その他、CM、番組、イベント映像など500本以上を撮影。

「White Mexico」の監督・脚本を担当された
映画監督 井上春生様
CineMusica(以下、シネムジカ)プロジェクトを推進する中心人物のお一人であり、映画「チェリー・パイ」、「東京の嘘」の監督・脚本も担当された映画監督・井上春生様に、シネムジカのコンセプトを伺いました。
「シネムジカは、“映画cinema”と“音楽music”の語呂合わせで、映画と音楽の融合を目指した新しいプロジェクトです。制作自体の手法や上映までのワークフローも従来の映画制作とは違っており、HDで撮影・編集・完パケを行ってから、最終的にブルーレイディスクに記録してプロジェクターで上映しています。ある意味、最先端の映画制作プロジェクトということができます。」
井上様は、シネムジカ・シリーズの3作目となる「White Mexico」でXDCAM HDを採用された理由について、まず、より一層のクオリティーアップとイメージに近い画の追求を挙げておられます。
「これまでの2作品は、編集ソフトとカメラが24pで互換性がないこともありHDVの60i記録で撮影・編集してきました。60i撮影による “生っぽさ”もあり、撮影後に修正をしていましたが、HDV自体は機動力に富んだハイビジョン撮影ができる点が魅力で、映画制作でも有効なツールになると思いますし、前2作品で、その可能性の一端を実証できたと思っています。シネムジカの3作目となる本作品では、これまでと同様の機動性やワークフローは維持しつつ、より一層のクオリティーアップと作品に合った画を追求したいと考え、新しいHD制作ツールとして注目していたXDCAM HDを使ってみようと考えました。」
加えて、PDW-F350Lのスロー&クイックモーション機能や、プロフェッショナルディスクならではの特性を生かしたワークフローの改善にも期待しておられます。
「今回の作品の中で、演出的にハイスピード撮影した映像を採り入れたいシーンがあったことも、PDW-F350L採用を決めた理由の一つです。また、作品の編集〜完パケに関し、私たちスタッフは大掛りな編集システムではなく、アップル製のノンリニア編集ソフト Final Cut Pro 5を使っており、私が編集をし、そのデータを撮影監督や音楽担当者とサーバー上で共有して、それぞれの受け持ち部分で個別に作業を進めていくという SOHO的なワークフローを実現しています。この点XDCAM HDであれば、ディスクメディアならではの特性といえるファイル転送やサムネイル表示、あるいはプロキシAVデータを使ったプレビューといったことが可能ですから、これまでのワークフローを維持しながらも、さらに大きく効率化できると期待していました。」

撮影監督・カメラマンとして参加された
木村 重明 様 *
「White Mexico」という作品の内容と撮影状況を井上様にご紹介いただきました。
「この作品は、日本人の中年男性と日系ロシア人の女の子を主人公としたロードムービーになります。バスや車、自転車を使った移動のシーンが主となりますので、全編をロケーション撮影しています。また、制作日数を有効に使うためでもあったのですが、ナイトシーンが多いのも特長の一つです。スペース的にベースを組めなかったり、十分な照明を使えないなど、撮影条件としてはかなり苛酷な状況でしたが、PDW-F350Lはトラブルも無く、順調に撮影を行うことができました。ラストシーンは、セスナを使って空中撮影を行いました。今回の場合に限らず、屋外でのロケーション撮影の場合、耐振動性や防塵性もポイントになりますが、この点、ディスクメディアとしてXDCAMは十分な信頼性を発揮してくれたと思います。」
撮影監督の木村重明様に、今回の撮影手法やPDW-F350Lの設定を伺いました。
「このカメラの大きな魅力である記録ビットレート35Mbpsの高画質モードで24P撮影することにより、画質の向上だけでなく脚本のイメージに近い画を撮影することもできました。4つ用意されたシネガンマの中から、イメージに近いルックを選んだほかは、ディティール調整などせず基本的にノーマルで撮影しました。現場では、編集でのカラーコレクションを念頭に置いて色を合わせることだけに集中して撮影しています。レンズは1/2インチ用の標準レンズを使っています。ガンマカーブなどの特長を使わなかった理由は、このシネムジカシリーズがフィルム起こしをせず、プロジェクターで上映しているという事情からですが、もう一つの理由として、一度ノーマルで撮影して基本的な特性を把握したいという考えもありました。」
PDW-F350Lを使った印象や評価を伺ったところ、井上様は画質について劇場用映画で十分通用するクオリティと評価されています。
「編集の段階で、そのクオリティーの高さを感じました。エッジが非常にクリアで、発色や色の再現性も申し分ありませんでしたし、粗編集した映像を DVDに焼いた際も、発色がとても自然で、画質の劣化などはまったく感じられませんでした。劇場用映画としても充分通用する高画質だと思います。」
木村様も、基本性能の高さを評価されています。
「映画館のインフラがしっかりした場所での上映なら、そのまま通用する画質だと思いました。またナイトシーンなど、照明を十分に使えないシーンでは、ゲインを最高で9dBぐらいに上げて撮影することもありましたが、画質的に問題が発生するようなことはありませんでした。基本性能が確かな証拠だと思います。」
スロー&クイックモーション機能を使ったハイスピード映像も好評です。井上様は、ほとんどノーライトでナイトシーンを撮影した例をあげて、その魅力を語ってくださいました。
「今回の作品の中で、夜間にハイスピード撮影をしたシーンがあります。これをフィルムカメラで撮影する場合、かなりの照明を必要とするのですが、 PDW-F350Lはほとんどノーライトの状態でハイスピード撮影ができました。長い撮影の経験がありますが、これまで考えもしなかった奇跡的なことだと思いました。」
木村様も、使い方と創意工夫があれば、相当に使えると評価されています。
「今回は24P収録の60コマ撮影で、2.5倍速のハイスピード撮影を行っています。登場人物が走っていくシーンで、カメラマンも一緒に走って撮影しているときなどは、スローモーション効果が独特の躍動感を生み出してくれました。くわえて、その効果を撮影現場ですぐに確認できるのは非常に有効でした。使うシーンであったり、使い方に創意工夫があれば、かなりの表現が可能だと思います。」

