東北大学様 川内キャンパス
東北大学様は、建学以来の伝統である「研究第一」と「門戸開放」の理念を掲げ、世界最高水準の研究・教育を創造し、最先端の研究成果を社会や日常生活に役立てる「実学尊重」の伝統を育んでいらっしゃいます。 新型コロナウイルス感染症の蔓延下では、いち早くリモート学習環境の構築に取り組まれ、ソニーのビームフォーミングマイクロホンを一斉に導入。教室内の音声のオンライン化を図ることで、リモート環境からでも臨場感の高い授業が受講可能なハイフレックス対応型の教室を整備されました。東北大学 データ駆動科学・AI教育研究センター 技術専門職員の田中様にお話をうかがいました。
東北大学の川内キャンパスは、学生が専門分野を学ぶ上で必要となる基盤的な科目や、全学教育科目(=教養科目:根幹的な基盤教育を目的に、附置研究所も含めた全学の教員が授業を担当)を中心に、主に全学の1・2年生が学ぶ拠点となっています。これまでは対面スタイルを中心に授業が行われていましたが、2020年に入って急速に蔓延した新型コロナウイルス感染症対策のため、対面授業の実施が大幅に制限される結果となりました。そのため、授業のスタイルも全面的にオンラインをベースとしたものに大きく転換する必要があり、学生が自宅など学外からもリモートで授業が受けられるための環境整備が急務となりました。
全学教育科目を中心に講義が行われている川内キャンパス構内の様子
当初は完全オンラインということで、授業を既設のシステムで収録し、授業コンテンツとして配信する形態が主流でした。しかし、全学教育科目(教養科目)の受講が主となる新入生にとって、教員とのコミュニケーションがなかなかとれないことや、交友関係を広げることもままならないという点が大きな課題となりました。そうした環境の中、2020年度の後半からは、少しずつ対面も復活させていこうという機運が学内で高まってきたことから、教室内でリアルに授業を受ける学生と、オンラインでリモートから受講する学生の両方に対応した、いわゆる“ハイフレックス型”の授業に対応できる教室設備を導入することになりました。
機器選定にあたってはPC内蔵マイクでは収音範囲の点で限界があること、またハウリングの発生など音声品質の問題もあることなどから、各教室にノイズキャンセリング機能を備え、広範囲の収音が可能な天井設置型マイクを検討することにしました。実際に各メーカーの製品を調べ、確認を進めたところ、天井設置型のシーリングマイクを扱っているメーカー自体があまり多くないことがわかりました。また、いわゆる有名な海外メーカー製のものは高機能ではあるものの、1式あたりの単価が非常に高価でした。川内キャンパスは全学の教養科目のキャンパスとなっていることから、教室が全部で70部屋近くあり、多岐に渡る授業が行われるため、教室設備は共通にすることが基本となっています。そのため、導入する場合には全教室への展開が必須となるため、コストも重要な要素となります。さらに今回の設備は導入までの検討期間が非常に短く、1〜2か月で選定から設置まで完了する必要がありました。
コストパフォーマンスに優れ、納期的に対応ができる製品がないかという点で探していたところ、ちょうどソニーからマイクの新製品がリリースされたという情報を聞き、実際に教室に持ち込んでデモをしてもらったり、納期についても調整してもらった結果、機能・価格・納期の点で本学の想定していた仕様、要望を満たしていることが確認できたため、採用する運びとなりました。
教員卓上方の天井に設置されたビームフォーミングマイクロホン。移動する教員の声を広範囲に収音
実際に導入してみて良いと感じた点は、想像していたよりも広い範囲の音を拾ってくれて、パソコン内蔵マイクなどよりはずっと質の高い環境が構築できたという点です。教壇上を動きながら授業をされる教員も多いので、ハンドマイクを持たずに授業が進められることは、ストレスの軽減にも寄与していると思います。収音範囲という意味では、基本的にまずは教員側の音声を確実に収音できるようにということで、今は教壇の上のあたりの天井に取り付けている形ですが、ニーズとしては学生の声もちゃんと拾いたい、という要望もあがってきており、どのような対応が可能か検討を行っているところです。首都圏の先進的な私大や国公立大と比較してどうかは分かりませんが、早くからこれだけの規模の教室をハイフレックス対応型に整備したという点では、少なくとも東北エリアにおいては先駆けであったと言えるのではないかと考えています。
今回の設備の導入初期に、Dante規格にかかわる部分でネットワーク機器との接続に関してトラブルが発生したケースがありました。スイッチ側の設定を正しく行うことでかなり軽減されましたが、音響設備はマイク単品だけでは成立せず、Dante規格に対応したネットワーク機器などと組み合わせてはじめて成立するものであり、システム全体の信頼性が課題としてあるのではないかと捉えています。例えばソニーからマイク以外にも関連する機器すべてを純正のもので提供していただけると、安心して使えるようになると思います。
※本ページ内の記事・画像は2022年11月11日に行った取材を元に作成しています
ビームフォーミングマイクロホン MAS-A100 70式
ビームフォーミングマイクロホンの商品情報やお客さま事例をご覧いただけます。sony.jp/beamforming-microphone/
ビームフォーミングマイクロホン
MAS-A100