PDW-F350Lを使った撮影風景
ロードムービーということもあり、全編がロケ撮影。
ラストシーンは、セスナを使っての空中撮影でした。
屋外でのロケーション撮影でも、耐震性や防塵性の点からXDCAMは十分な信頼性を発揮していました。
(写真:*山本千里様, **木村重明様)
井上様は、XDCAMに期待していたワークフローの改善についても十分に満足されているようで、プロフェッショナルディスクならではの特性が、編集や完パケの作業で大いに貢献してくれたとお話になっています。
「編集時、XDCAM HDレコーダーPDW-F70からアップル製Mac Proのハードディスクに取り込みましたが、従来のようなテープを取り込むといった概念ではなく、ボタン一つで素早く行うことができます。プレビューや一覧をサムネイル表示することも簡単です。コピーした後に、必要なカットに自分で名前を付け直しておけば、カットの内容も一目瞭然ですから粗編集や1本化などの作業がスピーディーに行えます。とにかく編集していてストレスを感じることがまったく無く、非常に楽でした。また、制作過程で手軽にDVD化できる点や、マザーを作る工程が従来のテープを使った場合より少ない点なども、作業時間の短縮に貢献していたと思います。こういったコストや時間を、よりクリエイティビティーな作業に回すことができますから、大きな意義があると思います。」
今後の映像コンテンツ制作におけるXDCAM HDの可能性について伺ったところ、井上様は、クリエーターの要望にかなりのレベルで応えてくれるカメラと評価されています。
「“こういうシーンでこんな風に撮影したいが、どうだろう?”という問いかけに対して、“できるよ”ときちんと応えてくれるカメラだと思います。クリエーターサイドに表現したい映像やシーンがあって、演出や撮影技術のちょっとした創意工夫があれば、XDCAM HDはその期待に応えてくれます。今後、映画だけでなくCMやプロモーションビデオの制作において、有効なツールとして普及していくのは間違いないのではないでしょうか。」
木村様も、“可能性を秘めた優等生”という言葉で今後の可能性を高く評価されています。
「一度使ったら、もう一度使ってみたくなるカメラだと思いました。私自身もそう思っている一人で、今度は色の調整などディティールをかなり詳細に調整して撮影してみたいと思っています。レンズアダプターを使って2/3インチ用レンズを使えば、さらに幅広い表現が可能になるだろうと感じています。いろいろな映像コンテンツ制作で、XDCAM HDというディスクメディアを使う新しい選択肢ができた意義は大きいと思います。」
最後に、井上様はこれからの課題についてお話しくださいました。
「今回、XDCAM HDを使って撮影してみて、私たちの映画撮影に十分に使えるカメラであることが確認できました。これからの課題としては、映像の出口である映画館のブルーレイでの再生機やプロジェクターなどインフラの問題があると思います。このような課題を1つ1つクリアしていき、HDでの映画制作をより深めていきたいと考えています。」